新型コロナウイルス感染症にかかった人が亡くなった場合に遺族が受け取れる「傷病手当」について、東京・世田谷区は同性パートナーでも申請できるようにする。
6月11日に開かれた区議会の本会議で、澁田景子保健福祉政策部長が「同性パートナーを配偶者に準じて扱う」と回答し、必要書類を提出することで申請できるとした。
世田谷区の国保・年金課の担当者は、「国保の傷病手当金について自治体がこのような取り扱いをするというのは聞いたことはない」と話す。
■「傷病手当金」とは?
「傷病手当金」とは病気やケガで会社を4日以上休んで給与が支払われない場合に、1日あたり平均日収の3分の2に当たる金額が、健康保険から支給される制度だ。
ただこの制度は一般的に、会社などに勤めている人を対象にした「健康保険」などの加入者のみが対象になっている。自営業やフリーランス、職場の健康保険に入れない人たちが加入する「国民健康保険」では、傷病手当金はない。
しかし政府は3月、新型コロナウイルス感染症の緊急対策として、国民健康保険の加入者にも、傷病手当金を支給する方針を示した。
対象となるのは、給料を支給されている全ての国民健康保険の被保険者だ。
新型コロナウイルスに感染した、もしくは感染が疑われる症状が出て仕事を4日以上休んで収入がない場合に、1日あたり平均日給の3分の2が支給される。
■同性パートナーを配偶者同様にみなします
手当金の申請は、世帯主がすることになっている。しかし、万が一世帯主が新型コロナウイルスに感染して亡くなってしまった場合には、遺族が代わりに申請できる。
結婚している場合は通常、配偶者である妻や夫が申請することになるが、世田谷区では同性パートナーを配偶者同様にみなし、申請できる。
同性パートナーであることの証明に必要なのは、区で発行している「パートナーシップ宣誓書の受領書」もしくは「公正証書」だ。
同性パートナーを配偶者と同じ扱いにすることを「区の姿勢に基づいたもの」と、世田谷区の国保・年金課の担当者はハフポスト日本版に説明する。
「世田谷区では多様性を認めあおうという『男女共同参画と多文化共生を推進する条例』があります。そしてその条例の趣旨に基づいてパートナーシップ宣誓の取り扱いに関する要綱を定めています」
「こうした区の基本的なスタンスがありますから、区ではパートナーシップの宣誓書があれば民法上の配偶者と同様に扱うということを基本に考えています。その考え方にのっとって決定しました」
■制度でも広がり始めた、同性パートナーの配偶者としての扱い
世田谷区は2015年11月に同性パートナーシップ宣誓制度の受付をスタートした。
同性パートナーシップ宣誓に法律婚と同じ効力はないが「生命保険金等の受け取りを法定相続人からパートナーに変更出来た」といった利用者の声もある。
また2020年4月には、同性をパートナーとする区職員も結婚した異性カップルと同じの休暇制度を使えるようにするなど、区として制度面でのサポートも始めている。
今回の傷病手当金遺族申請について「国民健康保険の面で一歩を踏み出すことになった」と担当者は話す。
同性のパートナーを遺族とみなすかどうかについては、名古屋地裁が6月4日に犯罪被害者の遺族給付金を巡ってを認めないとする判決を下したが、同性パートナーシップ制度を導入した自治体などでは、制度上でも家族同様の扱いが広がりつつある。