4歳の息子がある日「スカートはきたい」と言ってきた

「もう少し抑えめでいいのに、こんなかわいいのを選びやがって。クサクサした気持ちになった」
息子が選んだスカート
MASAKO KINKOZAN/HUFFPOST JAPAN
息子が選んだスカート

半年くらい前だったと思う。4歳半の息子が「スカートはきたい。買って」と言い出した。

初めて言われたときは正直、うーーーんとなった。

以前からピンクやパステルカラーが「好き」と言っていて、ピンク地にリボンやキャンディーの柄が散らばったような、自転車ヘルメットや傘を選んだりしていた。

それ自体は自分の中では全然OKというか、むしろ息子にジェンダーバイアスかかっていなくて、むしろよかったと思っていた。

そうだったのだけど、スカートに対しては、わたし自身のなかの「ジェンダーバイアス」(心の壁)がドーン!とそびえ立った。

今年1月、仮面ライダーのベルトが欲しいと泣きじゃくる女の子に母親らしき声で「女の子だから買わない」「男の子のおもちゃだから」など返す動画がTV番組で紹介され、Twitterで話題を呼んだ

あの動画を見て、性別を理由に、本人の意思を言語道断に拒否したくないと思った。でも、実際そういう場面に自分が置かれると、自分の中の「心の壁」がどうしても「男の子にスカート」をすぐに受け入れられない。どうしても。

試されているような気持ちになった。ヘルメットとスカートの間には、まるで大きくて深い谷があるかのように大まじめに悩んでいる自分。ばかばかしい。思いを巡らしても、許容できない自分がまだいて、もてあました。

彼の求めをのらりくらりとかわしていたけれど、でもあまりにしつこく頼まれて、近所の子ども服屋でやっすいのを、ヤケ気味な気持ちで買った。白いレースがふわっとなった、チュチュっぽい、いまどきの女の子が着るかわいらしさ満点のやつ。息子が選んだ。

もう少し抑えめでいいのに、こんなかわいいのを選びやがって。買いながらクサクサした気持ちになる自分の怒りのポイントがずれていて、ヘンテコだった。

着せて電車に乗り、フランスのインターナショナルスクールの文化祭に出かけた。色白で女の子にも間違えられることもある息子でも、スカートをはくと、見慣れないからヘンテコに見えた。だけどすれ違う人たちはだれも不思議そうには見なかった。

本人に聞くと、園でもスカートをはきたいと言っていて、断られることが多いけど、でも1度だけ着せてくれた先生がいたそうだ。

その白いのをどこかにしまいこんで、しばらくスカートのことは忘れていた。そうしたらまた最近、「買って」と言われた。

今度も少しだけうーーんとなったが、前回ほどではなく、ユニクロで冬物の服と一緒に買いにいった。息子は自分で売り場を探し、小豆色の、クルッと回ると、フワッと広がるプリーツが入ったタイプを選んだ。

スカートなら何でもいい訳ではなく、そういう、フワッとクルッとなるのが好きみたいだ。

うれしそうに「みてー」と、何度もくるくると回り、ステップを踏む息子。

でも前回と違うのは、最初はスカートをコソッとはきたがったことだ。前回は堂々と欲しいと言っていた。最近「男の子だから」とか「女の子だから」と、彼なりのジェンダー観を言うようになったので、本人の中にもバイアスができはじめたんだな、と思った。

自分は男の子なのにスカートという、女の子がはくものをほしがっている、と。でも欲しさが募る、このギャップというか、葛藤というか。

4歳児にも、「世間様」のまなざしがしっかりと内面化されている一方、「着たい」という意思もしっかり育っていたのだった。

先週末、この小豆色のスカートにスパッツをはかせて動物園に出かけた。くるくる回りながら歩く息子とハラハラドキドキするわたし。

途中で地元の神社でお餅つきしていたので寄った。そこで園のお友達の家族に会った。でもだれも不思議そうな顔をしていなかった。

なんだろね、スカートはいて、とは思ったかもしれないが、そんなことを指摘してくる人もいなかった。指摘されたのは、息子の口のまわりに安倍川餅の甘じょうゆのたれがついたままになっているから拭いてあげた方がいい、ということくらいだった。

その日、スカートはいた息子と動物園を回るうち、わたしもどうでもよくなった。