消費者庁は3月7日、「風評に関する消費者意識の実態調査」を公表した。
放射性物質を理由に「福島県」や「被災地を中心とした東北」の産品購入をためらう人は過去最少となった一方、6割以上の人が食品中の放射性物質検査が行われていることを「知らない」と回答した。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から13年が経過し、これまで以上に福島県や東北の産品の魅力や安全性を発信していく必要性が出てきた。
「産地を気にする」は過去最少に
調査は1月31日と2月1日の2日間、インターネット上で実施。東日本大震災の被災地域(岩手、宮城、福島、茨城の4県)や都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県)に住む20〜60歳代の5176人が回答した。
消費者が買い控え行動をとっている場合の理由を調べ、風評対策などに役立てる目的で実施しており、今回で17回目となる。
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まず、「食品の産地を気にする理由」として「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合は9.3%(前回比1.2ポイント減)と、これまでで最も少なくなった。
「放射性物質を理由に購入をためらう食品の産地」として「福島県」と回答した人の割合も4.9%(同0.9%減)と、過去最少となった。なお、「被災地を中心とした東北」は3.4%(同0.4ポイント減)、「北関東」は1.1%(同0.3ポイント減)、「東北全域」は1.3%(同0.2ポイント減)などだった。
検査の実施「知らない」は6割
一方、「放射線による健康影響が確認できないほど低い線量のリスクをどう受け止めるか」という質問で、「一定のリスクを受け入れられる」と回答した人の割合は57.7%と、前回(59.0%)と比べて1.3%減少した。
この回答は、11年前の第1回調査(2013年2月)の58.6%からほとんど変化はない。
なお、一定のリスクを受け入れられるというのは、「基準値以内であれば他の発がん要因と比べてもリスクは低く、現在の検査体制のもとで流通している食品であれば受け入れられる」と「放射性物質以外の要因でもがんは発生するのだから、ことさら気にしない」の合算を示している。
また、6割を超える人が、食品中の放射性物質の検査が行われていることを「知らない」と回答した。
第1回調査では22.4%だったが、前回の第16回調査(23年1月)で63.0%と過去最高になり、今回も6割超を維持したままだった。
23年8月から福島第一原発の処理水の海洋放出が始まり、改めて食品の安全性に関して注目が集まったが、この調査ではその傾向が数字として表れなかった形だ。
では、風化防止を防止するためにはどうすればいいのか。
選択式で選んでもらったところ(複数回答)、「それぞれの食品の安全に関する情報提供(検査結果など)」が45.9%(2375人)に上った。
続いて、「食品に含まれる放射性物質に関する科学的な説明」が30.6%(1584人)、「それぞれの食品の産地や産品の魅力に関する情報提供」が29.7%(1537人)などで、「何をやっても安心できるとは思わない」は18.7%(968人)だった。
消費者庁は、食品中の放射性物質の検査が行われていることを「知らない」と回答した人が近年は6割程度いることから、「食品中の放射性物質に関する情報発信やリスクコミュニケーションを推進していく」という。
具体的には、意見交換会や被災地の農林水産物の魅力を伝えたり、食品の安全性を多言語で発信したりするほか、リスクコミュニケーションへの積極的な支援を挙げている。