アメリカの上院は2月13日、連邦議事堂で暴動を先導した責任を問われていたトランプ前大統領に、無罪判決を下した。
評決の結果は57-43。50人の民主党系議員と7人の共和党議員の合計57人が有罪と判断したが、有罪判決に必要な3分の2には達しなかった。
1月6日に起きた連邦議事堂の暴動では、5人が死亡し、副大統領や連邦議員や連邦職員、警察官などが危険に晒された。
前代未聞の連邦議事堂襲撃事件
2020年の大統領選挙の後、トランプ氏は「選挙は自分から盗まれた」と証拠のない主張を続けてきた。
そして1月6日には、ワシントンD.C.に集まった支持者に向かって「連邦議事堂で闘え」と叫び、支持者を議事堂へと向かわせた。トランプ氏の言葉を聞いた後、支持者たちはバイデン氏の選挙人投票を確定していた議事堂に侵入し、暴動を起こした。
50人の共和党系議員のうち、有罪の判断を示した議員は、リチャード・バー氏、ビル・キャシディ氏、スーザン・コリンズ氏、リサ・マコウスキー氏、ミット・ロムニー氏、ベン・サス氏、パット・トゥーミー氏の7人。
民主党の上院院内総務のチャック・シューマー氏は、「これまでの弾劾の歴史の中で、最も党を超える評決になった」と述べた。
弾劾裁判で、検察官役の「弾劾管理人」を務めた民主党の下院議員たちは、評決前に「トランプ氏を無罪にすると暴力行為が再び起きる可能性がある」と警告していた。
弾劾管理人の一人、ジョー・ネグース下院議員は「(有罪評決を下さないことは)リスクが大きすぎる。受け入れがたい現実ですが、1月6日に起きた出来事は再び起こりえます。あの恐ろしい日に目にした暴力は、始まりにすぎないと私は心配している」と述べた。
また、ジェイミー・ラスキン下院議員は「これが有罪でなければ、これがアメリカ合衆国に対する重大な犯罪でなければ、何一つ重罪ではありません」と語って、トランプ大統領は民主主義と国民のために弾劾されるべきだと主張した。
弾劾に反対し続けていた共和党議員
トランプ氏の弾劾裁判は2月9日にスタートし、1週間もかからない早さで終了した。
弾劾管理人による審理は2日間で、トランプ弁護団による陳述は3時間未満。これまでで最も短い弾劾裁判になった。
共和党の上院議員の多くは、始まる前からこの弾劾裁判に反対していた。
弾劾訴追された時にトランプ氏は大統領だったが、共和党議員らは「トランプ氏はすでに大統領ではないので弾劾裁判は違憲だ」と主張。
その後、上院の過半数で弾劾は合憲と採決されたが、それでも多くの共和党議員がトランプ氏の弾劾に反対し43人が無罪と判断した。
一方で有罪判断をしたバー議員は、「過半数の上院議員が同意したのだから合憲性は問題ない」という見解を示した上で「トランプ氏には、あの悲劇的な出来事の責任がある。政府と同等の立場にある機関に対して、トランプ大統領が暴動を先導したことは証拠からわかっている」と述べていた。
無罪になったことで、トランプ氏は今後再び大統領として立候補できる。
トランプ氏の弾劾裁判は、今回で2回目になる。
1度目はウクライナ疑惑をめぐる裁判で、この裁判でも共和党議員はトランプ氏に無罪評決を下している。
今回の連邦議事堂での暴動では、議員たち自身が危険に晒され、暴動後に多くの共和党の上院議員がトランプ氏を非難した。
共和党院内総務のミッチ・マコーネル氏も「暴動は、大統領とその他の有力な人々が招いた」と非難していたが、同氏は13日の朝に「危機一髪の出来事だったが、トランプ氏の無罪を選択する」と書いたメールを他の共和党議員に送り、罪を問わない姿勢を見せていた。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。