布マスクでも「つけない選択肢ない」 安心しすぎは注意
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が全世帯に2枚配り始めた布マスク。466億円の予算投入に批判の声は強いが、健康な人に布マスク着用を求める動きは、米国でも進む。ただ、マスク着用で誤った安心感を持たないことが大切だ。
今月上旬、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナに感染しても症状が出ない人が一定数いることが分かってきたとして、マスク着用を推奨する立場を打ち出した。市販や手作りの布マスクやバンダナを使うよう呼びかけている。感染予防の効果がはっきりせず、一般の人が医療用マスクを買い求めると必要な人に行き渡らなくなる恐れがあるため、「健康な人は原則マスク不要」との立場だったが、一転した。
世界保健機関(WHO)も、6日公表の新ガイドラインで、発症前の人が感染を起こしうる点を指摘。ただ、健康な人のマスク着用で新型コロナの感染を防げる根拠はないとし、マスク着用で安心して、人との距離の確保や手洗いがおろそかになることを懸念する。
新型コロナは、せきやくしゃみのしぶき(飛沫(ひまつ))に含まれるウイルスを吸い込むことなどでうつるが、発症前から感染を広げたとされる事例は国内でも起きている。激しい呼気や大きな声を出すことでも感染リスクがあり、スポーツジムや合唱団など健康な人が集う場で、感染者の集団(クラスター)が生じている。
コロナウイルスは直径0・1~0・2マイクロメートルほど。新型コロナは、飛沫より小さな直径5マイクロメートル以下の粒(エーロゾル)に含まれて空気中を漂い、感染を起こすこともあるとみられている。2010年に米労働安全衛生研究所が発表した研究によると、エーロゾルが通り抜ける割合は医療用のN95マスクだとほぼゼロ。一方、布マスクは7~9割が透過した。
ウイルスの侵入を防ぐ効果はほぼないが、聖路加国際大学の大西一成准教授(環境疫学)は、布マスクでも「つけないという選択肢はない」と話す。一部の大きい飛沫が飛ばないようにすること、鼻やのどの粘膜を保湿・保温してウイルス感染を防ぐといった点は期待できるという。(香取啓介=ワシントン、市野塊、今直也)
(朝日新聞デジタル 2020年04月17日 21時43分)