新型コロナで一斉休校していた学校。ようやく全国で再開の兆しが見えてきたが、浮かび上がった課題は山積みだ。
子どもの休校のあいだ、家で勉強を見ていた大人の多くは、仕事や家事と、家庭学習の両立に悪戦苦闘中していた。教育現場のIT化も遅れていて、子どもたちにとってはYouTubeやゲームの方が楽しい。親も先生も、何をしたら良いか分からないという声があちこちから聞こえていた。
劣等生だった高校生が有名大学に合格するストーリーを描いた映画『ビリギャル』。そのモデルとして知られる小林さやかさんはコロナ禍で「これまで日本の教育であとまわしにされてきた、大事な部分のツケが回ってきた」と話す。
それでも「学校に出来ることはまだある。今こそ学校が持つ意義を考え直すチャンスです」と話す。どういう意味だろう。5月26日のTwitter番組「ハフライブ」を前に、話を聞いた。
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(時間になったら配信が始まります。視聴は無料です)
子どもファーストで、親と学校は連携して
学年最下位の成績(=ビリギャル)から慶應大学に現役合格した小林さん。高校2年生のとき出会った塾講師の坪田信貴さんとの物語は書籍や映画になり、大きな話題となった。「自分のように変われるということを、子どもたちに伝えていきたい」と、現在は大学院で学習科学の研究をしている。
「私にとってラッキーだったのは、母親の方針と坪田先生の教育に対する考え方が一致していたこと。そして母が坪田先生を完全に信用して任せてくれたことです」
その経験が、コロナ禍で混乱している保護者や教育関係者へのエールにつながる。
「まずはとにかく、地域の大人たちと先生との間でもっと会話をしてほしいです。そこが信用し合っていることが大事」(小林さん)
9月入学や、全国の小中学校に「1人1台」のパソコンやタブレットを配る「GIGAスクール構想」など、大掛かりな”改革”も議論されているが、そうこうしているうちに、子どもの学びはどんどん奪われる。
でも、考えてみると、保護者同士が悩みを話し合い、学校に対してここまで向き合ったことはコロナ禍以前は、あまりなかったかもしれない。
小林さんも、オンラインの技術そのものより、まずはゼロベースで保護者と学校側が、「ホンネ」で話し合うことが大事だ、と提案する。さらに大事なのは「子ども中心」であること。
「大人がみんな大変なのはわかるんですけど、子どもも含めてもっと会話をしてほしい。教育は子どものためのもの。 ”子ども不在”の会話は、変な方向に進みがちになっちゃうのではないかと不安です」
休校に「やったー」と喜ぶ子どもたち。その先は…?
小学校の子どもを持つ親からは、「学校は宿題リストや時間割を送ってくるだけ」「こちらはそもそも椅子に座らせるのが大変」という声も聞こえてきた。
先生がなんとかオンラインで授業を始めても、YouTuberを見慣れている今の子どもたちの関心はひけない。飽きてゲームをしてまう児童も。学校が再開したあとも「オンラインで学ぶ」が当たり前になるかもしれない中、とても心配だ。
しかし小林さんは「座らせなくていいんじゃないですか?」とあえて問題提起をして、こう語る。
「そもそも、座学前提で考える必要がないのかもしれません。以前視察にいったシンガポールの小学校には机がありませんでした。教室はソファがあってリビングルームみたいで、子どもたちはどこでどういう状態でも勉強していい。寝そべって本を読んでいる子もいました。時代が違うんだから、大人がこうすべきだと思うことを押し付けるのはおこがましいと思います」
「日本は普段から、自分で主体的に考えさせる教育をあまりしてきてないので、今の休校も『やったー』で終わってしまっている子どもも多いかもしれません。でも、他の国の子どものリアクションを知りたいですね。もしかしたら『どんなに些細なことでも自分で考えさせる』という教育をしている国は子どもたちの反応が違うんじゃないでしょうか。今こそ周りの大人たちはそういう教育を目指すべき。むしろチャンスだと思う」
「コロナどう思う?」って会話してますか
小林さんは、しんどい大人たちにあるアドバイスをおくる。それは各家庭で「コロナについてどう思う?」という会話をすることだ。
ZoomやTeamsなどのオンラインツールを使って、家庭で話し合った結果を地域コミュニティでシェアしあう場をつくる。子どもにアウトプットさせる。
暗記のための宿題をこなすより、色々なものの見方があることを伝え、意見を交わし合う方がずっと大事だと小林さんはいう。
「個人的な意見ですが、新型コロナは人間にとって大きな脅威だけど、これまで人間が自然界に対してはたらいてきた環境汚染などを考えると逆に人間側のほうが脅威という見方もできます。そんな意見を前に、子どもたちも考えます。子どもたちには、これが正解、と教えるのではなく、いろいろな見方がある、ということに気づいてもらう。今はそういうことを考えられるいいタイミングなんじゃないでしょうか」
ポストコロナ、家庭と学校の役割分担は?
新型コロナは日本が詰め込み型の教育から脱却するチャンスではないか、と小林さんは繰り返す。
学校は一方的に先生が正解を教え込む場所から、多様な意見を交わし合う場所へ。
「今回の件をきっかけにオンライン授業などの導入が叫ばれて、そうしたらYouTubeなどにいくらでも面白い学習コンテンツがあることがわかってしまった。でも、先生はYouTubeのコンテンツと戦おうとしなくていいんです。先生にやってほしいのは、例えば歴史の授業なら、その先生自身の解釈を語ること」
「先生は『織田信長派』だけど、みんなはどう?って。生徒の中には豊臣秀吉が好き、という子もいるかもしれません。各自の解釈の違いと面白がって話し合う場所を用意することこそ、今後の学校に求められるのではないでしょうか」
学校の変化とともに、家庭の変化も必要だ。コロナが収束した時に、子どもの教育をまた学校に任せきりにしないために、家庭はどうあるべきか。
家庭においても「子どもが考えるきっかけを大人は提示してほしい」と小林さんはいう。
「例えば今。Twitterで声をあげたら政治が動いたわけじゃないですか。これこそ子どもたちに見せるべきです。選挙に行け、とただ言うよりこれを見せた方が、政治や社会に興味をもつと思いませんか。そして『あなたはどう思うの?』と聞いてみる。意見をもつということ、そして発信すれば何かを動かせるんだということを体験することが大事です」
「家で考えてみたことを、学校に持ち寄り、多様な意見をぶつけ合う。そんな風に家庭と学校の役割分担ができるようになるといいなと思います。学校の意義を見直す良いチャンスです。子どもを信じて、助け合いましょう、せっかくそれが大事だと気づけたんだから」
5月26日(火)21時からハフポストがTwitterで生配信する番組『ハフライブ』では、慣れないことの連続だった「在宅勤務」を振り返り、働く世代に突きつけられた「家庭教育のこれから」について考えます。
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ゲスト:映画「ビリギャル」モデル 小林さやかさん
日本マイクロソフト 山崎善寛さん
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