夫婦別姓を選べない今の法制度は、法の下の平等を求める憲法に反するなどとして、ソフトウェア会社「サイボウズ」の青野慶久社長らが国に損害賠償を求めた訴訟の判決が3月25日午後、東京地裁であった。中吉徹郎裁判長は原告側の請求を退けた。(UPDATE 2019/03/25 14:45)
原告側は、控訴する方針。
判決は、現行の法律では、個人が社会で使う法律上の氏はひとつであると指摘。日本人同士の結婚で旧姓を名乗れるようにすることで、法律上の氏が2つになるのは、現在の法律で予定されていないと述べた。
原告側が用いた民法上の氏と、戸籍法の上の氏を区別する論法に対して、独自の見解で採用することはできないと退けた。 夫婦別姓を認めない民法750条の影響で生じている不利益を解消するかどうかは、国会の立法裁量に委ねるべきと指摘した。
訴訟を担当した作花知志弁護士によると、判決は「民法を改正せずに戸籍法を変えるのは法体系に反する」という、国側の主張を全面的に認めたという。
■原告側は「戸籍法上の不備」と指摘していた。
原告側は、日本人同士の離婚、日本人と外国人の結婚、離婚では、戸籍上の氏を選択できるのに、日本人同士の結婚だけ認められていないのは、戸籍法上の不備だと指摘。
家族に関する法律は、個人の尊厳などに基づいて制定すべきと定めた憲法24条などに反すると訴えている。
その上で、日本人同士の結婚でも旧姓が名乗れるよう、戸籍法に新たなルールを設けるよう提案している。
一方国側は、夫婦別姓を認めない民法750条を改正せずに、民法に関する手続きを定めている戸籍法を変えるのは、法体系を無視していると反論している。
民法750条は、日本人同士で結婚すると、夫か妻のどちらかの氏(姓)を選ばなければならないと定めている。
離婚すると旧姓に戻るが、日常生活や仕事上で不都合が生じるため、戸籍法の制度で、婚姻時の氏を名乗ることができる。
外国人との結婚も、戸籍上は外国人配偶者の氏を名乗るかを選択でき、離婚した場合、そのまま使い続けるか、旧姓に戻すかを選べる。
日本人同士の結婚だけ、「名乗る氏」が選べない状態となっている。
2015年の別の夫婦別姓訴訟では、民法750条が「合憲」と判断された。そのため今回の訴訟は、戸籍法上の不備という論法を用いて、選択的夫婦別姓の実現を求めている。
訴訟を担当する作花知志弁護士は、ハフポスト日本版の取材に対して、「裁判所内にも、別姓を求める声がある」と期待を語っている。