新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです! 炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。
第7回 千葉県 さぢえさん 54歳
今までは外食も多かったのですが、在宅ワークになり、ごはん作りの頻度が上がりました。レパートリーの無さに絶望しています。
きんぴらごぼう、厚揚げの煮もの、豚肉のショウガ焼き……味つけが甘じょっぱくて、茶色い見た目のものばかりでイヤになります。
そんな気持ちになってるところへ、在宅ワークになって太った息子が毎日モヤシと豆腐ばかり食べてて、よけいに料理する気がなえてしまうのです。
思うんですけどね、在宅になって調理回数が増えてる中で、毎日毎日家事と仕事を続けている。そのこと自体がもうすごくて、尊いことですよ。「でも世の中の人の多くがやってることだし…」なんて思われるかもですが、さぢえさん、あなたは立派です。なおかつ、自分の仕事としての炊事に関して、問題点を見つけて、できれば改善したいと考えている。どうか、そんな自分をまず褒めてあげてほしい。
さて、「甘じょっぱくて、茶色い見た目」ばかりでイヤになる、とのこと。ちょっと具体的な提案をさせてください。挙げられたきんぴらごぼうと厚揚げの煮ものですが、こんなアレンジはどうでしょう。
きんぴらごぼう、ピーマンの細切りを一緒に炒めました。ひとつ鮮やかな野菜の色が入るだけでも気分が変わると思います。赤ピーマンやパプリカでやってもおいしい。
また醤油は、うすくち醤油とこいくち醤油の半々で調理しました。私は、うすくち醤油はキリッとした塩気をつけるもの、こいくち醤油は香りづけの役割と考えています。半々で使うと、茶色っぽくなりすぎずに仕上がります。
厚揚げの煮もの、私もよく作るのですが、インゲンを少々加えるだけでも彩りがよくなるかと。これ、冷凍インゲンを使っています。厚揚げを煮て最後にひとつかみほど、そのまま鍋に入れるだけ。下処理も何もいらず、保存期間も長い冷凍野菜は重宝しますよ。最近のものは食感もいいんです。ひとつ注意したいのは、冷凍野菜は一度開けたらジッパーつきの保存袋などに入れて、きっちり閉めて冷凍庫に戻してください。そうすることで劣化を防げます。
「レパートリーが少ない」と嘆かれていましたが、無理に増やそうとしなくても、いいんじゃないでしょうか?
手慣れているものにちょい足しするだけで、それはもう違う料理です。
先の例も、「きんぴらごぼうにピーマンを足したもの」ではなく、「ゴボウとピーマンのピリ辛炒め」なんですから。はい、ひとつレパートリーが増えました!
オリーブオイルとニンニクで炒めたら、「ゴボウとピーマンのペペロンチーノ風」ですし、唐辛子じゃなく豆板醤で炒めたら中華炒めになります。
野菜炒めひとつでも、醤油でやるところをナンプラーでやったらアジアン炒め。いつもの料理の調味料や油を変えるだけで、料理はグンと目新しくなり、幅は広がります。
最後に茶色い見た目に関してもう1つ。色味のきれいなお皿、あるいはマットやトレイを使うなどでも、かなり印象は変わりますよ。
さぢえさんは今、「料理する気がなえてしまっている」とのこと。無理に料理をしよう、新しく何か覚えようとがんばらず、ちょっと気分転換する……といったことも、必要ではないでしょうか。
気に入った箸置きひとつ見つけて買ってくる、なんてことで随分と気が晴れることも。どうか、気を詰めすぎないでくださいね。
白央篤司(はくおうあつし)
1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitter、ブログ
(編集:笹川かおり)