東京の初夏を代表する風物詩、浅草神社(台東区)の「三社祭」が5月19〜21日、開かれた。
コロナ禍以降、感染対策で規模が縮小されていたが、2023年はほぼ例年通りの内容で開催され、4年ぶりに本社神輿が練り歩いた。
下町全体を包み込む熱気、神輿の担ぎ手の迫力、見物客の声援ーー。記者も最終日の21日に訪れ、“熱い1日”を体感した。
三社祭とは?
三社祭とは、日本を代表する例祭の一つで、5月の第3土曜日を基点とした金・土・日の3日間にわたって行われる。
約180万人の人出があり、江戸風情の残る下町・浅草が1年で最も活気付くとされる。
五穀豊穣を祈願して行われる「神事びんざさら舞」(東京都無形文化財指定)や、氏子四十四ヶ町の神輿約100基が神社境内に参集し、お祓いを受けた後に出発する「町内神輿連合渡御」などが行われる。
また、最終日は、「一之宮」「二之宮」「三之宮」という本社神輿3基を境内から担ぎ出す「宮出し」が行われ、各町を渡御した後、日没後に神社に戻る「宮入り」で例祭行事が終わる。
勇ましい声で神輿を揺らす
記者は最終日の5月21日、台東区浅草5丁目の千束通り沿いで、渡御を見物した。
神輿が来る前に昼食をとろうと、近くのとんかつ店に入ったが、店主たちも鉢巻や帯、はんてんといった服装で迎え入れてくれた。
とんかつ店だけでなく、ウキウキとした表情で歩く子どもたち、スーパーの袋をかごに乗せて自転車をこいでいる主婦も、このような“粋”な姿をしており、街全体が祭りを心待ちにしている様子がうかがえた。
お腹も満たされ、通りに出ると、あたりは見物客や外国人観光客、付近の住民らでごった返していた。
そして午後3時頃、通りの北側から神輿が南下してくると、興奮は最高潮になった。
担ぎ手たちが「オイサ」「エイサ」と勇ましく声を発し、必死な表情で神輿を荒々しく揺らしたり、上下左右に振り動かしたりすると、歓声が上がった。
担ぎ手の男性は
神輿を揺らすことは「魂振り(たまふり)」といい、神様の霊威を高め、豊作や豊漁、疫病の退散になると信仰されているという。
記者が見物していた場所から神輿までは少し距離があったが、それでも神輿が揺れるたびにとてつもない熱気が伝わり、着ていたTシャツに汗がにじんだ。
周囲では、「パパがんばれ」と神輿を担ぐ父親にエールを送る子どもたちや、目を細めて拍手を送る近隣住民、担ぎ終わった仲間と握手する人たちもいた。
汗だくになっていた担ぎ手の男性は、「とても気持ちがよかった」と話し、「何回やっても体が痛くなるけど、地域の歴史や伝統を体感できて嬉しいし、子どもたちも喜んでくれているようでよかった」と語った。
地域の伝統、歴史、そして、浅草の人たちの情熱を感じた1日だった。