2012年から勝手に続けているシリーズも今年で7年目。2018年もスポーツ界は大きな話題を振る舞い続け、たいがいは日本を明るく照らしてくれた。
ただ残念なことに、2018年ほどスポーツ界の膿が出続けた年もこれまでになかったのではないだろうか。
よって、今年の次点は「日本スポーツ界の膿」
これまでもスポーツ界において、暴力、パワハラ、セクハラなど日常茶飯事だったに違いない。しかし、東京五輪という大イベントを前に、各界に自浄効果が現れ、各種問題が浮き彫りになり、社会としてもそれを無視するわけにいかない構図に至った流れは善しとすべきだろう。
年明けからカヌーの日本代表候補選手がライバルの飲料に禁止薬物を混入させる...、世界水泳銀メダリストが後輩に暴力を振るった事件が発覚...、元ラグビー・オーストラリア代表選手がタクシー運転手に暴力をかます...と、いやな気分満点で1月はスタート。
すると日本レスリング協会の強化本部長・栄和人による伊調馨に対するパワハラが告発される。5月の関学対日大のアメフト戦では悪質な違反タックルが問題となり、監督兼日大理事の内田正人が処分を喰らう。8月には日本ボクシング連盟会長・山根明による助成金の不正流用が発覚、辞任。協会からの除名も承認された。自らを「男・山根」と表現するだけで、すでに「男」という冠は似合わない。あの年齢にして「男」とは他者からこそ形容されるべきものと自覚しないとは立派だ。
各界の騒動も酷かった。年明けから貴乃花親方の理事解任に始まり、第四十代式守伊之助がセクハラで辞職、大砂嵐が無免許運転で引退勧告処分、春日野部屋暴力事件、3月にも暴力沙汰が2件、「舞鶴市長救命土俵女人禁制事件」も忘れてはいけない。決まり手は、貴乃花部屋消滅騒動からの貴ノ岩暴力事件で引退...と、まぁ、いつから各界はワイドショーのネタ元になったのか。
初場所ではこうした鬱屈した思いを、稀勢の里が吹き飛ばしてくれる...と願うばかり。
気を取り直して、十大ニュースへ。
ニュースなどを眺めていると、平昌五輪での日本勢の活躍に焦点を当てていたりするものの、五輪が巡って来る度に日本勢が活躍するのは、ほぼルーティンのため他に譲る。よって十大ニュースは以下の通り。
第10位 国内初、卓球のプロリーグ「Tリーグ」がスタート
10月24日、まずは男子リーグが両国国技館で開幕。リーグは団体戦。開幕では水谷隼、張本智和を擁する「木下マイスター東京」が、「T.T彩たま」を下し歴史的白星を記録した。また翌25日には、女子リーグ開幕戦も同地で開幕。今後、どんな歴史を刻んで行くのか、いちスポーツ・ファンとして楽しみでならない。
第9位 ル・マン24時間耐久レースにて日本人が駆る日本車が優勝
6月6日に行われた第86回ル・マン24時間耐久レース決勝にて、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソ、セバスチャン・ブエミがドライブしたトヨタ8号車TS050 HYBRID がトップでフィニッシュ。史上初となる日本車と日本人ドライバーを擁しての優勝となった。また小林可夢偉らが乗る同7号車も2位に入り、1−2フィニッシュを飾った。
クルマ関係者にとっては昨年、佐藤琢磨がインディ500を制した歴史的偉業に続く快挙。日本人根性丸出しで恐縮ながら、あまりにもニュースで取り上げられないため、敢えてここで。
第8位 桃田賢斗、世界バドミントンを制し世界ランク1位へ
中国・南京市で開催された2018年世界バドミントン選手権大会は8月5日に決勝が行われ、男子シングルスでは桃田賢斗(NTT東日本)が石宇奇を2-0のストレートで下し、日本男子選手として初の優勝を成し遂げた。また9月下旬には世界ランキングでも1位に付き、こちらも日本男子として初の快挙に。
桃田が違法カジノ店での賭博行為で処分を受け、リオ五輪を逃したのは2016年。日本社会の寛容さに気付かされるとともに、不祥事から2年での復活劇にはスポーツの力を痛感した。
第7位 スキージャンプの高梨沙羅がW杯通算54勝目の最多記録
高梨沙羅は3月24日、ドイツ・オーベルストドルフで行われたスキージャンプ女子ワールドカップ個人第14戦で、2017年2月以来の優勝を遂げ、男女を通じてジャンプW杯最多となる通算54勝目を記録した。
昨シーズンからなかなか表彰台のトップに立てず苦しい転戦が続く高梨ではあるが、今後のさらなる記録延伸に期待。
