スカパーJSAT、世界初“宇宙ごみ”レーザー除去する衛星の設計・開発に着手 26年提供目指す
スカパーJSATは、国立研究開発法人理化学研究所、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、国立大学法人九州大学、それぞれとの連携により、世界初となる、レーザーを使う方式によりスペースデブリ(不用衛星等の宇宙ごみ)を除去する衛星の設計・開発に着手することを発表した。同事業は2026年のサービス提供を目指す。
1957年のスプートニクの打ち上げ以来、各種の人工衛星が次々と打ち上げられており、地球に住む人々は天気予報、衛星通信やGPSによる位置情報といったさまざまな形で宇宙からの情報の恩恵を受け快適な生活を過ごしている。しかし、その間、使われなくなった人工衛星、故障した人工衛星、打ち上げに用いられたロケットの部品や衝突したさまざまな人工物の破片などが加速度的に増え続けていることが問題となっている。
例として、1ミリ以上のスペースデブリは1億個以上と推定され、宇宙空間を秒速約7.5キロメートルという超高速で飛び交っているため、それが人工衛星に衝突することで、衛星のミッション終了などのダメージを引き起こす可能性がある。そのため、宇宙環境の悪化により、宇宙の持続的利用が不安視されている。
この日オンライン上で行われた説明会で、スカパーJSATは、自社で保有する全ての通信衛星を国際ガイドラインに準拠した手法で廃棄しているとし「約30年にわたり宇宙を利用してきた企業として、きれいで安全な宇宙環境維持への義務を全うしてきた」と説明。宇宙ごみの問題はCO2や海洋プラスチックと同様の環境問題であることから、宇宙のSDGsとして本事業を通じて課題解決を目指し、今後も持続可能な宇宙環境の維持に貢献していくとした。
スカパーJSTは、1989年に日本の民間企業初の通信衛星JCSAT-1号を打ち上げて以来、宇宙利用企業の草分け的な存在として、30年以上にわたり衛星通信サービスの提供を国内外に行ってきた。既存サービスに加え、2018年より開始した次世代ビジネスを検討する社内スタートアップ制度の下、持続可能な宇宙環境の維持を目指したプロジェクトを立ち上げ、産学連携で事業の実現性の研究と検討を進めている。
今回、各種のスペースデブリ除去手法があるなか、「接触しないため安全性が高い」「スペースデブリ自身が燃料となり、移動させる燃料が不要なため経済性が高い」の2点に際立った利点があるレーザー方式を採用することを発表。
基礎開発に実績のある理化学研究所とレーザーアブレーションによる推力発生実験を行い、技術の実現性を確認。衛星の主要なミッション機器を開発するため、2020年4月に理化学研究所内に融合的連携研究制度チームとして、正式に「衛星姿勢軌道制御用レーザー開発研究チーム」を設け、名古屋大学及び九州大学と連携しレーザー搭載衛星の設計開発(検討を含む)を進めていく。なお、衛星と地上システムについては、JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の枠組みを通じた検討を共同で実施する。
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