2015年11月に東京都渋谷区・世田谷区でスタートし、全国11の自治体に広がった同性パートナーシップ制度。
初施行から約3年半となる2019年4月1日、少なくとも9つの自治体が、一斉に同性パートナーシップ制度を導入する。
同日に導入する自治体数として、9はこれまでで最多だ。
横須賀市と小田原市、総社市、熊本市が加わったことで、同性パートナーシップ制度を設けている自治体がある都道府県の数は、12となった。
■同性パートナーシップ制度が増えている理由
同性パートナーシップ制度を導入する自治体が、急速に増えている。
4月1日に導入しなかったものの、宮崎県宮崎市、福岡県北九州市、埼玉県さいたま市、岐阜県飛騨市など、他にも2019年度中に施行を目指している自治体はある。
具体的な日付は決まっていないが、導入を検討している自治体も少なくない。
全国に同性パートナーシップ制度を広げる活動に携わる、「自治体にパートナーシップ制度を求める会」の世話人・TAKACOさんは、同性パートナーシップ制度が“ドミノ促進”している理由を次のように説明する。
「パートナーシップ制度が広く知られるようになったことで、当事者たちが自分たちで自治体の条例を変えようとする動きが広まってきました」
「また、性的マイノリティの人たちに対する理解がある首長のいる自治体では、首長自らが指揮をとって導入しているケースもあります」
こうしたボトムアップとトップダウンの両方が、制度の急速な広がりを推し進めているのでは、とTAKACOさんは話す。
■パートナーシップ制度ができて、変わったこと
同性パートナーシップ制度が持つ大きな役割の1つが、当事者の可視化だ。
TAKACOさんよると、同性パートナーシップ制度ができるまで、LGBTQの人たちに対して「そんな人がいるんですか」という声もあった。
しかし制度ができたことで、LGBTQの人たちが見える存在となり、さらに自治体に認められたことで当事者たちも声を上げやすくなった。
同性パートナーシップ制度は、LGBTQの人たちの日々の生活も変えている。
制度を利用した同性カップルからは、「病院でパートナーの手術の同意書にサインできた」とか「同性カップルに対する周囲の理解が進んで生活しやすくなった」など、喜びの声が聞こえる。
■ パートナーシップの先に目指すもの
しかし、同性パートナーシップ制度は性的マイノリティの人たちにとってゴールではない。
婚姻制度と同じ法的な効力はないので、パートナーが産んだ子供の親権者になれない、パートナーを扶養に入れることができない、相続権が無い、といった問題は解決できない。
また、制度がある自治体に住んでいる人は使えても、それ以外の人が使えないという点で格差が生じている。
そういった差別や格差をなくし、平等な社会を実現するために、同性カップルが結婚制度を使えるようにしなければいけない、とTAKACOさんは訴える。
これまで、同性カップルの結婚を法的に認めてきた国は25カ国。その多くが、同性パートナーシップ制度をへて、同性同士の結婚を実現してきた。
日本でも、同性カップルも婚姻制度を使えるよう国に求める裁判が2月に始まった。
同性パートナーシップが全国に広まっていくことは、「平等な結婚」の実現を後押しする意味でも大きな意味があるはずだ。