第92回アカデミー賞の授賞式が日本時間2月10日に開かれる。数々の注目作品がノミネートされているが、作品賞や監督賞など6部門にノミネートされた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」の行方も気になるところ。
社会の分断や貧富の格差など、普遍的な主題がある一方で、韓国ならではの文化や習慣なども描かれている。映画の理解を深める豆知識を紹介しよう。
まずは、作品を見ていない人のために、作品の概要を簡単におさらい。
「半地下住宅」に暮らし、全員が失業中のキム一家。長男のギウが身分を偽り、高台の豪邸の家に潜り込みことから、物語は動き出す。キム一家は作品が進むにつれ、裕福な家庭へのパラサイト(寄生)の度合いを強めていく。計画はうまくいくかのように思われたが、そこから想像を絶する展開が待ち受けていた・・・。
作品は韓国を始め世界各国で大ヒット。カンヌ映画祭では韓国映画として初めて最高賞のパルムドールを受賞した。日本でも、2月5日時点で100万人を観客動員している。
それでは早速、韓国ならではの舞台や習慣、注目を集めた演出などを紹介していく。
■半地下住宅
まずは、キム一家が暮らす「半地下住宅」だ。日当たりが悪く、窓を開ければ、道行く人の膝下が見える。決して快適には思えない住宅だが、これは作品上のフィクションではなく、韓国では低所得者の住宅としては一般的な形態だという。ポン・ジュノ監督はハフポスト日本版の取材に「韓国の低所得者層の約10%がそのような住宅に暮らしているという統計が出ています」と語っている。もともとは防空壕だった空間を、住宅に代用したといい、イギリス公共放送のBBCは、実際に半地下に暮らしている人たちを特集した。
■チャパグリ
緊張のシーンで登場する、韓国麺にも注目が集まっている。日本語字幕では「ジャージャー麺」と訳されていたが、実際には登場人物は「チャパグリ」と話していた。これは「チャパゲティ」と「ノグリ」という2種類のインスタント麺を混ぜ合わせて作る料理で、バラエティー番組で紹介されたことをきっかけに、誰もが知る食べ物となった。
元AKB48の指原莉乃さんも2月6日、この「チャパグリ」を作ったとTwitterに投稿。「パラサイト」の公式Twitterアカウントもレシピを公開している。
■ジェシカジングル
架空の設定を暗記するときに、ギウの妹ジェシカが口ずさんだリズムも「ジェシカジングル」として、人気も集めている。韓国のスポーツ紙「ソウルスポーツ」によると、アメリカなどでも真似をする人が続出しているといい、動画投稿サイトにはリミックス版も登場している。
ジェシカを演じた俳優パク・ソダムさん自身が、「ジェシカジングル」のやり方を教える動画もTwitter上で公開されている。
■台湾カステラ
ソン・ガンホさん演じるキム家の父ギテクをめぐり、度々話題になっていた「台湾カステラ」が印象に残っている人もいるかもしれない。この台湾カステラは、2016年ごろから韓国で大流行したスイーツ。店の前には大行列ができ、各地に店舗が次々とオープンした。しかし、食品の安全性をめぐる報道などを受けて、一気にブームは去った。客足が遠のいた台湾カステラ店は相次いで廃業に追い込まれた。そのため、韓国では「台湾カステラ店の元オーナー」は失業者の代名詞のように認知されているようだ。
■技士食堂
このほかにも、キム一家が行ったバイキング形式の食堂は、安価でたくさん食べられる「技士食堂」。タクシーやトラックなどの運転手御用達のため、そう呼ばれ、ソン・ガンホさんが主演した映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」にも登場しており、記憶に残っている人もいるかもしれない。
アカデミー賞での受賞に注目が集まるが、ストーリーとは別の点に注目してみるのも良いのではないか。