日本の5Gサービス開始に合わせ、ZTEから「AXON 10 Pro 5G」がソフトバンクから、「ZTE a1」がKDDIから登場します。また中国では「AXON 11 5G」も発表になりました。ここのところスマートフォン市場で目立った製品の無かったZTEですが、各国の5G開始と共に活発な動きを見せています。
ZTEのAXONシリーズはフラッグシップモデルとしてハイスペックな製品が揃っていました。ところが3月23日に発表されたAXON 11 5GはSocにSnapdargon 765Gを採用し、ミッドハイレンジとしてワンランク下げたモデルとして出てきました。
とはいえカメラはクワッド構成、6400万画素+800万画素+200万画素+ToFとし、4K60fpsの動画撮影を可能にしています。SNSなどでのビデオコンテンツの利用が主流になりつつある中で、AXON 11 5Gは高精細なビデオを簡単に撮ってシェアできるスマートフォンを目指しています。
このAXON 11 5Gのカメラは正方形の台座に4つのカメラを搭載する、ファーウェイの「Mate 20」に似たデザインを採用しています。このデザインはアップルが「iPhone 11」シリーズでも採用しましたが、まだ他のメーカーには広がっていません。そしてよく見るとKDDIのZTE a1のカメラも、配置は異なりますがほぼ同じ形をしています。
ZTE a1のカメラは4800万画素+800万画素+200万画素+ToFなので、AXON 11 5Gから若干スペックを落としたものになっています。なお4800万画素のカメラは、前世代モデルでもあるAXON 10 Pro 5Gが採用しています。
それではZTE a1のベースモデルがAXON 11 5Gかというと、どうも単純ではないようです。ディスプレイサイズはそれぞれ「約6.5インチ」「6.47」インチでおそらく同等ですが、ZTE a1はフラットなディスプレイ形状。それに対してAXON 11 5GやAXON 10 Pro 5Gは左右の角を落としたエッジディスプレイとなっています。
また本体サイズはZTE a1が77 × 164 × 9.0mm、AXON 11 5Gが73.4 x 159.2 x 7.9mm。内部構成は同等かもしれませんが、ZTE a1はコストを下げるため本体サイズが若干大きくなっているのでしょう。
このようにAXON 11 5GとZTE a1は姉妹機と呼べる関係かもしれません。なおAXON 11 5Gの中国での価格はRAM8GB+ROM128GBモデルが2698元(約4万2000円)です。ソフトバンクから出るAXON 10 Pro 5Gは8万9280円、中国では4999元(約7万8000円)なので、10%程度割高です。
ということは、AXON 11 5Gが日本で出るとすると5万円程度になり、そのAXON 11 5Gよりスペックの低いZTE a1は4万円台になるのでは......などと想像してしまいます。
いずれにせよソフトバンクのAXON 10 Pro 5Gよりは安くなるのでしょう。
さてZTEの5Gスマートフォンは価格重視の戦略を取っていますが、2020年は高価格帯のモデルも出すようです。それは曲がるディスプレイを採用した折りたたみスマートフォンの投入です。世界初の折りたたみスマートフォンを2018年11月に発表したRoyleと提携し、Royoleの新しいフレキシブルディスプレイ、第三世代「Cicada Wing Display」の供給を受け、自社スマートフォンに搭載する予定です。
Royoleの初代折りたたみスマートフォン「FlexPai」はヒンジ部分のカーブが大きく、折りまげられるもののヒンジ裏の隙間が多く、スマートなデザインとは言えませんでした。しかし第三世代Cicada Wing Displayと共に発表された二世代目のモデル「FlexPai 2」ではギャップレス、完全に閉じるスマートフォンを実現しました。
3月25日にRoyoleの新製品と共にアナウンスされた両社の提携は、RoyoleにしてみるとZTEのスマートフォン開発ノウハウ、特に5Gに関する技術を得ることができ、ZTEはフォルダブルディスプレイという、他社でもまだ実用化に四苦八苦している技術を手にすることができます。
FlexPaiはコストの関係もありMediatekのSoCを採用しましたが、FlexPai 2は5G対応ということもあり、実績が多数あるクアルコムのSnapdragon 865を採用しています。安定して利用できる5Gスマートフォンの商用化には技術力のあるメーカーとの提携は必須でしょう。
ZTEは2017年に2枚のディスプレイを組み合わせてたためるスマートフォン「AXON M」を出したものの、成功には至りませんでした。ディスプレイ2枚の組み合わせではセンターのギャップが目立ってしまい、開いた時のユーザー体験が今一つだったのも敗因でしょう。
しかし動画を中心としたリッチコンテンツの時代に5G対応のフォルダブルディスプレイを採用したスマートフォンを出せば、市場で十分受けれられるはずです。
折りたたみスマートフォンはまだ数が少なく価格も高いままです。ZTEの参入で折りたたみスマートフォンの価格が引き下がり、さらに5Gスマートフォン市場が盛り上がることに期待したいものです。
2020年3月26日Engadget 日本版「2020年は折りたたみスマホを投入、低価格5GスマホだけではないZTEの魅力」より転載
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