大手出版社や日本書籍出版協会など、出版関連9団体で構成する出版広報センターは8月1日、海賊版サイトを利用しないように訴える「STOP! 海賊版」キャンペーンを開始した。
同センターの担当者は、「海賊版サイトの横行によって各社の売り上げにも影響が出るなど、被害が拡大している」「正規版マークを流通させるなど、海賊版サイトを使わないよう読者に周知していきたい」と話す。
近年、「FreeBooks(フリーブックス)」や「漫画村」(現在は閉鎖)など、商業漫画を無料でネット上で読ませる海賊版サイトの被害が拡大している。同センターは3月19日、「海賊版緊急対策ワーキンググループ」(海賊版WG)を発足。「海賊版サイト撲滅」に向けた広報活動を開始した。
海賊版サイトの利用は、中高生や大学生を中心とした若年層が大部分を占めるという。「STOP! 海賊版」では、若年層の利用が多いTwitter上で、キャンペーン画像などを使って海賊版サイトを見ないように啓発する。
出版各社が協力し、海賊版サイトに対するキャンペーンを行うのは異例だ。「STOP! 海賊版」のキャンペーン画像には、「名探偵コナン」(小学館)の江戸川コナン、「七つの大罪」(講談社)のメリオダス、「ONE PIECE」(集英社)のルフィ、「文豪ストレイドッグス」(KADOKAWA)の中島敦ら、各社の人気キャラクターが勢揃いした。
Twitter上では、啓発ツイートから同キャンペーンへの公式サイトにも誘導。海賊版サイトによる被害額などを伝えており、海賊版サイトを使うことで漫画家や作家に利益が還元されなくなり、漫画文化そのものが衰退してしまう危険性についても訴えている。
●「STOP! 海賊版」公式サイトより
昨年来、コミックス、マンガ雑誌を中心に扱う違法な海賊版サイトが急成長しており、マンガ文化を支える創造のサイクル(上のイラスト参照)に大きな被害をもたらしています。
マンガ家をはじめとするクリエイターの方々は、書店や電子書店などでの売り上げに応じて、出版社から印税や原稿料というかたちで収入を得ています。そしてそれが彼らの生活を支え、新たな作品を産み出す糧となっています。
しかし海賊版サイトは広告収入や一部ユーザーからの会費によって莫大な利益を上げているにもかかわらず、クリエイターの収入には一切、貢献していません。逆に海賊版サイトの存在によって書店や電子書店、出版社の売り上げが激減し、クリエイターの方々の収入もまた激減しているのです。
マンガは日本が世界に誇る文化であり、クール・ジャパンの象徴です。海賊版サイトの存在を許せば、クリエイターの方々の生活が成り立たなくなり、マンガ文化そのものが衰退してしまいます。
みなさんに愛され、育てていただいたマンガ文化を永続させるためにも、違法な海賊版サイトを利用したり広めたりしないよう、読者のみなさまのご協力をお願いいたします。
出版広報センター
海賊版緊急対策ワーキンググループ
出版広報センターの担当者によると、同キャンペーンでは、出版社などが運営する正規サイト/サービスに対して「正規版マーク」を発行・流通したり、読者に対して海賊版サイトを使わないよう呼びかけたりしていくという。
海賊版サイト対策をめぐり、ネット上では、出版各社が手を組み"出版社横断"で作品を提供するサービスの必要性を訴える声も上がっている。担当者によると、出版社横断型サービスの創設に関しては、「具体的に検討する段階には入っていない」という。「まずは正規版マークの普及や、読者への周知を徹底していく」とした。