InstagramのCEOであるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は、「ビジネスにとって有害な意思決定でも人々の幸福と健康に資するなら行う」と言っている。そこで来週、Instagramは米国で「いいね」の数を投稿の作者と一部のユーザーを除いた全員に隠すテストを拡大する。でも、そんなことをしたらインフルエンサーが困らないかという大問題がある。
モセリ氏はその計画を、米国時間11月8日のWired25カンファレンスで発表し、次のように言った: 「人々がどう感じるかを知りたい。Instagramの使い方がどう変わるか知りたい。作者のエコシステムに及ぶ影響を知りたい」。
さらに続けて「Instagramをもっと軽くすることが目的だ。競争はないほうがいい。好きな人や物とつながって何かを得ることにフォーカスしたい。互いに比較したりされたりによる不安をなくしたい」。
女優でCEOのTracie Ellis Ross(トレイシー・エリス・ロス)と一緒の席でモセリ氏は、Instagramではショッピングへの関心が増えていることを話し、インフルエンサーに新しい収益源を提供したいと言った。彼はまた、Instagramの幸福への3本柱について説明し、ヘイトスピーチ対策や、喧嘩やいじめの原因になりそうなものの早期発見、「いいね」の数を隠すことなどによるInstagramの原点回帰(基本に戻ること)などについて語った。
Instagramは4月にカナダでこのテストを開始し、その後アイルランドとイタリアと日本、ブラジル、オーストラリア、そして7月にはニュージーランドに広げた。Facebookも9月に同じ実験をオーストラリアで開始した。
Instagramから人気競争を減らすことは平均的ユーザーにとって良いことだが、作者やインフルエンサーのエンゲージメントとビジネスの成功を損なわないことも重要だ。コンテンツの作者はInstagramの成功の鍵であり、ユーザーは、友だちがつまらなくても、コンテンツとその作者のファンとしては何度も何度もInstagramに帰ってくる。
Social Media Todayが報じたHypeAuditorの最新の研究によると、「いいね」の数を隠すテストをしている国では、フォロワーの数とは関係なく、インフルエンサーの「いいね」の数が一律に減っている。すべての国を合わせると、フォロワー数が5000人から2万人のインフルエンサーは「いいね」が3%から最大で15%減っている。
日本だけは、フォロワー数が1000人から5000人、または10万から100万のインフルエンサーは、このテスト以降、「いいね」が約6%増えている。逆にインフルエンサーの「いいね」の数がいちばん減ったのはブラジルだ。どうやら、何かを「いいね」するときに、群集心理が働く国と、そうでない国の違いがありそうだ。
インフルエンサーへのネガティブな影響が大きいと判断したら、「いいね」の数をなくすという変更は実施されないだろう。モセリ氏は、金銭的に損になることでも躊躇しない、と言っているが、ユーザーの幸福度がすごくアップするのでないかぎり、インフルエンサーのキャリアを損なうような決定は無理だろう。
(2019年11月09日 TechCrunch 日本版「Instagramが「いいね」の数を隠すテストを米国でも開始、インフルエンサーへの影響は?」より転載)