自民党の「難聴対策推進議員連盟」(石原伸晃会長)は12月6日、小児の言語発達や療育の専門知識を持つ「手話早期支援員(仮称)」の育成を検討することなどを盛り込んだ提言案を明らかにした。一部修正の上、政府に申し入れる。
出産前から新生児、小児期、成人期、老年期に至るまでの課題を抽出し、それぞれに解決の方向性を書き込んだ。
石原会長は「世界保健機関(WHO)は、2020年3月に聞こえについてレポートをまとめる予定で、国際的にも難聴対策の機運が高まっている。我が国も、世界に恥じない難聴対策をしなければならない」とあいさつした。
手話早期支援員は、難聴児の早期支援を音声言語の獲得に限定せず、手話を使って育つ道も選べるよう、親子を支える人材。各地のろう学校など既存のネットワークで活用することを想定する。
議連の問題意識は当初、「聞こえる力をいかに伸ばすか」という点に置かれていたが、議論を重ねるうちに、「聞こえない人」の言語獲得や療育、生活支援にまで領域が広がった。
例えば、「手話のできる教員の拡充」「小児領域を専門とする言語聴覚士に手話言語に関する知識普及を図ること」「災害発生時における難聴者(児)の円滑な避難の促進」といった項目も入った。
提言の案はA4サイズで9ページに及ぶ。内容が多岐にわたるため、同日の総会には厚生労働省、文部科学省など4府省庁の幹部22人が同席。聴覚障害の当事者団体、医療従事者、補聴器の販売団体も参加した。
会場にいた専門家は「今までにない画期的な議論ができた」(大沼直紀・筑波技術大名誉教授)と同議連の取り組みを評価した。
複数の議員からは、提言後も継続して議論するべきだとの発言があった。
同議連は今年4月に発足。新生児、小児期の難聴対策は6月に提言をまとめた。その結果、政府の20年度予算の概算要求で難聴児関連予算が19年度比13倍に増加。石原会長は「こんなにうまくいった例はなかなかない」と評価している。
(2019年12月19日福祉新聞より転載)