何かとお金のかかる「就学」。
学費や給食費などに加え、制服・運動着代、交通費、そして最近ではパソコン・タブレット費などが必要なケースも少なくない。
しかし、そういった現状の中で、経済的に困難な状況にある子どもや子育て世帯の声はどれだけ届いているだろうか。
子ども支援専門の国際NGO「公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が、「子ども給付金 ~新入学サポート2023〜」の利用者アンケートを実施し、就学の今を調査した。
(有効回答数:2023年5月12日〜31日までに回答のあった、全国の給付金利用世帯の保護者586人、中高生276人)
就学時の私費負担は増加傾向...
まず調査結果で明らかになったのは、就学時の私費負担が増加傾向にある実態だ。特に新入学時の制服・運動着代の全国平均額は、中学が8万9809円、高校が10万435円となっており、2022年度よりも、それぞれ1万円以上高くなっているという。
保護者アンケート結果では、制服の妥当な金額について「1万円~3万円未満」が回答の36.5%を占めている。これを加味すると、多くの世帯にとって大きな経済的負担になっていることがうかがえる。
また、高校入学時のパソコン・タブレットの購入については、国公立で46.7%、私立で64.2%が必要だったと回答した。購入平均額は国公立で5万円以上、私立で8万円以上。購入にあたって自治体や学校からの補助があったのは、国公立で37.0%、私立で8.0%だった。
約5割が「高校就学を続けられない」可能性がある
就学に伴う出費が発生するのは、入学時だけではない。同調査では、給食費や交通費などの“固定出費”にも焦点を当てた。
保護者アンケートの結果、高校1年生の保護者の70.5%が、進学する高校を選択する際に通学交通費について「非常に重視した」「やや重視した」と回答した。また、子どもの就学について「経済的な理由により高校就学を続けられない可能性がある」と回答した割合は48.5%にも上った。
また、全体(保護者・中高生)の7割以上が経済的不安なく学ぶために「給食費・通学時の昼食費を無料にする必要がある」「学校に必要な教材は学校が用意する必要がある」と回答。
保護者アンケートでは、91.7%が「高校入学の際に、就学援助制度のような入学前支給制度を利用したい」と回答しており、多くの保護者・学生が、経済的な不安を抱えた状態で就学していることがわかった。
増加傾向にある私費負担は、教育格差や子どもの貧困とも密接に関わっており、就学を考えるうえで最も大きな課題のひとつと言えるだろう。
学生や保護者の経済的不安を軽減するために、今後も保護者、学生、教育機関、自治体などのより密接なコミュニケーションや施策が求められそうだ。
<セーブ・ザ・チルドレン概要>
セーブ・ザ・チルドレンは、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」が実現された世界を目指して活動する国際NGO。1919年にイギリスで設立され、現在、世界約120 の国と地域で子ども支援活動を実施している。日本では1986年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立され、国内外で活動を展開している。