30%援交発言の衝撃!ブキッキオさんの件の顛末(前編)

児童ポルノのために、更なるマンガやアニメ・ゲームの規制に短絡的につなげてしまうことはいかがなものでしょうか。

【特別寄稿】国連特別報告者 ブキッキオさんの件について

~マンガ・ゲームを規制する国連勧告を出させないようにするために~

国連報告者のブキッキオ氏のやりとりについては、「日本の女子中高生の13%が援助交際をしている」という発言で脚光を浴びましたが、それ以外にも様々な問題を抱えています。特に、来年、2016年3月に最終報告書が国連人権理事会に提出される見込みですが、その中でマンガやゲームを販売禁止にするような勧告がでないようにするために、あらゆる努力が必要だと思っています。

経緯

この件、時系列でお話ししましょう。まずは、簡単な経緯です。

10/19  ブキッキオ氏来日

10/20  参議院議員会館で山田太郎と面談

10/26  日本記者クラブでの記者会見で「30%(13%)」発言

11/02  外務省から13%の根拠を明らかにすべきと申し入れ

     先方から公開情報からの概算であるとの回答

11/07  改めて外務省在ジュネーブ公使より抗議

11/10  菅官房長官が記者会見で不適当だと批判

11/11  特別報告者からの誤解をまねくものであったとの書簡

いきなりのけんか腰の会談に困惑

ブキッキオ氏が児童売春、児童買春および児童ポルノ国連特別報告者として来日するという情報がありましたので、外務省を通じてブキッキオ氏にはアポイントの申し入れを行いました。来日が一旦延期になったり、当日、アポイント時間の急な変更等がありましたが、最終的には2015年10月20日に、参議院議員会館の私の部屋で面談をしました。

当初先方からは、英語での質問一覧を受け取っていましたので、これに沿った形で面談は進むのかと思っていたのですが、アイスブレイクもなく単刀直入に「あなたはなぜ昨年改正された児童ポルノ禁止法に反対したのか」という質問でした。

ご存じの方も多いと思いますが、私は昨年の児ポ法は反対せず棄権をしました。理由は、委員会での交渉の中で、私が作成した「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと。」など3項目が含まれた附帯決議が全会一致で賛成できる状況になったためです。(詳しい経緯 https://taroyamada.jp/?p=5715

また、同時に、ブキッキオ氏の出身国のオランダなどで児童養護・里親の問題を視察してきたばかりであり、法案も提出する予定であることなど、児童の人権については深い興味を持っているという話をしたところ、「安心した」と言われました。疑いたくもないですが、あたかも誰かが私を「ポルノ議員」であると吹き込んで、それを「児ポ法に反対した」という事実誤認同様、信じてしまったようにしか思えないのです。

児童虐待とわいせつは分けて考えるべき

その場で私はブキッキオ氏にいくつかのことを説明しました。時間をかけて説明したのが、「児童虐待」と「わいせつ」とは違うのだという点です。それぞれ、個人法益と社会法益であり、考え方が全く違うこと、児童虐待については、人権問題であり、グローバルスタンダードで守っていかなければいけない反面、わいせつについては、各国の文化風習による違いを許容するべきだということです。

【図:児童虐待とわいせつ】

例えば、日本でサザエさんのワカメちゃんのパンチラなどは「かわいい」と受入れられることが多いような気がします。逆に、キューティーハニーのような胸を強調するようなものは「かわいい」という感覚とは違うような気がします。ところが、ヨーロッパに行けば全く逆で、パンチラは絶対NG、胸の強調についてはある程度の寛容度があります。このように、わいせつ基準を国連が判断するのはおかしいと思っています。

児ポ法の不備

また、児ポ法の不備についても、指摘をしました。児ポ法の最大の問題点は入口(法律の目的)と出口(処罰の対象)がまったく違うことです。目的を児童の保護としているのにも関わらず、処罰対象を児童の”ポルノ”としてしまったことです。このことによって虐待されている児童の記録であっても音声のみであったり、顔しか映っていない、局部にモザイクがかかっている等でその処罰の対象から外れてしまうのです。

【図:法務委員会での児童ポルノにあたらないとされるもの】

逆に、処罰の対象をポルノとしてしまったことで、被害者がいない、マンガやアニメ・ゲームの規制という話に繋がってしまうのです。ICPOも児童ポルノという呼び方を辞めて「児童虐待製造物」等と呼ぶように言っているのは、児童ポルノという名前は、児童の虐待という点がぼやけ、あたかも、そういったジャンルが存在することを強調してしまうからです。

もちろん、今でもマンガやアニメ・ゲームであっても刑法175条(わいせつ物頒布等の罪)の取締りの対象になっています。また、各業界団体の取り組みによって、18歳未満の情報へのアクセスが制限されています。(もちろん、こういったことに対する異論をお持ちの方もいると思います)そういった、現状を無視して、「児童ポルノ」というジャンルを作り出し、マンガやアニメ・ゲームの規制につなげてしまうことはいかがなものでしょうか。

【中編へ続く】

(2015年12月17日 「山田太郎ボイス」より転載)

注目記事