新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです! 炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。
第9回 東京都 ミルクプリンさん 56歳
夕食時。配膳して、私はフライパンや鍋などだけでも洗ってしまおうと、夫と娘には先に食べ始めてもらいました。黙々と食べる二人。私も早く食べようと必死に洗っていました。すると娘が突然「●●が食べたいなあ」と言い始めたのです。夫が「あれ食べたいね」と同調したところで、私キレました。「あなたたちは外に食べに行ってください」と。作ってくれた人への感謝どころか、目の前にある食材へのリスペクトもない人と一緒に食べるのは苦痛以外の何ものでもありません。
私はね、ミルクプリンさんの行動、とても立派だったと思いますよ。
誰かに作ってもらったものを食べながら、他の何かが食べたいと口にするのは、とても失礼なことですもん。そういう行動はひとの感情を害し、傷つけるということを身をもって示された。「言ってもどうせ変わらないし」と感情を殺してしまう人も多い中、あなたはきっちりと思いをあらわにした。偉かったと思うんです。ホントに。
「やってくれる」が、当たり前になってしまう
多くの家庭で、共同生活で、頻発していること。相手への感謝の思いを忘れて、ワガママや甘えがいつしか「普通」になってしまう。家族間だからこそ、日常を共にすればこそ、起こりがちなんですよね。
「黙々と食べる」と書かれてあるところが気になりました。「いただきます」や、味の感想を伝えるなども、日頃からあまりないのでは?
ご家族の態度に関して「つらい」と伝えたことは、これまでもありましたか。
ミルクプリンさんはハッキリと「苦痛」と書かれていますね。日頃からどの程度苦痛を感じられているか分かりませんが、このままだと次は「憎さ」を覚えてしまうかもしれない。防ぎたいのは、防ぐべきは、そこだと思います。
家族を嫌いにならないためにも、「耐えられないこと」はしっかり伝えなくちゃいけないし、伝えなければ。なので再び同じようなことがあれば、自信をもってキレてほしいです。「私はそういうことされるのは嫌だ。食材に対しても、私に対してもリスペクトがないからできるんだよ」と、言葉を添えてみてはどうですか。
それは同時に、お子さんに対しての教育にもなります。いつか誰かと暮らしたとき、同じようなことをしてほしくないとお考えではありませんか。
また、夫の方も「そうだね、あれが食べたいね」ではなく、親として、ミルクプリンさんのパートナーとして「そんなことを言うものじゃないよ」と注意してほしいポイントでしたよね……。お気持ち、お察しします。
「家事料理を作る人は、家族の専用コックさんではない」
ミルクプリンさんのようなお悩みを聞くたびに、毎回このことを私は思います。相手のリクエストを聞いてあげられる日もあるけど、その余裕がない日も多い。使ってしまわなければいけない食材消化優先の日はもっと多い。家族って、そばにいながらこういうことは全然見えないもの。このことをしっかり理解していれば「〇〇が食べたい」と思ったとて、言い方・伝え方は変わってくるはずです。
キレるって体力が要りますし、その後に「感情的になってしまった……」と自己嫌悪に陥りがちでもありますよね。ミルクプリンさん、大丈夫でしょうか。繰り返しますがあなたの“キレ”は、現状打破の大きな一歩だったと思いますよ。しっかりと意思表示をすることは、自分をいたわることにつながると私は考えています。今まで大変な思いを抱えつつ、家事をされてきた。それはご家族のためを思われてのことだったんじゃないでしょうか。これからはどうぞ同時に、自分のことをもっと考えてください。
白央篤司(はくおうあつし)
1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitter、ブログ
(編集:笹川かおり)