8月12日・13日の2日間にかけ、札幌で子ども向け総合環境イベント「環境広場さっぽろ 2019」が開催された。お盆休み中での開催、しかも会場は札幌ドームという、子ども向け環境イベントとは思えないスケールだ。
去年の初開催に続き、今回2回目となる当イベント。今年のテーマは「環境とSDGs」。SDGs(持続可能な開発目標)を通して、未来を担う子どもたちやその家族に、この豊かな地球環境を次世代に引き継ぐ大切さを伝えるのが目的だという。
会場には、252にも及ぶ企業や団体が、環境やSDGsの取り組み紹介をはじめ、スポーツ・キャリア・教育など、様々な体験や学びの場を提供していた。
ブースでは、燃料電池ミニカーを使ったレースや、廃プラスチックからリサイクルされてできた再生ペレットを使ったマラカス作りが開催された。ステージでは芸人によるSDGsダンスやトーク、またエシカル・ファッションショーが行われ、子ども達は、さまざまな体験を通じて楽しく学ぶ事ができるイベントになっていた。
札幌市は、2018年に、SDGsの達成に向けて優れた取組を提案する自治体を国が選定した「SDGs未来都市」の1つに選ばれている。
2030年までに目指す将来像に「次世代の子どもたちが笑顔で暮らせる持続可能な都市『環境首都・SAPP‿RO』」掲げる札幌市。食品ロス削減のため、給食の残りを堆肥に、またそこから給食食材の野菜を育てたり、冬場のエネルギー削減のために、省エネ住宅を推進するなど、具体的な取り組みを進めている。
札幌市にSDGsの取り組みを最初に提案したという、環境局環境都市推進部の佐竹輝洋(あきひろ)さんに、自治体としての取り組みや、これまでに直面した困難について話を聞いた。
ーーまず、なぜ札幌市にSDGsへの取り組みの提案をしたんですか?
私は2012から13年の2年間、環境省に出向していました。そこで国の政策や、国や世界の状況は実際その下に降りてくるということを学びました。だからその情報を先取りして得るようになり、「これは来るぞ」と予測する感覚がその2年間で身に付きました。
2015年に国連でSDGsが採択されて、当時は僕も「なんじゃこりゃ?」って思ったんですけど、翌年くらいから世界で取り組むようになって、国連のお膝元のNYはすぐに動き出しました。そういう状況を見て、「この波絶対くるな」と確信したんです。
ちょうど札幌で環境基本計画を作る担当になったので、「では環境分野からやっていこう」といろんな人の力を借りながら、札幌市にインプットしていった感じです。
ーー自治体でSDGsの取り組みを始めるのに難しかった点はなんでしょうか?
何から手をつけていいかわからないんですよね。1〜17番までゴールがあって、自治体がやってることって、実はすでにこれに繋がっているんです。だったらあえてSDGsって言わなくていいじゃん、というところから始まります。札幌市もそこからスタートしました。
僕がやろうって言った時に、環境局は理解がありましたが、他の部局は「なんで国連が決めた目標に札幌市が取り組まなきゃいけないの?」という反応がありました。SDGsというのをどう捉え、使っていけばいいのが理解できないのが1番の問題だと思います。
そのとき、「それが、世界のスタンダードなんだ」ということを理解することが大事なんです。世界の向かっている目標が明確になったので、自分たちがやっていることは、世界の目標と繋がっててベクトルが一緒なんだ、と。そして、それがここまで進んでるんだよ、というのを示すためのツールだという事を理解してもらう事が重要です。
札幌市全体でも今、市長にもしっかり理解してもらって、街づくり全体の計画を作っていますが、そこにもSDGsをどう反映するか、という議論を組み込んでいます。
ーー札幌市はどういったアプローチをしているのでしょうか?
軸は11番の「住み続けられる街づくり」。持続可能な街を作っていく、というのを根本にやっています。
札幌市は環境分野からSDGsに取り組んでいっていて、12番の「作る責任、使う責任」も重要視しています。環境問題を考えると資源やエネルギーの循環利用などがありますが、これは札幌市だけではなく、市民や企業がやっていくものなので、そちらの普及を中心にやっています。
消費、例えば食品ロスもなくす事で、燃やすゴミが減って、気候変動防止につながる。作りすぎない事で畑や森の豊かさも守られる。魚とか、海洋資源もそうですよね。恵方巻きがどんどん捨てられているのを見て、希少なはずのマグロもどんどん捨てられている。そうやって食品ロスで捨てられてしまう事で、海洋資源の悪化につながってしまう。それを元から止めたい、となると、1人1人が責任を持っていくのが必要なんじゃないかな、と思っています。
「環境」といっても、森や山に直接、というよりも、都市型の消費生活からの取り組みを重視しています。例えば、北海道で作られた再生可能エネルギーや森林を札幌で消費する事で、CO2の削減やお金を北海道内で循環します。札幌は寒いので暖房エネルギーを使いますが、それを逆に石油とかガスで賄うと、かかるお金はアラブとかロシアに流れてしまいます。適切に使う事で、経済、環境、両方を守っていく、まさにSDGsの考え方だと思います。環境・経済・社会からの統合的な解決、というのを環境分野から発信したいと思っています。
札幌は冬とても寒いです。でも地球の温暖化対策のために、冬場エネルギーを使いすぎないようにしよう、とか。家を建てるにも壁の厚さの断熱や省エネな住宅を進めていきます。札幌で独自の省エネの住宅の基準も作っています。良い住宅を建てる人に対して認定やちょっと補助金を出したりしています。札幌の住宅の性能って、日本一、もしかしたら世界一の高性能の住宅になっているんです。
ーー2019年6月には、札幌市はフェアトレード・タウンにも認定されました。その目的は?
1980年くらいから札幌では市民団体がフェアトレードに取り組んでいたんですが、タウン認証される基準が高く(人口1万人あたり1店舗など)、当時は難しかったんです。でも、2017年にイオンのトップバリューのフェアトレード商品が増えたことなどにより、2019年6月に認定されました。
「フェア・トレード」というと、あまり親近感が湧かないかもしれませんが、これが1つのきっかけになると思っているんです。これが、児童労働だったり貧困だったりという、商品の先にあるものを考えるきっかけになると考えています。フェアトレードはそれを否が応でも意識することになります。フェアトレードだけの問題でなく、普段から食べてるお肉やお米もそうで、その先にあるものが、貴重だったりしますよね。例えば貴重なうなぎをどんどん食べていいのか、とか。それを考えるきっかけになるといいな、と思っています。
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冬の厳しい寒さにも関わらず、日本国内の「住みたい街ランキング」では常に上位にランクインしている札幌市。SDGsを反映した街づくりで更に「住み続けられる街」になれるのか。今後の取り組みにも注目していきたい。