「スタートアップでぜひ働きたい!」という人はそんなにいないと思う。
「不安定そう」「労働時間長そう」「給与低そう」そんな否定的な声も聞こえてきそうだ。
私は、アメリカのスタートアップで社会人デビューし、ハフポスト、C Channelを経て、今はONE MEDIAという動画メディアにいる。ずっとスタートアップの世界で仕事をしてきた。
周りの友達によく言われることは、
「スタートアップってやっぱりハード?」とか「会社がどうなるか不安定で、安心できなくない?」
インターンの学生によく言われることは、
「大企業で社会人勉強したいので...」「評価がしっかりしているところに行きたい」「給与ってやっぱり低いですよね?」など。
そこで今日は、
・スタートアップの労働時間ってどうなの?
・給与はやっぱり安いの?
・どうやって社内で評価が決まるの?
などの皆さんが抱えている不安について、スタートアップで働くことを経験してきた身として、話していきたい。
①スタートアップの労働時間ってどうなの?
日本の平均労働時間/週 は44.5時間と言われている。
1日約9時間。
世界的に、生産性と労働時間をグラフにして並べると、日本は真ん中らへんである。(Hong Kong Free Press HKFP)
シリコンバレーのスタートアップの平均労働時間は40時間だそうだ。1日8時間。
ただ、アーリーステージのスタートアップは60時間ほど。1日12時間となる。
生産性が1番大事なので、8時間くらい経って集中力が切れると私はスパッと帰る。その代わり、夕食後にまた仕事をしたり、土日も仕事をすることがあり、トータルにすると60時間働いているかもしれない。
でも、スタートアップに入る人は、大抵自分が本当にやりたい!と思った仕事に就いているので、楽しくて気づいたら仕事してた!ということが多いと思う。そして、会社自体が時間よりも生産性を重視することが大半なので、「長く仕事することが美学」といった発想はない。
むしろ「結果さえ出してくれれば、早く帰ってもらいたい」くらいだと思う。
なので、労働時間は本当に人それぞれだ。
ただ一つ言えるのは、「他の人より早く帰るのは申し訳なくて...」みたいな謎の待機活動は一切ないので、サクッと帰れる。
②給与はやっぱり安いの?
誰もが知りたい、大事なお給料の話。
2017年度の日本の平均年収は420万円と言われているが、スタートアップの平均年収は512万円と、やや後者の方が高い。
ただ、スタートアップは年功序列ではなく、成果主義であることが多いため、優秀な人ほど給与が上がっていき、パフォーマンスが出ていないと給与は上がらない、ということが多い。
今回スタートアップの給与や評価制度を考えるにあたり、SmartHR社の代表 宮田さんに話を聞いてきた。
そもそもSmartHRとは、企業が従業員を雇用する際に発生する労務手続きや労務管理を自動化するクラウド人事労務ソフトである。そして、代表の宮田さんはTwitterやブログで社内の評価制度や組織運営に関してのノウハウを公開していて、スタートアップ経営者や人事部から特に注目されている。
SmartHRでは、入社面接時に前職の給与額を聞かないのだそう。面接時の評価、その時のパフォーマンス査定によって、内部の人間と比べて給与を決めるのだと言う。
「だから、社内の人の給与を上げていかないと、社外の優秀な人を採用できないんです。」(宮田さん)
例えば、30代半ばで大企業勤めとなると、それなりに年収が上がっていることが多く、そういった人達を採用するとなると、自然と社内のレベルと給与を上げる必要がある。
「弊社では、しっかりした評価制度と、明文化された給与テーブルがあるので、6ヶ月ごとに昇給や、ストックオプションの付与があります。」(宮田さん)
つまり、結果さえ出せば、年齢や勤続年数など関係なく給与をあげることができるのだ。
性別・年齢・勤続年数などで給与が決まることに私はずっと違和感を持っていて、「賢くて、会社を大きくする人がいっぱい給与もらうべきじゃん」と思っていた。だから、わたしにはスタートアップがぴったりだった。
自分に足りないスキルや目標(KPI)をきちんと可視化できて、それを達成することで、報酬として等級が上がったり、給与が上がったりする。
また、スタートアップの魅力は、成果報酬の給与システムだけではない。
6月19日に上場したことで話題のメルカリは、社員全員にストックオプションを配っていた。(2018年3月まで)会社の業績の変化によって、自分のリターンの価値も変わる、という会社の成果を「自分ごと化」しやすい取り組みである。
SmartHRでは、会社の予想時価総額と自分の評価によって変動する自分のストックオプション価格がわかる、シミュレーターもあるのだそう。
③どうやって社内で評価が決まるの?
