自分の周囲でワールドカップの次に話題となっているのが、都議会でのセクハラヤジ発言に関する話題です。
都議会:セクハラやじ 女性議員に「早く結婚しろ」(毎日新聞)
塩村あやか議員が都議会中に子育て支援に関する質問中に、「早く結婚したほうがいいんじゃないか」「子供もいないのに」などというセクハラヤジが飛んだ模様。本人のコメントによると、「産めないのか?」などというヤジもあったとされています。
ヤジとしては一線を越えていると言いますか、端的に言ってこれはダメでしょう。国会中継などを見ていると確かに議会はヤジはあふれているし、ある程度のヤジや茶々は日常茶飯事なのでしょうが、それをさっ引いてもちょっと耳を疑いたくなく発言ですよね。
特に今回の発言は、塩村議員と同じく独身の有権者に対しての批判とも取られかねないので、発言の主には是非とも公の場で釈明していただき、必要ならば謝罪してもらいたいところです。
■自民党、ヤジの主が誰なのか特定しない方針とその考察
ところが自民党は、「自民の議員が述べた確証はない」「誰が言ったのか特定することは難しい」などとして、発言者を特定しない意向を明らかにしたといいます。
女性都議へヤジ、抗議1千件 自民、発言者特定せぬ意向(朝日新聞)
このあたり、とても日本の政党っぽい対応と言いますか、残念ですよね。
しかしこの対応が意味することはなんでしょうか。自民党からすれば、さっさと犯人を見つけて処分すれば、傷口が浅いうちに防げるところを、引っ張れば引っ張るほど問題が長期化し、痛手を被ることになるでしょう。ということは、ヤジを特定できない理由があると考えるのが自然です。
ここで下衆なりに勘ぐってみました。
まず、ヤジはある程度組織ぐるみで行われていると言えるでしょう。通常、ヤジを飛ばすのはどの議会でも若手議員ということになっていて、さすがに国会においても首相経験者や大物議員などが質問や答弁に対していちいヤジを飛ばしているとは思えません。これは都議会においても同様でしょう。
若手議員から見ると、党の上層部から暗黙の期待を受けて、「相手にダメージを与えるようなヤジ」を党員は期待されているということになります。実際に上層部からの何らかの指示がなかったとしても、何となくそういったムードはあるんじゃないでしょうか(ここ、あくまで下衆の勘ぐりですよ)。若手議員は組織の人間なので、上から気にいられるために効果的なヤジを飛ばそうと努力するでしょう。そういったものが、日本の議会の独特のヤジ文化を生んでいるんじゃないでしょうか。
となると、悪いのは今後特定されるかもしれない1人の党員だけの資質の問題なのでしょうか? このように思考を巡らすと、いろいろ考えて「うちの政党の議員じゃない」としらを切るのが得策という結論に今はなっているのでしょうか。
などと考えていたら以下のような記事が出てますね。
「今日はパンツスーツだけど生理なの?」「痴漢されて喜んでるんだろ」... 地方議会での聞くに堪えないセクハラヤジ
■ヤジの共犯関係
さて、ヤジというものは、演壇に立つ人にむけて発言しているようですが、実は半分以上はそれを見守る同じ政党の議員に向けて発言しているものではないでしょうか。たとえば野球であれば、選手に向かっての観客席のヤジは、半分以上はそれをその場で聞いている観客にむけてのパフォーマンスなのです。気の利いたヤジの一つも言えればスタンドに笑いは起こるし、ヤジる側のモチベーションはそこにあると言えます。ヤジを発言する人と、許容する側の共犯関係がなければ、ヤジはヤジになりません。
おそらく塩村議員は、ヤジった本人ではなく、それに対し笑った多くの議員に対してより深く傷ついたのではないでしょうか。通常の会社であればひんしゅくきわまりないセクハラヤジが許容される文化が議会にあり、エスカレートの末に生まれてきたのが件のヤジなのであると。ということは、これは個人の問題ではなく体質全体の問題と言わざるを得ません。
さてどうでしょう、ひどい事態ではありますが、犯人を見つけてさらし者にするなどといった、下品を下品で上塗りするようなものよりも、今後の議会におけるヤジのあり方についてちゃんとルールを決めるのが得策ではないのでしょうか。個人的には、国会中継のあのヤジの応酬は、見ていて気分の良いものではないです。
あるいはヤジと呼ばれるような安いツッコミではなく、プロレスラーのマイクパフォーマンスよろしくアングルを活かした見事な切り返しとか、テレビのひな壇芸人のガヤのようなエンターテイメント性を追求したツッコミならもっと楽しくなるんでしょうがね。私は政治には疎いですが、醜悪なだけのツッコミはただの悪口だと私の恩師も言ってた気がしますワヨ。
(2014年6月21日「Yahoo!個人」より転載)