突然ですが皆さん、シャンプーのボトルにギザギザが付いていること、ご存知ですか?
触るだけでリンスと区別できるようにつけられたものですが、このデザインが広く普及した背景をグラフィックデザイナーで女子美術大学非常勤講師の山崎治さんがTwitterで紹介。7000回以上もリツイートされるなど反響を呼んでいます。
ギザギザをめぐる歴史は、花王の公式サイトで紹介されていました。
あのギザギザは、触るだけでリンスと区別できるようにつけられたものですが、そのきっかけは1989年に消費者から寄せられた声だったそうです。
「シャンプーとリンスの容器が同じで紛らわしい。形を変えて欲しい!」
「洗髪時、目をつぶっていても区別がつくといい。」
「目が不自由なので容器に工夫をしてほしい。」
そこで花王では「誤使用がどの程度あるのか」を調べるために消費者調査を実施。 すると、約6割の人が髪を洗う際に「シャンプーとリンスを間違えたことがある」と回答したそうです。
さらに花王では、目の不自由な方のことを考慮するため、盲学校へも訪問調査を実施。そこで、髪を洗う際にさまざまな工夫がなされていたことがわかったとしています。
・点字を刻印したダイモのテープを貼っておく。
・ボトルに輪ゴムを巻いておく。
・同じ形の容器を使わない。
・家族全員が容器の置き場所を動かさない。
など
こうした調査を元に、花王ではシャンプー容器について試作・検討し、最終的にギザギザのついた「きざみ入り容器」が出来上がりました。花王は1991年7月に、このギザギザのボトルの「実用新案」を出願。同年10月に「エッセンシャル・シャンプー」で初めてこの識別方法を採用しました。
目の不自由な人、近視や遠視で入浴中はメガネやコンタクトレンズを外す人、洗髪中に目を閉じることが多い人、あらゆる人に配慮されたデザインでした。
その後、花王は「シャンプー容器にきざみを入れるということが、業界で統一していないと消費者が混乱してしまう」と実用新案の申請を取り下げ、誰でも同様のデザインを使用できるようにしました。
さらに、シャンプーの「きざみ」が業界で統一基準になるよう、業界各社に働きかけました。消費者のためには業界全体で取り組むことが大切だという思いからでした。
花王によると、「きざみ」入り容器の開発には、容器の金型が2倍必要になるそうです。 それでも、容器メーカーや業界各社の協力によって、ほとんどのシャンプーに「きざみ」が採用されるようになりました。
こうして、シャンプーのギザギザはユニバーサルデザインの代表例として知られるようになりました。
普及のために実用新案を取り下げた花王の姿勢を知った人たちからは、Twitter上で「花王さん、ありがとう!」「利他的な目的だったのが素晴らしい」と、称賛の声があがっています。
花王は過去の商品でも、「シャンプーに片手で開けられる押し上げ式のキャップ」「衣料用粉末洗剤のコンパクト化、軽量化」「ボディーソープの容器に触覚識別表示(ライン)をつける」など、さまざまなユニバーサルデザインを取り入れています。
人に歴史あれば、物にも歴史ありですね。