新型コロナの影響による減収で家賃が払えなかった経験で知ったこと・考えたこと  〜同様の経験をされている方へ〜

お金のことに関しては、恥ずかしくて人に話せなかったりする。でも、恥ずかしい話ほど困っていることでもあったりするのだ。
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VikiVector via Getty Images

(文・オザワミカ)

—コロナ禍で家賃が払えなかった中でかかってきた電話

2020年3月、わたしはイラストやデザインを生業としており、たまたまこの時期、演劇やアートに関連する仕事が集中していたが、コロナ禍の影響を受けて、それらの仕事はすべてキャンセルになったり、取引先が予定通りの支払いができなくなったりして大幅に減収し、3月末に自宅家賃を引き落とすことができなかった。すると、家賃保証会社からスマホのSMSに未払いの通知とともに「支払い可能な日程を」というアンケートが届いたが、その時点ではまったく目処が立たず「未定」を選択して返信。その後、保証会社から連絡があるということだったのでそれを待ちつつ、不動産会社にはお詫びの電話を入れ、融資の手続きを進めていた。

4月初旬に「いつお支払いができますか?」と家賃保証会社から電話がある。「支払いが滞り、申し訳ありません。現在、融資を申請中で4月末の入金で銀行の方には動いていただいているものの時世的に確約できないとのことなのです。入金次第、必ずお支払いします。すみません」と伝えたところ、かなり高圧的に

「何がなんでも4月末までには払ってもらわないと困るんですよ!」

「あなたは今後どこの家賃保証会社も利用できず、住居を退去していただく可能性があります。うちは債権者であなたは債務者なんで」

と2日に渡って連絡が来る。

今まで滞ることなく家賃をずっと支払ってきたし、現時点で保証会社のこの対応はないと憤りを感じたが、最後はいったん「わかりました」と返答して電話を切ると同時に、弁護士や消費者センター、不動産屋に連絡。

消費者センターはずっと話し中で連絡がつかなかったけれど、弁護士や不動産屋は「そうした取り立ては3カ月の未払いからで今の時点でそれはおかしい」と言ってくださり、さらに不動産屋は「今度電話があったらうちへ電話するように言ってください」とおっしゃり、すぐに直接、家賃保証会社に連絡も取ってくださった。

わたしは、この直後にたまたま想定外の入金があり、すぐに家賃を支払うことができたので、その後、家賃保証会社とは話はしていないが、なんとも怖く、嫌な思いが残った。でも、いろんな人たちに相談したり話したりして落ち着いてくると、家賃保証会社だって契約者が一同に家賃を滞納したら死活問題なんだと考えられるようになった。

—家賃保証会社から退去命令が来た人の「飛び降りようか」というツイート

そんなことから約1カ月経った頃、Twitterの自分のタイムライン上で「2カ月の家賃滞納で家賃保証会社から退去命令が来た。飛び降りようか」という内容のツイートを見かける。冗談めかしてはいたが、シャレでは済まない人もけっこういるのではないかと思った。わたしの身に起きたできごとは、いざという時のろくな蓄えもなく、お金がない人の話でもあり、そうとう恥ずかしく、書くのをためらったが、自分の経験が参考になればと、上記の経緯とともに「わたしと同じような連絡が来てる方は不動産屋さんへ相談を。家賃に関することを国はなんとかしてほしい」と、Twitterに投稿。       

恥を忍んで書きますが、コロナの影響でいろんな仕事が一気にキャンセルになり、収入が激減して、3月末自宅家賃を引き落とせなかったのです。
すると、保証会社からSMSで「支払い可能な日程をお知らせください。日程のメドが立たない場合はその旨を」的な連絡が来ました。
こんな時期だから、ある程度

— オザワミカ (@m_ozawa) May 5, 2020

 すると、投稿から2日間で3.3万いいね、1.9万リツイートされた。

この投稿はたくさんの方の不安や不満を刺激するツイートだったのだなと思った。           

引用リツイートも含め、返信もたくさん付いた。

多くが「大変でしたね」「参考になりました」「国は何してるんだ」「家賃保証会社ひどい」という労わりや共感のようなもので、次いで「あらかじめ連絡を入れなかったあなたに非がある」「家賃保証会社は自分の仕事をしただけ」「貯金もしていなかったのか」「コロナなど未払いの理由にならない」などの反省を促されるものだった。

それと同時に同じような状況下に陥っている方、病気や行き違いなどで入金が遅れた際に壮絶な取り立てを受けた方、東日本大震災のときに同様の思いをされた方などの体験も投稿の返信に寄せられた。

そして、家賃保証会社、不動産屋、大家すべてに相談したけれどなんの手立てもなかったという話や、入居者に対してとても誠実に対応している家賃保証会社の例もあった。

—「助けて」「どうしたらいいのか教えて」と言えなくなるのはこわいこと 

わたし自身はこういうことがあっても、家賃保証会社というもの自体を悪いとは思っていない。私のTwitterへのたくさんの返信を読んでも、家賃保証会社の対応に企業差や担当の個人差は大きく、首を傾げたくなるものも多いのかもしれないと感じた。しかし、諸事情などで保証人を頼む先がない人などにとっては、家賃保証会社は必要なシステムだ。わたしはかなり好き勝手に生きているという自覚があり、わたしが好き勝手をする責任を、家族、友人、知人などの個人の誰にも負わせたくないので、それを請け負ってくれている保証会社自体には本当に感謝している。

いろいろな方の指摘で、そうしたお世話になっているところに対し、未払いがわかった時点で予め連絡を入れなかったことなど、わたしは不誠実だったと大いに反省した。

しかし、やはりこうした世界規模の非常時になんら配慮がないこと(同じく非常時におかれている家賃保証会社に配慮を求めるのは酷なのかもしれない)には納得がいかなかったし、かかってきた電話の対応はかなり怖かった。通常時と同様の収入が見込めない人が多い中、こんな対応が続いたら、ほんとに命が追い詰められる人がいるのではないか。

わたし自身はありがたいことに、お世話になる銀行の方や、友人たち、取引先、市や国の制度など、さまざまな方に支えていただき、恩恵に預かり、今のところ持ち直せた。そして、それは、わたしがいろんな人に相談した結果でもある。Twitterへの投稿後も友人・知人たちが手助けを申し出てくれる。

だから、追い詰められた人たちが、自分の非をただただ責められ「助けて」「どうしたらいいのか教えて」と言えなくなるのはこわいことだとも思った。

たとえ自分に非があると感じていても、ぜひいろんな人に相談を。最初に相談する先が無慈悲なものであっても、そこであきらめず、次の相談先を見つけてほしい。

相談を受けた人も、非のある人を責めず、何を改め、どう対処するのかを教えてあげてほしい。

ことお金に関しては恥ずかしいと思ってしまい、人に話しにくいけれど、恥ずかしい話ほど困っていることでもあったりする。

外に向かって「困ってます」「教えて」と声を上げることで生きることを諦めず、持ち直せますように。

それと同時に、こうした非常時の「住む権利」についての抜本的な国策をと願うばかり。  

(編集:榊原すずみ

※家賃の支払いに困窮した場合、一定期間、家賃相当額が支給される「住居確保給付金」という制度があります。従来は職を失った人が対象でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、支給対象が拡充されます。申し込みや相談は、市区町村の自立相談支援機関に問い合わせましょう。相談窓口一覧はこちらから。   

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