(公式Facebookページより)
米アカデミー賞のノミネーション作品発表に関連して、前回は、権威ある賞の存在意義について私見を書きました。
我らが全米映画俳優組合(Screen Actors Guild、通称「サグ(SAG)」)もサグ・アワード(SAG Awards)という賞を設けており、オスカーを頂点にした賞レースにおける前哨戦のひとつとして注目されています。こちらの授賞式が先週の日曜、21日に行われました。
サグ・アワードは、サグに所属するすべての組合員が投票権を持ち、候補作品としてノミネートされた作品群の中から、各カテゴリーで賞にふさわしいと思う作品にそれぞれ投票することで選出されます。
俳優の、俳優による、俳優のための賞、それがサグ・アワードです。
実はわたくし、今年はサグ・アワードの候補作品をノミネートする委員会(ノミネーション・コミッティー)のメンバーに選んでいただき、そのおかげで昨年末、2017年にリリースされた映画を一気に鑑賞させていただきました。せっかくなので少しだけ感想を。全体的に今年は、
• 「強い」女性が主人公の作品:
「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri(邦題「スリー・ビルボード」)」「Battle of The Sexes」、「The Post」「Wonder Women(邦題「ワンダーウーマン」)」など
• 主要キャラクターの人種に多様性のある作品:
「The Big Sick(邦題「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」)」、「Victoria & Abdul」など
• 実話を元にした作品:
「Darkest Hour(邦題「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」)」、「I, Tonya(邦題「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」)」、「Disaster Artist」など。「Battle of The Sexes」「The Big Sick」「The Post」も実話ベース
の躍進が目立ったように思いました。政治や社会情勢が反映されているからでしょうね。
優劣のつけようのない素晴らしい作品ばかりでしたが、演技も何もかもが素晴らしくて独断と偏見でおすすめするのは、
• 「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」:
ブログ投稿参照。白人警官が無実の黒人青年を射殺するという事件が起こったミズーリ州の田舎町が舞台。娘を何者かに殺害された母親が、3つの巨大なビルボードをレンタルして地元警察を非難する「広告」を掲載することで、彼らに未解決事件の追及を要求するというお話。主要人物たちの描写が人間くさくて素晴らしい。出演したから言ってるのではなく、とにかく面白い(邦題前述)
• 「Mudbound」:
人種差別の根強く残る第二次世界大戦中&戦争直後のミシシッピを舞台にした2つの家族の物語。(邦題「マッドバウンド 哀しき友情」)
• 「I, Tonya」:
フィギアスケート界の歴史に残る、トーニャ・ハーディーさんに関連するスキャンダルを基にした物語。(邦題前述)
などです。また、映画を観ている際、特殊メイクの辻一弘さん(「Darkest Hour」)や、編集のMako Kamitsunaさん(「Mudbound」)など、素晴らしい仕事ぶりのクレジットに日本人のお名前を見つけた時は、誇らしかったし、励まされるような気持ちになりました。
俳優たちの間でアワードシーズンが毎年大きく盛り上がるのは、同業者として演技や映画製作に対する敬意と理解があることに加えて、組合員の俳優みんながシーズンの中でも特に重要な賞のひとつに関与できることで生まれる一体感のおかげかもしれません。
第90回アカデミー賞の発表は、2018年3月4日です!
「気まマホ日記」1月25日付の投稿から抜粋