こんにちは、エン・ジャパン名古屋オフィスのコピーライター、加藤です。
今年で中途入社4年目。いまでこそ楽しく働けるようになりましたが、転職したての頃は、前職とのギャップに苦しむことも。環境の変化に戸惑い、うまく自分を出せずに悩んでいた時期がありました。
同じように、新しい環境に慣れず、なかなか成果も出せない。転職先や異動先でそんな悩みを抱えたことがある方、多いのではないでしょうか。
どうすれば、新しい環境でうまくやれるんだろう。そのヒントが知りたくて、ある方を尋ねました。
遊佐弥生さん。エン・ジャパンにキャリアパートナーとして異業種から転職し、たった2年半で社長賞(*)を2回受賞した女性です。
10年以上経験を積んできたアパレル業界を飛び出し、半年で、「社長賞 新人賞」を受賞。それから2年後、拠点異動をしてまた半年で「社長賞 ベストマネージャー賞」を受賞されています。
「30歳近いのに何も知らない、何もできない新人で……最初は周囲にどう思われているか不安でした。でも、恥を捨てたらいろんなことがうまくいくようになったんです」
彼女はなぜ、新しい場所でずっと活躍し続けられるの……?これまでの歩みを辿ってみると、遊佐さん流の「成果でみせる」突破術がみえてきました。
29歳で、ベテランから新人へ
入社2年半で社長賞を2回も受賞するほど活躍されていた遊佐さん。やはり、入社当初から活躍していたのでしょうか。
「とんでもないです。新人時代はむしろ、“30歳も近いのに何も知らない”と言われていたと思いますよ」
入社前は、10年以上アパレル業界で経験を積んできた遊佐さん。オフィスで働くのは初めて。人材業界の専門用語などが分からないことはもちろん、名刺交換の仕方もよく知らなかったといいます。
「最初に2週間の導入研修があったんですけど、先輩の口から出るほぼ全部の単語が分かりませんでした(笑)配属後も分かることのほうが少ないくらいで、1~2ヶ月くらいは、どう見られているんだろうって悩みましたね……」
中途入社なら、ある程度の社会人経験を積んでいるもの――自分自身、そういうイメージがあるからこそ、分からないことが恥ずかしい。私も中途入社なので、同じような気持ちになったことがあります。
ましてや、遊佐さんは前職で店長や店舗立ち上げの責任者も経験された方。“ベテラン”から一気に“何も知らない新人”になったのです。私なら、もっと早い段階でくじけてしまっていたかもしれません。
恥を捨てて、質問しまくる
入社当初はかなり苦労されていたというお話、正直なところ意外に感じました。それでは、遊佐さんはどのように最初の壁を乗り越えたのでしょうか。
「やったことは、じつはすごくシンプルで。恥を捨てて、質問をしまくりました(笑)分からないことが出てきたらすぐに先輩や上司をつかまえて聞く。何も知らないと思われるよりも、何も聞かずに仕事ができないままでいるほうが恥ずかしいと思ったんです」
「質問の量が尋常じゃなかったみたいで、周りの人には“質問モンスター”って呼ばれてましたよ(笑)」
基礎的なビジネスマナーも、難しい専門用語も。とにかく分からないことが出るたびに、遊佐さんは質問をしていたといいます。
また、量をこなしたのは質問だけではありません。業務量も先輩と同じ、もしくはそれ以上やったそう。
「自分が新人だってことは、社外の人には関係のないこと。上司や先輩を困らせるより、求職者の方や企業の方に迷惑をかけるほうがイヤだったんです。意識していたというよりも、自分が求職者の方の立場だったらイヤだなと。そんな人に、大事な人生任せられないなあ、って」
人の2倍3倍の量に取り組んでいたことは、結果的に早い成長につながりました。そして、わずか半年で「社長賞 新人賞」を受賞。こうして遊佐さんは、みずから活躍への道を切り拓いていったのです。
むりに馴染むより、仕事でアピールすればいい
この経験を経て、遊佐さんは気づいたことがあったそう。
「人との関係をよくしたいなら、まずは仕事のコミュニケーションを増やすことが大事だなって思ったんです。私はそこまで環境に馴染もうとしていなかったのですが、質問量が多かったことで、自然と先輩や上司との距離が近づいて」
新しい環境だと、どうしても人間関係を気にしてしまいがち。馴染むためにはプライベートの話をするところから…と考える人もいますが、確かに仕事の会話を増やすほうがハードルは低いのかもしれません。
「それに、仕事で成果を出せば自信にもつながる。そうなるとだんだん、自分の素を出せるようになってくるんです。人としてうまく振る舞って環境に合わせるよりも、仕事で早く成果を出して認められることが大切なんだなって学びましたね」
