これまでに、世界27カ国で実現している同性同士の婚姻。G7で、国レベルでの同性婚や同性パートナーシップがないのは日本だけだ。
2019年2月には、全国13組の同性カップルらが国に同性婚の実現を求める「結婚の自由を全ての人に」訴訟が始まった。国側は「憲法は同性間の婚姻を想定していない」などと主張し、5つの地裁で争っている。
結婚できないために、病院で家族として認めてもらえない、パートナーの子供の親権を持てない、など生活に支障をきたしているLGBTQの人たちは少なくない。
こういった現状を伝え、国会で一刻も早く同性婚を実現させて欲しいと求める院内集会が、11月19日に衆議院第二会館で開かれた。
集まった国会議員や同性婚訴訟の原告、そしてサポーターたちはどんな声をあげたのか。
■ 同性婚に賛同する国会議員
石川大我(立憲民主党)
「私は、7月の参院選で日本にも同性婚をというテーマを掲げて当選しました。立憲民主党は6月に、共産党、社民党と一緒に同性婚ができるよう民法を改正する法案(婚姻平等法案)を出しています。皆さんの思いを大きくして国会で後押ししてもらい、同性婚を実現したい」
福島瑞穂(社会民主党)
「婚姻届が出せないことで、税金や法定相続人になれないことも含め、たくさんの不利益が生じています。
すべての人がすべての選択を認められ、結婚のする、しないを選べるように、国会の中で頑張っていきます」
串田誠一(日本維新の会)
「憲法第24条には『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立』と書いてありますが、これは、結婚は当事者の自由でできると示したもの。同性婚を禁止した規定は、憲法にはありません。そして憲法第13条には国民の幸福を追求する権利は保障しなければならない書かれています。現在同性婚を認めていないのは、違憲だと思います」
玉木雄一郎(国民民主党)
「わが党では、党内で同性婚を認めるかどうかについては最終的な結論は得ていませんが、私は代表として、同性婚を認めるべきだと思っていますので、その方向で党内の結論をまとめていきたい。
生きづらさを感じることなく皆が幸せを追い求めることができる、そんな当たり前の社会を作るために頑張っていきたい」
斎藤健(自民党)
「多様性のある社会の中で、どれだけ相手の立場になってものを考えることができるかというのが、社会の進歩ではないかと思っています。こういう運動で、どれだけ盛り上げて理解を深めていくかということが極めて大事なんだなということを改めて思ったところです」
高瀬ひろみ(公明党)
「与党としましても、皆さんの同性婚を前に進めるために勉強会をしながら理解を広めていくために今活動をしているところです。与党が動かなければ法律は動きません。しっかりと理解者を増やすべく、私ども頑張って参りたいと強く思っております」
伊藤岳(共産党)
「私の身内にもLGBTの当事者がいます。彼からカミングアウトされた時、すべての個人の尊重を目指していた私が若干、意識喪失状態になりました。その自分が非常に悔しい、悲しい思いをしたのを昨日のことのように覚えています。
彼は今、同性婚を願って、様々な活動に参加しております。憲法13条には、すべての国民は個人として尊重されると書いてあります。同性婚の実現は憲法に対しても当然。このことに確信を持って、一緒に前に進んでいこうではありませんか」
尾辻かな子(立憲民主党)
「私、ちょっと今日感無量で…。レズビアンの国会議員として活動してきました。20年間一緒に活動してきた仲間たちが、議員会館でこうして顔を見せて、自分たちの権利のために立ち上がっている。そして、一緒にこの問題を考えて変えていこうとしている超党派の国会議員の皆さんがいる。
2019年は2月14日に訴訟がおこり、そして6月3日に野党3党で法案が提出され、11月19日この議員会館から新たな運動をスタートする。力を合わせてこの日本でも、結婚の平等を勝ち取りましょう」
■同性婚訴訟の原告が国会議員へ伝えたいこと
札幌、東京、名古屋、大阪、福岡地裁で、同性婚の実現を求めている「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告は、結婚できない苦しみや日々感じている不利益を国会議員に直接訴えた。
