プロジェクトマネジャーは、スケジュールに厳しい人でないと務まりませんが、メンバーはいつも余裕をもってスケジュールを考えているものです。天候不順、事故、品質不良、自分自身の体調不良などが起きたことを見込んで、個々が余裕をもってスケジュールを組みます。メンバーに余裕を持たせず、必死になってスケジュールを守らせる3つの方法を紹介しましょう。
1) ギリギリスケジュールを要求する
プロジェクトマネジャーはメンバーがどれくらいの余裕をみてスケジュールを立てているか、常に把握していなければなりません。そのためには、余裕のないスケジュール、つまりギリギリスケジュールを把握しておく必要があります。そしてそのギリギリスケジュールをメンバーに要求すると、メンバーはそのスケジュールで終わらせるためには、どうすればよいかを必死になって考えるので、スケジュール短縮することができます。
110日かかるプロジェクトの事例で解説しましょう。当初のスケジュールには、メンバーが考える余裕が含まれています。例えばA作業は何も問題なく進めば40日で終わる作業です。しかしメンバーは何があるかわからないので10日の余裕を見て50日でスケジュールを組んでいます。
たとえばA作業の余裕日数10日、B作業の余裕日数5日、C作業の余裕日数2日、合計17日の余裕があるとわかったとしましょう。この余裕日数を除いた期間で仕事をすることを要求すると、各メンバーは自分のギリギリスケジュール内に作業が終わることを目指して工夫して作業をすることになります。
2) 「スケジュールが遅れても責任をとる」とリーダーが明言する
しかし実際には、メンバーはギリギリスケジュールや余裕日数をリーダーに知られたくないものです。どうすればメンバーが持っているギリギリスケジュールと余裕日数をリーダーが知ることができるのでしょうか。
リーダー「A作業は何日でできる?」
メンバー「そうですね。50日はかかると思います(本当はもっと短くできそうだけど、10日くらい余裕をみておこう)」
リーダー「50日? それは長すぎるな。25日くらいでできると思うけど?(まずは半分の日程で攻めていこう)」
メンバー「えっ。50日でも厳しい日程ですよ。25日なんてとんでもないです。作業中に材料不足のトラブルがあるかもしれないし,天候不順も考えられます。」
リーダー「君の言うように25日は厳しいかもしれないね。でも、なんのトラブルなく、この作業だけに集中できたとしたら25日でできないか?」
メンバー「そんな最高の条件で作業できたとしたら早くできますね。それでも50日から5日短縮できて、45日が限界です(そんな最高の条件はありえないけどなあ)」
リーダー「45日か。では,もしも遅れたら僕が責任をとるから40日にチャレンジしないか?」
メンバー「責任をとるってどういうことですか?」
リーダー「45日までは遅れることを許す。だからまずは40日にチャレンジして欲しいと言うことだ。」
メンバー「そこまで言われると仕方ないですね。では40日にチャレンジします(ちょっと不安だけど遅れても怒られないならいいか)」
リーダー「では40日にチャレンジよろしく!(40日がギリギリスケジュールだとわかったぞ)」
このように、リーダーが遅れても責任を取ると明言し、ギリギリスケジュールをメンバーと詰めることで、メンバーは各自工夫しいかにして短縮したスケジュールにすればよいかを考えるものです。
3) スケジュールが遅れたら余裕日数を取り崩せ
仕事が始まり、もしも仕事が10日遅れたらどうするか。リーダーは「プロジェクトが始まったばかりの段階で、リーダーの持つ全体の余裕日数17日のうち10日を使ってしまっている。これはスケジュール管理上大きな問題なので人数を増強してでもスケジュール短縮させよう」と考え、早めに手を打ちます。
しかしギリギリスケジュールを要求していないリーダーは、「このプロジェクトのスケジュールは110日中まだあと100日あるし、まだプロジェクトは始まったばかりなので、なんとかなるだろう」と考え、手を打ちません。
リーダーが余裕日数を把握することで、リーダーが全体スケジュールを管理することができ、早めに手を打つことができるのです。
【部下にスケジュールを守らせるワンポイント】
「ギリギリスケジュール」をメンバーに要求すると全体をコントロールできる
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