「メイク」よりも「素肌」。
今、世界中でそんなトレンドが加速しているという。コロナ禍で増えたオンラインミーティングでは、画面上で「私ってこんな顔だったっけ?」という思いをした人も多かったはず。
もっと自然体で、内側から輝くような肌を長続きさせたい……そう願うのは、高望みなんだろうか?
さまざまな美容法に精通する神崎恵さんが、SHISEIDOの最新研究に出会って確信したのは、「血管・血流」の大切さだった。
お風呂上がりの肌が理想の肌
加治屋健太朗さん(以下、加治屋) 今までスキンケアは、外から肌の悩みをケアする手法が主流でした。一方で、SHISEIDOでは体の内側に着目して、20年にわたる研究で毛細血管の状態が肌の老化に大きく関わっていることを突き止めたんです。
昨年の11月にはその研究を発展させ、血管・血流にアプローチすることで皮膚の生命力を高めるためにLifeblood Research™に着手しています。
神崎恵さん(以下、神崎) 血流・血管の大切さって、実は皆さん、日常の中で感じてらっしゃると思います。例えば、お風呂上がりに抜けるような透明肌を得られた経験は、どんな女性にもあるはず。体の内側の「めぐり」を良くすることで生まれる素肌の美しさは、私は「美の原点」だと思っています。
加治屋 お客様に話を聞くと、お風呂上がりには透明感だけでなくハリも上がっているというんです。ハリを与えるものというと、従来の考え方だとコラーゲンです。しかしお風呂上がりに突然コラーゲンは増えませんから、我々はここで、「もしかしたら……」と、血流が関係しているのではと考えました。
調べてみると、お風呂上がりには血流が活性化して、普段あまり血液が流れていない細い血管に、多くの血液が流れ込んでいたんです。つまり血管を太く丈夫にして、「恒常的に」血流の多い状態を保てば、透明感とハリがあってきめの細かい、つややかな肌に近づけるんです。
神崎 あの肌がずっと続くとしたら、夢のような話ですよね! どんな人に聞いても、「お風呂上がりの肌をずっと自分の肌として生きていきたい」とおっしゃいますから。
思っている以上に血管は肌の表面にある
加治屋 血管って、皆さん、肌の「奥」にあるという意識が強いと思います。つまり、肌の「表面」=「皮膚」には影響がないものだと。
実際、「奥」にある血管は太く、そこに疾患があると命に関わるというものです。その太い血管に関する研究は医学的な観点から進んできましたが、実は体の中で血管の99%を占めるのは毛細血管。その毛細血管が最も密に張り巡らされているのが、皮膚です。
毛細血管は皆さんの想像よりも体の表面近くにありますので、Lifeblood Research™では、外から毛細血管に働きかけて、血管を太く、丈夫にし、恒常的に血流を良くすることを目指しています。
神崎 血管は体全体に張り巡らされているので、ちょっとした動作でも体に意外な影響を与えている、ということもありますよね。
ピンポイントな解決法では満足されなくなった
加治屋 それは東洋医学の発想にも通じます。
例えば、足に鍼を打つとお腹の血流が良くなるというデータがあります。人の体は、血管や免疫系、神経などが複雑につながり合っているのだから、身体の不調は全身の状態から考えようというのが東洋医学。
一方で西洋医学は、悩みのある場所をピンポイントに解決しようとします。もちろんそれも一つの方法ではありますが、お客様の声を聞いていると、「点」のケアだけでなく、もっとトータルに根本的なケアをしたいというニーズが高まってきているように感じます。資生堂は日本の会社ですので、東洋医学に着目しながら西洋医学の良いところも取り入れ、融合しながら独自の研究を続けています。
神崎 スキンケアはこれまで、しわ、しみなど「点」のアプローチになりがちでしたよね。でも、全身を巡る血流を良くすることが、肌そのものの美しさを力強く育ててくれるんですね。
「点」のケアは、効果を感じるまで時間がかかることもあります。高望みかもしれませんが、血管へ働きかければ良いスピード感で効果を得られるのでは、と大いに期待してしまいます。
画面上で「私ってこんな顔だったっけ?」
加治屋 昨年10~11月にかけて、日本と米国、中国、イタリアの4カ国で、コロナ禍による女性の美容行動の変化を調べました。その結果、オンライン会議の増加やマスクによる肌荒れなどをきっかけに、どの国でも「素肌」への関心が高まっていることが分かりました。
神崎 確かに、「メイク」よりも「素肌」に関心を持つ女性は以前から増えているな、という印象がありましたが、去年は特にそれが顕著になったと思います。
やっぱり、オンラインミーティングで自分の顔を直視する機会が増えたじゃないですか。すると、画面上で自分の顔を見て「私ってこんな顔だったっけ?」「こんなにしわがあったっけ?」と衝撃を受けた、という声を多く聞きました。
私は去年、LIVEイベントを行う機会が多かったのですが、圧倒的にスキンケアに関する質問が増えました。そういう意味で、2020年は、多くの女性が理想の素肌を目指してスキンケアをリスタートした年だったのかな、と。
この大変な社会情勢の、緊張した日常生活の中で、皆さんが自分の肌を見つめ直して、その悩みを声に出すというアクションが生まれてきたことは、とても良いことだな、と思っています。
加治屋 4カ国調査でも、自分の素肌を見る機会が増えた、という人が6割を占めました。
そして、どの国でも理想の素肌は「入浴やシャワー後の素肌」という回答が3位以内に入りました。お風呂上がりの肌を挙げるのは、湯船につかる習慣のある日本特有の考えかとも思っていましたが、理想的な肌のイメージも世界共通だったのです。
血流促進は、人種や年齢、男女に関係なくアプローチできるのが強みです。全世界の人に「理想の素肌」を提供できるかもしれません。
素肌の美しさがメイクを超える瞬間
加治屋 実は神崎さんに一つ、お聞きしたいことがあります。多くの女性が「肌の調子は毎日違う」と言いますが、科学的には肌の状態が毎日大きく変化するとは考えづらいな、と。神崎さんも、日々違いを感じていますか。
神崎 もちろん感じていますよ!(笑) 私が「あっ、今日は肌がきれい!」と感じるのは、「ハリ」と「ツヤ」と「透明感」が総合的に高い日ですね。
「総合力」を高めるため、他にもできることはあるんです。夜ゆっくりお風呂に入ってパソコンやスマホから離れ、交感神経のスイッチをオフにする。旬の野菜やフルーツを摂り、体の中をきれいにすることでも、お肌の調子は変わります。
素肌と心は深く結びついていて、小さな吹き出物が出ただけで気持ちが沈んでしまいますよね。逆に、透明感のある肌は勇気をくれます。そして素肌の美しさはメイクによる美を超えて、その人の個性と内面の美しさを映し出します。
Lifeblood Research™によって、「今日は肌がきれい!」と感じられる日が増えれば、女性はより自由に、強く生きられるはず。その日が本当に楽しみです。
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最新研究Lifeblood Research™は2021年以降、SHISEIDOの製品開発においても応用されていく。
(文:有馬知子、編集:清藤千秋、写真:中山文子)