これは会社によってかなり異なるので、入社する前に注意した方がいいと思う。
会社によっては、面接時に決まった給与から変化することなく、勤続年数だけ増えていくこともある。勇気を出して給与交渉しないと、全く変動がないパターンだ。
ONE MEDIAでは、マネージャー陣とメンバーの1on1ミーティングを2ヶ月に1度行い、個人のKPIやそもそも価値観マッチの確認をする。
それにより、「サプライズ評価」を無くしている。ここで言う「サプライズ評価」とは、よく人事の間で使われる「びっくり人事」のことである。予想外の評価を告げられたり、配属部署が理由もわからず急に異動になったり、などである。
先ほど例に挙げたSmartHRでは、年2回の評価結果により、昇給/降給・ストックオプションのポイント付与・刺激給などが与えられる。
刺激給というのは、ベースの給与は変わらないが、ベースの給与 +αでもらえる半期の給与のことである。ボーナスという、過去のパフォーマンスに対しての報酬ではなく、未来のパフォーマンスを期待して会社が払うものである。
「何か活躍した時にガツンと上げるようにしています。ただ、一時的なスターモードの状態だから家賃は上げないでね、って伝えるようにしています(笑)」(宮田さん)
多くのスタートアップが「価値観マッチ」「ビジョン共有」をかなり重要視している。それが評価にも響く。結局、会社が求めていること、会社がいいと思っていること、を自主的に行うことができるメンバーが良い評価を受けることになるのだ。
それでも、不安だ、という人がするべきこと
最後。結局のところ、自分に合うところを見つけたら全力で就職希望した方がいいと思う。自分に合ってるかわからなかったら、絶対にやめておいたほうがいい。
「スタートアップは、将来どうなるかわからなくて不安」という人は、まずその会社の戦略やビジョン、社内文化、評価制度、自分が何を求められているか、そして聞けるなら社内株保有率とかを聞いてもいいかもしれない。
わたしが面接で聞くことは大抵これらのことだ。(株の話は入社してから)シリコンバレーや中国では、面接でもっと細かく質問する人が多いそうだ。
SmartHRでは、重要な経営会議の議事録を会社のメンバー全員に開示しているという。また、全社で集まって質問や意見を集めてトークをしたり、会社の残高を見せて、「今後どうしたらいいか」は各チームやメンバーに自主的に考えてもらう機会を与えたりするのだそう。
会社の戦略やビジョンをきちんと理解して、共感し、貢献したい!と思えたら、不安はかなり小さくなる。自信を持った上での、挑戦のドキドキ感とワクワク感が、不確定要素によるナーバス感に勝ると思う。
わたしはいつも思っている。今後20年間でわたしたち日本人はたくさんの海外の優秀な人たちと仕事をする日がくる、と。
中国のある企業は、新卒の初任給を40万円にしたことで最近話題になった。ここ過去5年の中国の勢いを見ても、わたしたちが中国の企業に採用してもらうことや、アジアからの優秀な人材や企業が日本に進出し、活躍していくことが増えていくと思う。
そして、そういった海外の企業は、年功序列ではないと思う。彼らは長時間、そして実力主義ベースで仕事をしていると思う。パフォーマンス × 時間。
英語や中国語を話せるとか言語の問題よりも、
自分の成果を自分でつくる。実力で戦っていく勇気を持つ。そして、自立する。
わたしは学生や新卒の人にこそ、スタートアップをおすすめしたい。
スタートアップは、今後20年間であなたに必要なマインドセットを絶対に染み込ませてくれる、と確信しているからだ。