韓国で「精液テロリズム」を、性犯罪として刑事罰化するための動きが進んでいる。
精液テロリズムとは、女性の所有物などに精液をかけるなどの行為だ。精液を送りつける、他人になすりつけるといった行為も含まれる。
韓国では近年、この精液テロリズムの裁判が続いているが、被告は最終的に「器物損壊罪」で罰せられるケースが多い。
ガーディアンによると、2021年5月には、同僚のコーヒータンブラーの中に、6カ月間に6回精液を入れた男性公務員が、300万ウォン(約28万円)の罰金を科された。しかし罪状は「器物損壊」であり、裁判所は、行為はタンブラーを損なうものだったとした。
また2019年には、女性の靴を精液で湿らせた男が、50万ウォン(約4万6000円)の罰金を科された。これも「器物損壊」であり、捜査当局は性犯罪にするための法的な根拠がないと主張した。
同年には、便秘薬や媚薬を女性のコーヒーに何度も入れた男に3年の懲役刑が下された。男は54回も、便秘薬と媚薬の混合物に精液と痰も混ぜて、コーヒーなどに入れていたが、性犯罪が成立しなかった。
韓国だけの問題ではない
韓国の法律では、性犯罪として認められるには身体的暴力や脅迫が必要とされている。
しかし世界的な#MeTooムーブメントなどの後押しもあり、性犯罪を器物損壊として扱う判決や、社会全体の性犯罪に対する姿勢が批判されてきた 。
また、精液テロリズムのような行為は、韓国だけの問題ではない。
タイムズ・オブ・インディアによると、インド・デリー大学で学ぶ女性が2018年、複数の男性らが、精液を入れた風船を女性たちに投げたとInstagramで報告した。
さらに、韓国のデジタル犯罪に立ち向かう団体「デジタル・セックス・クライム・アウト」創設者のパク・ソヨンさんは2018年、性犯罪はインターネットを通して世界中に広がる可能性がある、とBBCの取材で警告している。
韓国では、女性用トイレやホテル、試着室などに設置された小型隠しカメラの映像が、ポルノサイトでシェアされることが問題になってきた。
パク氏は「デジタル性犯罪は韓国だけの問題ではありません、スウェーデンやアメリカでも起きています。しかし韓国はテクノロジーが進んでいて、世界中で最も早いスピードで、誰もがインターネットにアクセスできます。それはつまり、こういった女性を標的にしたオンライン犯罪が、最も早く起きてきたということです。しかし他の国でも問題になるのに時間はかからないでしょう。ですから私たちは協力して、国際的にこの問題を解決しなければいけない」と語っている。
政治家達が動き出している
社会的な批判の動きを受けて、韓国の政治家達は精液テロリズムを、性犯罪として処罰するための法整備を始めている。
2021年7月に、刑事罰化できる性犯罪を身体的接触がないものにも広げる法案を提出したペク・ヘリョン議員は「性犯罪は被害者の視点から解釈されるべきです」とガーディアンに語った。
また、2020年には別の議員によって、「わいせつ行為」の定義を広める法案も提出された。ただ、どちらの法案もまだ国会で審議されていない。
女性人権団体である「女性民友会」のチェ・ウォンジン氏は「全ての性犯罪は犯罪です。これは路上での無差別犯罪ではありません、特定の性別を狙ったものです」とはガーディアンに話している。
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。