オーストリアで「世界最年少の首相」が誕生しそうだ。
10月15日に投開票されたオーストリア国民議会(下院)選挙で、中道右派の国民党が15年ぶりに第一党になることがほぼ確実になった。同党党首のセバスティアン・クルツ外相(31)が首相に就任する可能性が高く、BBCは「クルツ氏が首相に就任すれば、世界最年少の国家指導者となる」と報じている。
英紙テレグラフは、出口調査の結果として国民党は31.7%を獲得し、次いでクリスティアン・ケルン首相率いる社会民主党が26.9%、そして極右の自由党が26.0%で続いていると報じた。
BBCによるとクルツ氏は支持者を前に「この国に変化の時が来た。きょう、この国を変えるよう強い要請があったということ。これを可能にしてくれた皆さんに感謝する」と勝利宣言をしたという。
■ニックネームは「水の上を歩ける人」
BBCは、クルツ氏を「水の上を歩ける人」を意味するブンダーブッチのニックネームで知られていると紹介。プロフィールを以下のように報じている。
国民党の青年部で政治のキャリアをスタートさせ、同青年部代表を経てウィ―ン市議会議員も務めた。2013年には、27歳の若さで外相に任命され、選挙前まで務めていた。
2017年5月に党首に就任し、国民党のイメージを一新したという。
若手指導者の一人として、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(39)や、カナダのジャスティン・トルドー首相(45)と比較されることがあるが、中道左派の2人とは違ってクルツ氏は中道右派だ。
2015年に起きたヨーロッパの難民危機を受け、クルツ氏は保守的な政策を国民党内で推し進めた。今回の選挙でも移民・難民問題が大きな争点となり、クルツ氏はヨーロッパに流入する難民の数の制限や、オーストリア在住の移民に対する福祉削減といった強硬政策を掲げていた。
■連立相手は極右? EUから反発も...
ただ、クルツ氏率いる国民党は第1党となるものの、過半数には届かない見通しだ。そして、連立相手は、反移民・反難民を声高に唱える極右の自由党になる可能性が最も高い。
ただし、ニューズウィーク日本版によると、極右政党が連立入りすればEUの反発も予想されるという。2000〜05年に自由党は国民党との連立政権に参加、オーストリアは国際社会から「極右の政権参加は認められない」と激しく非難されていた。
自由党のシュトラッヘ党首も「すべての党と話をする」と述べるなど、国民党と自由党の連立が確定的とは言い切れないのが現状だという。