共働き、70点の料理は作れるけど…。家庭料理の「おいしい」を考えてみる(20分レシピ付き)

第6回 白央篤司の「家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!」
(写真はイメージ)
(写真はイメージ)
a-clip via Getty Images

新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです! 炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。 

第6回(東京都・さくら・30歳)

70点の料理は作れるのですが、なかなか100点に近づけることができません。

我が家は夫と二人暮らしで、共働きです。夫はコロナ流行以前からリモートワークで家にいますが、大抵深夜まで仕事をしているため、晩ご飯を作るのは私の役割になっています。

私は料理はそこまで好きではないですが慣れもあり、70点くらいの料理を特定時間内に作れるようにはなりました。

ただあと30点が伸びず、夫に美味しいと言わせることができるのは、10回に1回くらいです(夫の方が料理上手で舌も肥えています)。

私も自分の仕事があり、スピード優先でちょっとした手間暇を惜しんでいるからというのと、やっぱり料理がそんなに好きじゃないので追求するモチベーションが湧かないというのもあります。

とはいえ、70点を100点に近づけるにあたっての料理のポイントって何かあるものでしょうか。

※お悩み相談はこちらから募集しています。

まず、さくらさんの克己心がすごいです。

「料理はそこまで好きではない」けれど「100点に近づけたい」という思い。おおげさに聞こえるかもですが、ちょっと私感服したんですよ。舌の肥えたパートナーが10回に1度ぐらい「うまい」といってくれるなら、私なら「それでいいや」と思って向上を考えないだろうな、と(笑)。

さて「70点を100点に近づけるためのポイント」ですが、やっぱり「誰かに習う」「上手な人のやり方を見る」のが早いと私は思います。

そもそも「70点ぐらいの料理」というのが抽象的ですが、さくらさんの中の「破れない壁」がどの程度なのかは伝わってきました。七合目ぐらいまでは登ってきたけど、先に行けない。そこからはガイドが必要なポイントです。

さくらさんもお仕事をされていて、伸び悩んでいる後輩に「もっとこうするといいのに」なんて感じてしまうこと、ありませんか。

何事も独学では立ちゆかなくなるときって、ありますよね。料理に関しても、自分では当たり前になっていることの中に、きっといろいろ改善点があるはずです。

しかし、ここで考えたいのです。

家庭の料理における「100点」ってなんでしょう。そしてさくらさんのおつれあいは、「よりおいしく」を求めているのでしょうか。

さくらさんがご自身の料理を「70点」と考える理由として、「手間暇を惜しんで」いるからかも、とありました。今、さくらさんは日々の料理に時間をさけないことを負い目に感じているようです。 

大きなお世話だったらごめんなさい。それって、感じなくてもいいのではありませんか。さくらさんも仕事があって、時間に余裕があるわけではない中、向上心をもって作り続けていることがもうすでに、素晴らしい。さらには、家庭の料理で「おいしさを追求する」ってちょっと危険なことでもあります。

まず「おいしさ」って究極の主観で、どんなに手間かけても相手の好みじゃなかったら、おいしいとは言ってもらえないんですね。おおぜいの人に好まれる味というのは確かにありますが、必ず万人にウケる味って、ありません。さくらさんが「これは100点の味だ!」と思っても、相手がそう思わなければそれまで。

手間も時間もかけて「おいしい」の言葉が出なかったときのダメージって、デカいですよ!

おつれあいを喜ばせたいという気持ちはとても尊いけれど、家庭の料理において追求すべきは、「自分なりのおいしさ」じゃないでしょうか。

自分が良いと思えるものを出す(この場合、「そこそこおいしい」とか「悪くない」でじゅうぶんです)。そういったものと、相手の好みが重なるところを見つける。重なる味わいが、「さくらさんちのレパートリー」になっていくと思うんですね。重なるパートがなんとなくでも分かってくると、トライすべき他の料理もだんだん見えてくる。と、私は思うんです。 

(写真はイメージ)
(写真はイメージ)
Wako Megumi via Getty Images

相手の「おいしい」を追求してしまうと、結局はキリがない。何か一品で「おいしい!」と言わせたとしても、いつかは必ず飽きます。おつれあいさんは料理上手とありましたが、普段料理をせず、趣味でやっているからこそ、上手にできるという面もあるのではないでしょうか。

そう、家庭料理って毎日が「おいしい!」じゃなくても、いいと思うんですよ。美味はハレの日のもの、普段はそれなりでじゅうぶん……などと、私の価値観の押しつけを続けてしまいました。すみません。 

誰かにおいしいと言わせたい、思ってもらいたいときは、料理技術の上達をはかるというよりも、その人の好みを研究するほうがよいかと。おつれあいの好きな食材、メニューというと、どんなものでしょうか。それをリストアップしてみると、見えてくるものがあるかもです。また、長年つきあっていても結構「相手の好み」って思い込みがあったり、分からなかったりするものですよ。直球に「好物って何?」と聞いてみるのもいいと思います。

ただ……やっぱり家庭の料理は、食べる人の満足度も大事だけれど、「作る人がしんどくならない」ことも同等に重要視されるべき、と私は考えています。根をつめないでくださいね。そもそも10回に1度「おいしい」が出るというのは、かなり高確率だと私は思いますよ。

■20分で完成のヅケ丼レシピ

白央篤司

さて、今回はお刺身を20分間タレに漬け込むだけの、ヅケ丼をご紹介します。寿司めしを作らなくてもじゅうぶんおいしいどんぶり料理ですよ。鮮魚コーナーではよくお刺身の切り落としパックが売られているので、それを使うと便利です。 

(用意するもの)

好みのお刺身(マグロ、タイなどの白身、アジ、カツオ、イカ、タコ、サーモンなど、手に入りやすいものでOK)

醤油

みりん
ごはん 


1.醤油、酒、みりんは「1:1:1」でボウルなどに合わせる

2.刺身を①のタレに漬けてラップをし、冷蔵庫で20分ほど置く

3.ごはんを器に盛り、②をのせる


好みでワサビや大葉などを添える。ゴマをふったり、卵黄を落としてもおいしいですよ。

※引き続き、日々の自炊、食事の用意に関してつらいこと、悩んでいること、大変に感じていること、こちらから自由にお送りください。お名前(ハンドルネーム可)、年齢、できればお住まいの地域もご記入ください。

(編集:笹川かおり)

注目記事