その後リーダー職を経て、関西支社から東京本社へ異動することとなった遊佐さん。東京で、マネージャーとして7名の新卒メンバーを育てることになりました。
同じ会社とはいえ、拠点と本社では人数も雰囲気も、進め方も違います。しかし遊佐さんは、ここでも無理に環境に合わせることはしなかったそう。
「新卒メンバーが最初にやる業務は、新規のお客様への電話。でもじつは私、これまで求職者の方のサポートがメインだったので、企業に電話をかけたことがなかったんです……。だからまずは、私自身が近くにいる人に電話のかけ方から教えてもらいました(笑)」
管理職になると、より一層「分からない」と言いづらいような気がします。
「場所や立場に関係なく、自分が正しいと思うことをやり続けるほうがいいと思ったんです。それでいうと、私がやるべきは“育成”。管理職としてどう思われるかよりも、メンバーの成長というミッションにおいて成果を出すことを、一番に考えていたかもしれません」
結果、メンバー育成により大きな成果を上げ、再び社長賞を受賞した遊佐さん。「周りの人には、むしろみんなが遊佐に合わせるようになったって言われました(笑)」と語る姿からは、遊佐さんがいまの環境で愛されていることが伝わってきました。
調子にのっていた過去の自分を、戒めにして
お話を伺って感じたのは、遊佐さんがとにかく目の前の仕事に全力で取り組んでいるからこそ、成果を出し続けられているということ。
しかし、そこまでがんばり続けるのは簡単ではないと思います。常に一生懸命でいられる原動力を伺うと、遊佐さんは前職時代の話をしてくれました。
「前職に入社して3~4年目くらいですかね。何となく手を抜くところも分かってくる時期になって、完全に調子にのっていた時があったんです」
ちょうど店長という責任あるポジションも任せられるようになっていた頃。遊佐さんは、当時のことを「根拠のない自信があって、ナゾの無敵状態だった」と明るく振り返ります。
「恥ずかしいんですけど、“人って簡単ですよね”とか言っていたんです。接客の仕事をする中で、人の言葉や動作でどう対応したら良いか何となく分かるようになって。一人でできない業務なんてないし、“飽きた”じゃないですけど……なんか、人間や仕事のすべてを理解した気になっていたんですよね」
そんな遊佐さんの自信は、あることをきっかけに崩れます。
新しい店舗のオープンを任され、店長として15人くらいのスタッフを採用した時のこと。無事にオープンして数ヶ月後。10人以上のスタッフが、いっきに退職してしまったのです。
「3人くらいを残して、ほとんどのスタッフが辞めちゃったんです。何とかしなきゃって1ヶ月以上ほとんど休みなく働いて……」
「そこで気づきました。勘違いだったんだって。私は人に助けられていただけで、能力なんて全然ない。それなのに“もう何でもできる”って思い込んでいた。自分のことばかりで、誰かのために動くとかもっと成長するとか、人のことを全然考えられていなかったんです」
それまでは自分のことしか考えていなかったことに気づいた遊佐さん。スタッフのため、お客さんのためにがんばるという考え方に変わったといいます。
「転職してからも、そこは強く意識しています。自分のためじゃなくて、求職者の方や企業の方のため、自分がマネジメントするグループのメンバーのためにがんばろうって。できることが増えると調子に乗っちゃうので、私はきっと、自分のためにがんばることに向いていないんだと思います(笑)」
いまの遊佐さんが、大きな成果を残した後も変わらず走り続けられる理由。それが、なんとなく分かった気がします。
「誰かのために」には、ゴールがない。彼女にとって社長賞はゴールでも区切りでもなく、たまたまついてきた「結果」だったのかもしれません。
【編集後記】
転職や異動といった変化に関係なく、目の前の仕事に自分らしく、全力で取り組まれている遊佐さん。「成果を出せば自然と周りに認められる」という遊佐さんのお話は、中途入社である私にとって、新しい気づきになりました。
周りと上手くいかない時、これまではコミュニケーションが苦手なことを理由にしがちでした。雑談とか苦手だからな…なんて思っていましたが、まずは仕事の質問をするところから始めればよかったんですね。
遊佐さんは「たくさん仕事の質問をする人を、がんばっていないとはみんな言わない」ともおっしゃっていました。新しい環境に移る時がきたら、私も実践してみたいと思います。
取材・文 / 加藤亜紗実
編集・撮影/長谷川純菜