ハリウッド俳優ら約16万人が加入する映画俳優組合「SAG-AFTRA」は7月13日、ストライキに入ると発表した。
SAG-AFTRAがストライキをするのは43年ぶりだ。
組合の交渉を担当しているダンカン・クラブツリー=アイルランド氏は「ストライキは本日深夜に始まります。組合員や役員、スタッフの全員が明日の朝、ピケットラインに立ちます」と述べた。
ストライキの背景は?
SAG-AFTRAは新たな契約をめぐり、映画テレビ製作者協会(AMPTP)との交渉を続けていた。
AMPTPには、ディズニーやNetflix、パラマウント、ソニー、ユニバーサル、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーなどハリウッドの大手スタジオが加盟している。
しかし、両者は交渉期限を6月30日から2週間延長しても合意に達することができず、SAG-AFTR交渉委員会は13日早朝にストライキを全国委員会に推奨。その数時間後に、全国委員会が同意した。
SAG-AFTRAに先立ち、アメリカ脚本家組合(WGA)もAMPTPとの交渉が決裂して、5月からストライキを実施している。
WGAとSAG-AFTRAが同時にストライキをするのは1960年代以来だ。この時のストライキでは、組合側は健康保険制度や年金、二次使用料の支払いなどの権利を勝ち取った。
今回のストライキで焦点になっているのは、ストリーミングサービスの二次使用料や、AIなどのテクノロジーに仕事を奪われる懸念だ。
クラブツリー=アイルランド氏によると、AMPTPは12日の交渉で「革新的なAI提案」をしてきた。
これは、通行人などを演じる俳優をデジタルスキャンして働いた日数だけ報酬を支払い、その後はその俳優のイメージをスタジオ側が永久に所有して、報酬を支払わずに自由に使用できるというものだという(AMPTPはストライキを非難する声明で、この提案は「SAG-AFTRAのメンバーのデジタル肖像権を保護するものだ」と主張している)。
クラブツリー=アイルランド氏は、CEOらから12日夜の交渉で「ストライキによる脅しは文明的な方法ではない」と告げられたと報道陣に語った。
「私はストライキは、非文明的ではないと伝えました。ストライキは道徳的な権利で、人権で、法的な権利です」
ストライキに入るとどうなる?
ストライキにより、ハリウッドは少なくとも一時的に機能が停止する。
Varietyによると、SAG-AFTRA幹部は7日、ハリウッドの大手広報エージェント140人らが出席した電話会議で、ストライキに備えるようにと伝えた。参加者の一人は会議の様子を「パニック状態になった」と表現している。
ストライキが行われている間、組合のメンバーは制作中の作品の撮影や、完成作のプロモーションに参加できない。
クラブツリー=アイルランド氏は、この夏公開予定の映画『オッペンハイマー』や『バービー』、『ミッション・インポッシブル』新作などに出演する俳優らが、レッドカーペットやプレス向けイベントに参加しない、と伝えたという。
SAG-AFTRA会長で、90年代に放送されたテレビ番組「ザ・ナニー」などに出演した俳優のフラン・ドレッシャー氏は13日の記者会見で、スタジオの幹部らが交渉の席で見せた態度を非難し「ともに働いてきた人たちによる扱われ方にショックを受けている」と述べた。
「お金がない、あらゆる方面で資金を失っているという彼らの主張には、正直驚くばかりです。彼らはCEOには何億ドルも支払っています。本当に腹が立ちます。恥を知れ、と言いたい」
ドレッシャー氏は「今、私たちが立ち上がらなければ、私たち全員が問題に直面することになる」とも述べた。
「私たちは皆が機械に取って代わられ、あなたやあなたの家族よりウォールストリートを重視する大企業によって危険にさらされることになるでしょう」
また、スタジオ幹部の考え方が、組合との合意をますます困難にしているようだ。
幹部の1人は、スタジオ側が目指しているのは、真摯な交渉を数カ月間拒否して「WGAを打ち砕くこと」だとデッドラインに語っている。
この幹部は「最終目標は、労働組合のメンバーがアパートや家を失うまで事態を長引かせることだ」と述べ、他の幹部も同じ考えを持っていると指摘したという。
またディズニーのボブ・アイガーCEOは「(ストライキは)現実的ではない」「非常に憂慮すべきことだ」と13日に出演したCNBCの番組で述べた。
そのアイガー氏の年俸は約2500万ドル(約34億円)で、同氏はアイダホ州サンバレーで開かれる「億万長者のサマー・キャンプ」と呼ばれるアレン&カンパニー主催のカンファレンス会場から番組に出演した。
ドレッシャー氏は「最後は、人々がヴェルサイユ宮殿の門を打ち破るだろう」と述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。