小川葉子さん(東京訴訟 原告)
「この赤いTシャツは、同性婚をなんとか認めていただきたいという熱い想い、情熱と怒りの赤です。海外では結婚できる方はいっぱいるのに、なぜ、日本ではいつまでも同性婚は認められないでしょうか。多くの仲間も、同性婚の実現を求めています。1日も早く本当に法律が改正されればと思っています」
まさひろさん(九州訴訟 原告)
「福岡でパートナーシップ制度を使って宣誓しました。これでふうふになれると思ったけれど、ふたりで家を買うための共同ローンを組もうとしたら、法律婚じゃないとダメだと断られました。ローン以外にも、同じような壁に何度もぶつかって、結局法律上の夫婦になっていないと権利はもらえないんだなと思いました。
私たち自身の法律婚を認めてもらいたいという気持ちはありますが、それだけじゃなくて、今の小学生や中学生が将来、自分たちと同じ悩みにぶつからなくてもいいように、勇気を振り絞って原告になりました」
■私たちも一緒に闘っている
「結婚の自由をすべての人に」訴訟原告以外にも、同性婚を求めている人たちはたくさんいる。彼らとともに同性婚実現のために闘っているサポーターたちが、院内集会で伝えたかったこととは。
下山田志帆さん(サッカー選手 スフィーダ世田谷FC所属。女性パートナーがいる)
「私は5月まで、ドイツのチームでプレーしていました。ドイツでは2017年に同性婚が実現しています。
ドイツで、レズビアンのチームメートに将来の夢を聞いたことがあります。彼女は「2~3年で引退して、そのあとに指導者になって、パートナーと結婚する。そして子供をつくって、一緒に地元のクラブに応援しに行って、週末はビールを飲みながら過ごすのが今の夢」と言われました。
その姿を見て「国が同性婚を認めることっていうのは、その人自身の存在を肯定し、その人が自分らしく生きることを後押しするんだな」と感じました。
だから私は、同性婚の実現は、制度を変えるだけではないということを伝えたい。今生きづらいと思っている人が自分らしく生きられる、その姿を見た周りの人たちも幸せになれる、そんな社会を望んでいます」
杉山文野(トランスジェンダー男性。パートナーと子育て中)
「僕には10年をともにする彼女がいます。見た目は男女のカップルですが、戸籍上は同性同士なので婚姻関係を取ることができません。
結婚できないことで別れの危機もありましたが、周りのサポートをいただいて乗り越え、精子提供を受けて子供もできました。
幸せだなあと思う一方で、不安もたくさんあります。(法律婚できないので)僕は同意書一つサインできない関係です。もし今彼女に何かあったら、僕はこの子を守ることができることができるんだろうかと思うと不安です。同性婚は同性愛者のためだけではなく、トランスジェンダーの僕たちにとっても切実な願いです」
■右、左の問題じゃない
院内集会には20名以上の国会議員が集まり、会場はサポーターなどで満員になった。参加した議員以外にも、メッセージを寄せた議員もいた。
9月まで外務大臣だった自由民主党の河野太郎議員は「外務省主催行事では法律婚、事実婚、同性、異性にかかわらずパートナーをもてなしている」と紹介。「外務省として、性的指向少数者に対する理解促進への取り組みに引き続き関与していく考えです」と綴った。
「結婚の自由をすべての人に」弁護団の寺原真希子弁護士は、同性婚実現は人権の問題であり、党派を超えて取り組んで欲しいと訴える。
「同性婚が認められていない現状は、セクシュアルマイノリティから結婚という選択肢を奪う、わかりやすい差別です」
「このようなあからさまな差別は人権の問題であって、保守だとか革新だとか、右、左の次元の話ではありません。1人の人間として尊厳を持って生きることができることかいなかという話です」
「そのような意味でも、国会においても党派を超えて同性婚実現に向けて取り組みをしていただきたく、その必要があると考えます」
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