性的人身売買などの容疑でアメリカの連邦当局に起訴された「ディディ」ことラッパーで音楽プロデューサーのショーン ・コムズ被告に対し、少なくとも120人が訴訟を起こす構えであることがわかった。
原告の代理人を務めるトニー・バズビー弁護士は10月1日、共同弁護人でAVA法律事務所のアンドリュー・ヴァン・アースデール弁護士や原告の支援者らと記者会見を開き、被害を訴えている人たちの多くは、すでにFBIなどの連邦当局と話をしたと述べた。
バズビー氏によると、原告の中には性的虐待の被害に遭った後に治療を受けた際、体内から薬物が検出された人もいた。中でも「トランク」とも呼ばれる、動物専用の鎮静剤「キシラジン」が何度も検出されたという。
バズビー氏は、被害者のほとんどはコムズ被告が連邦当局に逮捕・起訴されるまで怖くて声を上げることができなかったと述べた。
「(被害者らは)コミュニティや家族からの反発や、加害者とその仲間からの報復、そして当然のことながら自身の身の安全を恐れています」
「この裁判を通じて、関与した多くの権力者が暴露され、汚い秘密が明らかになるでしょう」
弁護士によると、これまでにコムズ被告からの虐待を名乗り出ている人は3000人を超え、そのうちの120人の代理人となっている。
被害を訴えている人たちの居住地は25州以上に及び、大半はカリフォルニア、ニューヨーク、ジョージア、フロリダ在住だという。
ヴァン・アースデール氏は記者会見の後、原告は「(コムズ被告が)身柄を拘束されたことで、ようやく少し安心して名乗り出られるようになっている」とハフポストUS版に語った。
「彼らの生活とおそらくは身体的な健康に対するコムズ被告の影響力と支配力が弱まっているため、多くの人が被害者を訴えるようになっているのです」
バズビー氏によると、被害者は女性と男性が半々で、約62%がアフリカ系アメリカ人、30%が白人、残りがアジア系かヒスパニック系だ。
被害に遭った状況はそれぞれの異なるものの、多くがパーティーで薬物が混入したドリンクを飲まされ、他の人々が見ている前でコムズ被告と仲間から性的虐待を受けたと訴えている。
当時22歳だったという原告の1人は、ドリンクを断るとパーティーから追い出されたと証言したという。
この原告によると、性的虐待の多くは、オーディションやパーティーの会場で行われ、その中には多くのセレブが出席することで知られるコムズ被告主催の「ホワイト・パーティー」も含まれていた。
また、虐待の被害をコムズ被告らに訴えた後に、身体的暴力や経済的な報復を受けると脅されたと証言した原告もいるという。
バズビー氏によると、原告らが虐待に加担もしくは目撃していたと訴えている人物の中には、著名人も含まれている。
バズビー氏は「ここでこうして話している間にも、神経をピリピリさせている人がたくさんいることでしょう」と記者会見で述べた。
「いつまでも秘密を隠しておくことはできません。今、必死に記憶をたどってメッセージやデータを削除している人が大勢いると思います」
バズビー氏によると、被害を訴えている人のうち、少なくとも25人が虐待を受けた時に未成年であり、最年少は9歳だった。
この9歳の少年は、コムズ被告が立ち上げたレコードレーベル「バッド・ボーイ・レコード」のオーディションを受けた際に、スタジオで性的虐待を受け、その後本人や両親と契約を結ぶ約束をされたと述べているという。
バズビー氏によると、被害者たちの訴訟は個別に行われ、銀行、製薬会社、ホテルなど、虐待に関連して利益を得た企業も対象になる可能性がある。
ハフポストUS版はコムズ被告の弁護士にコメントを求めたが、これまでに回答はない。弁護士は以前、「コムズ氏は性的虐待を否定しており、自ら説明することを求めている」と述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。