45歳女性首相の誕生を願って私が1票を投じた理由。「育児も家事も介護も任せきりの人たちが政治をしてきた」

「国会議員として一年余、私が問題意識を持っている様々な課題は、女性が意思決定の場に増えれば確かに変わっていくことだと、議員になる前からのこの想いがさらに強くなり、今回の投票に繋がりました」

9月16日、菅義偉氏が国会で首相に選出されました。その首班指名選挙で、伊藤孝恵参院議員に1票を投じたのが、寺田静参院議員でした。

 

この行動には、批判も含めて様々な反響があったといいます。

 

寺田さんのnoteによれば、首班指名の結果が読み上げられたとき、議席からは「(伊藤議員が)自分で入れたんじゃないのか」「記録に残るのに何をやっているんだ」などの声が上がったといいます。

 

一方、与党の中からも理解を示す声が上がっています。河北新報などの報道によれば、橋本聖子・男女共同参画担当大臣は、9月18日の閣議後会見で、「女性が当たり前に、首相候補や閣僚になるのが望ましい。これからの世代に第一歩を示した」と述べたといいます。

 

日本は、各国の男女の格差を分析した「ジェンダーギャップ指数」が153カ国中121位と、低い順位にあります。背景の一つにあるのは、政治分野での女性の参画が進んでいないという現状です。どうすれば、政治の世界で女性が当たり前に活躍できるようになるのか。

 

仕事、家事、妊娠、出産、育児、介護…。様々な生き方をして、時には壁と向き合っている人たちに、政治の世界は開かれていたのでしょうか。政治になぜ女性が参加する必要があるのか。寺田さんが「1票」を投じた理由について書いた文章を以下に紹介します。(ハフポスト日本版編集部)

【初めての首班指名に臨み】

本日の国会で、菅義偉総理大臣が誕生しました。

県民の一人として(編集部注:寺田さんは秋田選挙区)、県出身者初の総理大臣がうまれたことを誇らしく思います。

初めて臨んだ首班指名。

私は同年代の参議院議員、伊藤孝恵さんを指名させていただきました。

首班指名は、会派の中で指名する方を決めますが、私自身は無所属なので従うべき方向性はありません。

安倍総理辞任の意向との報道、自民党総裁選、野党の合流などのニュースを見ながら、私自身が持っている問題意識、目指すべき社会の姿、国のかたちを考えながら、どなたに総理になって頂きたいのか、これからの日本をどういう方が引っ張っていくべきなのか、熟慮を重ねてきました。

伊藤孝恵さんをご存じない方も多いと思いますので、簡単にご紹介します。

伊藤さんは4年前の参院選で初めて当選された、私と同じ45歳の女性です。

お子さんが生まれた時に、「この子は耳が聞こえないかもしれない」と言われたことから、

産後うつの中、障がい児を取り巻く環境のことを徹底的に調べ、絶望し、社会を変えなくてはならない、

そしてどうやったら社会を変えられるのかと悩み、民主党の公募に応募するに至ったとのこと(編集部注:伊藤さんは民主党の公募に応募した後、党名変更により民進党公認として立候補)。

その政治家としての生い立ち、子どものために社会を変えたいというところに心から賛同しますし、

私自身の思いと重なるところがあります。

加えて、私にはまだ十分ではない議員としての強さと確固たる覚悟、フットワークの軽さなど、こうありたいと心から思う尊敬出来る先輩議員です。

40代の女性議員が総理にと、歴史ある国会において奇異なことと映るかもしれません。

ただ、諸外国を見渡せば、既に30代、40代の女性たちが首相に就任しています。民間分野でも様々な意思決定の場で活躍しています。

コロナ対策が成功したと言われる国の多くのトップが女性であったことも話題となりました。

フィンランドは連立与党5党首、全員が女性です。

女性が人生を歩む中であたる様々な壁。

「勉強をしろ。良い成績をとれ。良い学校にいけ。良い会社に就職しろ」

と言われ続けてきて、ある程度の年齢になると、

「もう仕事はいいから結婚して子どもを産め。それが女性の幸せだ」

そう周囲から言われることの辛さ。

私自身もかつてそうであったように、周囲に言われずとも自分でも時々そう感じてしまう自縄自縛の呪いのようなものが今の日本の女性が抱えている辛さだと私は感じています。

妊娠すれば、今まで経験則でそうしてきた自分の健康管理では歯が立たない体調の変化に翻弄され、

出産すれば、今までやってきた効率性や論理性では全く歯が立たない育児の世界に放り込まれ、

もし生まれた子どもに障がいがあれば、周りの偏見に苦しみながら、十分とは言えない障がい児の育児・教育環境を知ることから始めなくてはいけない。

働き詰めの夫に頼ることもできない中、女性はこうした重い責任を引き受けています。

一方で、大黒柱として一生働き続けることが当たり前とされる男性のプレッシャーも相当です。

女性は家事手伝いや結婚して家庭に入るという選択を社会的に容認されますが、

男性は同じことをすれば「人生の落伍者」のようなレッテルを貼られる現実があると感じます。

本当に生きづらい社会が、私たちの前には横たわっています。

日本のこうした問題が放置されているわけではありません。少しずつですが前進はしています。

ただ、諸外国はその10倍20倍のスピードで社会の仕組みを変えていきました。

そこには、この問題に正面から向き合うこれからの世代、女性達の姿がありました。

かたや、育児も家事も介護も全部誰かにやってもらって仕事に専念した人たちが政治をしてきた結果が、ジェンダーギャップ指数121位の今の日本の姿です。

国会議員として一年余、私が問題意識を持っている様々な課題は、女性が意思決定の場に増えれば確かに変わっていくことだと、議員になる前からのこの想いがさらに強くなり、今回の投票に繋がりました。

政党や派閥に左右され、前例や慣例を重んじる今の政治において、私の投票行動を快く思われない先輩諸氏がいらっしゃると思います。

実際、開票結果が出ると、「自分で入れたんじゃないのか」「記録に残るのに何をやってるんだ」との呆れるような声が聞かれたことも事実です。

それでも、

私は、伊藤さんに日本を大きく変えていってほしい。

理想とする総理大臣の姿を思い描き、伊藤さんに私の一票を投じました。

もちろん、今回この想いが成就することはありませんでしたが、これからも、目指す社会の姿を見据え、私なりの歩みを進めていきたいと思います。

2020年9月16日
てらたしずか

写真は伊藤孝恵さんの議員室にて。
後ろの遊具のいくつかは我が家からのお下がりです。

寺田静さんのnote記事より

 (本記事は、2020年9月16日の寺田静さんのnote「【初めての首班指名に臨み】」より転載しました)

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ハフポスト日本版は10月6日午後9時から、この文章を書いた寺田議員と、1票を投じられた伊藤議員を迎えてライブ番組を配信します。

(1) 1票を投じた意味があったのか (2)女性首相が日本で誕生するには、どんな改革が必要なのか (3) そもそも女性議員が少ないのは何に原因があるのか、それとも「選挙の結果」で仕方ないことなのか――。様々な論点を話し合いたいと思います。

「どうすれば女性首相が誕生する?」皆さんのお考えを聞かせてください

ハフポスト日本版では、「どうすれば日本で女性首相が誕生するのか」というテーマについて皆さんのお考えを伺いたいと思います。アンケートにぜひご協力ください。
結果は、当日のライブ番組やハフポスト日本版の記事などで紹介する可能性があります。ご協力、何卒よろしくお願いいたします。

▼回答はこちらから
https://forms.gle/SNuV9uzbd3kovyZG8

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。

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