第6位 川内優輝、瀬古利彦以来31年ぶりボストン・マラソン制覇
4月8日に行われた第122回ボストン・マラソンで、「市民ランナーの星」と言われる埼玉県庁の川内優輝が2時間15分58秒で優勝。1987年の瀬古利彦以来、日本人として31年ぶりにトップでテープを切った。
当日は冷たい雨が降りしきるあいにくのコンディションの中、ややスローペースの展開に耐えた川内が粘り勝ち。マラソン大会と言えば「ボストン」、まだまだ多くの日本人選手がその歴史に名を刻むことを強く望む。
第5位 設楽悠太が東京マラソンで、16年ぶりに日本男子最速を更新
東京マラソンは2月25日に第12回大会が行われ、設楽悠太が2時間6分11秒で2位に入り、2002年のシカゴ・マラソンで高岡寿成が記録した日本男子マラソン最速2時間6分16秒を16年ぶりに更新。報奨金1億円ばかりが取りざたされたが、日本マラソン界に久々に差し込んだ明るいニュースだった。
蛇足だが、筆者は2007年の第1回東京マラソン事務局メンバー。実は同じこの大会で初めて東京マラソンにランナーとして出走、完走した。同じレースで日本新が生まれた感慨は非常に深い。「え? お前のタイムは?」って...、もちろん秘匿情報である。
第4位 大迫傑がシカゴ・マラソンでさらに日本新記録
シカゴ・マラソンは10月7日、第41回大会が開催され、「ナイキ・オレゴン・プロジェクト」に参加している大迫傑が2時間5分50秒で3位に入り、2月の東京マラソンで設楽悠太が樹立した2時間6分11秒の日本記録を上回り、記録を更新した。日本実業団陸上競技連合からもちろん1億円の報奨金が支給された。
長らく低迷期と囁かれた日本男子マラソン界は、この6位、5位、4位のニュースからも推察される通り、今後に希望が持てる位置までたどり着いた。ただし、9月16日に行われたベルリン・マラソンではケニアのエリウド・キプチョゲが2時間1分39秒の世界新記録を打ち立てており、世界はすでにフルマラソン1時間台を窺う。日本勢がどこまで追い上げることができるのか、さらに興味深い。それにしても人類が42.195キロを1時間台で走る時代が来るのか...。末恐ろしい。
第3位 ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平が新人王を獲得
昨年の十大ニュースでも第6位に選んだ「メジャー二刀流挑戦」は今年、大谷が日本を、アメリカを驚かせる大車輪の活躍を見せ、見事、アメリカン・リーグの新人王を獲得、メジャーを席巻したとしてよいだろう。
日ハムの栗山監督が「打つほうは心配ない」と明言した通り、打っては114試合出場と限られた中で打率2割8分5厘22本塁打。投げては、10試合に登板し4勝2敗。
もはや解説不要。今はとにかく怪我からの回復を見守るのみ。
第2位 羽生結弦が冬季五輪2連覇
年の初頭に行われたイベントは、どうにも影が薄くなりがちではあるが、この快挙を忘れた者はいないだろう。羽生はソチ、平昌と冬季五輪2大会連続で金メダルを獲得。1952年にサンモリッツ、オスロを連覇したディック・バトン以来、フィギュア男子としても66年ぶりの偉業。
忘れてはならないのは、これが怪我からの復帰戦だったという点。いやはや、凡人は驚くしかない。
第1位 大坂なおみがS・ウィリアムズを破り、全米オープン初制覇
通算138回、50周年記念大会となった全米オープンは9月8日、女子シングルス決勝が行われ、大坂なおみがセリーナ・ウィリアムズを破り、優勝。日本勢としてシングルス史上初の4大大会制覇を成し遂げた(*車いすテニスを除く)。
大坂の活躍とその愛くるしいコメントとは裏腹に、同試合でのセリーナの振る舞いも話題に。その対比があまりに鮮明だった点でも、テニスファンの記憶に残ることだろう。
筆者は1970年代まで同大会が開催されていた「クイーンズ区フォレストヒルズ」に長らく住んでいたため、2014年の錦織圭準優勝と合わせ、全米オープンで日本勢が活躍するさまには、ことさら思い入れがあり1位とした。
2018年は冬季五輪、サッカーW杯、アジア大会など話題となるイベントも数多く催されたが、あくまで「独断と偏見」による選択ゆえ、ランク外についてはご容赦のほどを。
世相として「元気なのはスポーツだけ」と囁かれる日本だけに、2019年もスポーツ界からの明るい話題を期待したい。