Twitterに投稿されたイラストなどで名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが漫画家のはすみとしこさんに対し、550万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が11月30日、東京地裁であった。小田正二裁判長ははすみさんに88万円の支払いを命じた。
「枕営業大失敗」などと書かれたイラストを投稿
訴状によると、はすみさんは2017年6月から2019年12月にかけて、伊藤さんを思わせる女性や「枕営業大失敗」などの文字が書かれた5本のイラストをTwitterに投稿。
伊藤さんは、これらのイラストが、性被害を訴えている伊藤さんと酷似している点などを指摘。「(イラストの)女性と伊藤さんを同定することは容易に可能」と主張し、イラストが伊藤さんの名誉を傷つけたとして、慰謝料など550万円と投稿の削除、謝罪の掲出を求めてはすみさんを提訴した。
一方、はすみさんは一連のイラストについて、自身のTwitterやYouTubeなどで「風刺画はフィクション」「伊藤さんとは無関係」と主張していた。はすみさんのTwitterアカウントは、現在は見られない状況になっている。
また、伊藤さんは、はすみさんの投稿をリツイートした都内在住の医師ら2人も提訴。イラストをリツイートすることで伊藤さんの名誉を傷つけたと主張し、それぞれに慰謝料など110万円と投稿の削除を求めた。
判決理由は?
小田正二裁判長は11月30日、はすみさんに88万円の支払いを命じた。
判決要旨によると、東京地裁ははすみさんが投稿したイラストについて、伊藤さんに「類似している」などと認定した。そして、イラストは伊藤さんが性被害にあったという「虚偽の事実を述べる人物であるなどの印象を一般の読者に与える」ものであり、「(伊藤さんの)社会的評価を低下させるものというべき」だと指摘。さらに「社会通念上許容される限度を超えた侮辱行為」だと認めた。
また、はすみさんのツイートをリツイートした都内在住の医師ら2人に対しては、それぞれ11万円の支払いを命じた。判決要旨によると、2人はコメントを付けることなく、はすみさんのツイートをそれぞれリツイートしたという。さらに、リツイート前後には、ツイートを引用した意図が読み取れるようなものがうかがわれないとも指摘。これらの状況から、はすみさんによるツイートが、「各被告ら自身の発言ないし意見でもあるといえる」と認定し、「その内容についてそれぞれ責任を負うというべきである」と指摘した。