「同性カップルと異性カップルは同等と見られていない」国が新たに主張【同性婚訴訟】

原告は「論理的に破綻しているだけでなく、差別を容認している」と訴えています(同性婚訴訟・東京1次9回)
東京地裁に入廷する原告ら=2022年2月9日撮影
東京地裁に入廷する原告ら=2022年2月9日撮影
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

「主張を目にして、自分の目を疑いました」 

東京地裁で2月9日に開かれた「結婚の自由をすべての人に」裁判の東京1次訴訟(池原桃子裁判長)の口頭弁論で、「同性カップルと異性カップルは同等と見られていない」という国の主張を、原告の弁護士が強く批判した。

この裁判では、30人を超える性的マイノリティの原告が、法律上の性別が同じ2人の結婚を認めるよう国に求めている。

通称「同性婚訴訟」として知られ、全国5つの地裁と高裁で裁判が進んでいる。また2021年3月には、札幌地裁で「同性間の結婚を認めない現在の法律は、憲法14条1項に反する」という判決が言い渡された。

東京1次訴訟では、国がこの札幌判決に反論する書面を提出。

しかし9日の審理で原告は、国の主張は「論理的に破綻しているだけでなく、差別を容認している」と指摘した。

主張を軌道修正するも「破綻している」と指摘

原告代理人の寺原真希子弁護士
原告代理人の寺原真希子弁護士
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

国はこれまでの裁判で「結婚は伝統的に子どもを産み育てるためのものなので、同性同士は想定されていない」と主張してきた。

これに対し、原告は「そうであれば自然生殖(子供を産むこと)が結婚の要件になっているはず」「異性カップルは子どもを産み育てなくても結婚が可能なのに、同性カップルにだけそれを要求するのは差別的なダブルスタンダードだ」と、国の主張が矛盾していると指摘してきた。

また札幌判決は、「子どもを産み育てる夫婦を法的に保護することは結婚制度の目的の一つだが、本質ではない」という判断を示している

これを受けて、今回国側は主張を少し軌道修正。結婚要件として「生物学的にみて、生殖の可能性がある男女の組み合わせであるかどうかが重要」という主張を展開した。つまり、法的に結婚が認められるためには異性カップルである必要がある、という考えだ。

この主張に、弁護団の寺原真希子弁護士は法廷で、次のように反論した。

・この訴訟で問われているのは「なぜ異性カップルにだけ婚姻が認められるのか」だ。それなのに国は「異性カップルであるから結婚が認められる」という自らの主張を、単に結論として言っているに過ぎない。

・被告の主張は、結婚制度で保護されるためには、実際に子どもを産み育てることが要求されない、ということを認めている。その時点で「婚姻は生殖を目的とする」という被告の主張は破綻している。

破綻しているだけでなく、差別を容認している

(左から)閉廷後、取材に応じる原告の大江千束さん、小野春さん、代理人の寺原真希子弁護士
(左から)閉廷後、取材に応じる原告の大江千束さん、小野春さん、代理人の寺原真希子弁護士
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

さらに今回国側は、「同性カップルと、結婚した異性カップルを同等の関係と社会が見ていないため同性婚が認められなくても問題ない」という主張も加えた。

寺原弁護士は法廷で「この主張を目にしたとき、自分の目を疑った」と述べた。

原告たちはこれまで「国が同性カップルの結婚を認めないことが、同性愛者への差別や偏見を助長してきた」と主張してきた。

原告のひとり小川葉子さんは2020年12月の審理で、「この社会で異性愛者と同じ選択肢がない同性愛者は、二流市民扱いをされているように感じます」と訴えている

寺原弁護士は法廷で「現在、同性カップルは婚姻することが認められていないのですから、そのような同性カップルが、婚姻した異性カップルと同等の社会的な承認を得ることができていないのは当然です。それこそが本訴訟において、私たちが繰り返し主張してきた問題点です」と指摘。

さらに「被告の主張は、同性間の婚姻を認めないという自らの行為を、それによって生じた結果である差別的な現状、すなわち同性カップルへの社会的承認が不足しているという現状を理由として正当化しようとするもので、 論理的に破綻しているにとどまらず、差別を容認し、今後もそのような差別的状況を継続させていくことを表明しているに等しい」と国を厳しく批判した。

これは「差別を続けていきますという意見表明だ」

原告の大江千束さん
原告の大江千束さん
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

寺原氏は裁判後の記者団の取材でも、国の主張は「差別の完全なる裏返しです。今、差別があるから、同性婚ができなくても仕方がないというのは、差別を続けていきますという意見表明だと感じました」と述べた。

東京1次訴訟の原告らが国を提訴したのは、3年前の2019年2月14日。

原告の1人大江さんは、その3年間も職場の無理解や差別に苦しんできた。

大江さんは、長年のパートナーである小川さんと同じ職場で働いている。従業員は、配偶者の親族が亡くなった時には慶弔休暇を取得できるが、大江さんの親が亡くなった時、小川さんは有給休暇を使うよう告げられたという。また、裁判の原告になることについても「目立つことは良くない」と釘を刺された。

大江さんは口頭弁論後「ありとあらゆるところに、無理解や差別、偏見がはびこっているということを実感した3年間でもありました。権利獲得の一つとして、同性婚ができるように頑張っていきたいと改めて思いました」と語った。

同じく原告の小野春さんも、裁判所は差別を助長するような国の主張をはっきりと否定して欲しいと語った。

「こんな無茶苦茶な主張が通っていいのか、日本はそんなことを通してしまう国じゃないでしょと思います。(裁判所は)人権の砦なので、おかしいことはおかしいという判決を言い渡してほしい」

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