アメリカ・カリフォルニア州サクラメントで3月18日夜、丸腰の黒人男性が警官2人に銃撃され死亡した。警官たちは、男性が持っていた携帯電話を武器と見誤っていた。
■警官たちは「自分たちの安全が脅かされたため」発砲
地元紙サクラメント・ビーによると、死亡したのはステフォン・クラークさん(22)。地元警察は18日夜、クラークさんの自宅付近で、何者かが車の窓を割ったという通報を受けた。
警察は現場にヘリコプターを派遣し、クラークさんの追跡を始めた。ヘリコプターの乗員によると、男がクラークさんの近所にある家のドアのガラスを破り、フェンスを飛び越えて他の家の裏庭に逃げたのを目撃したという。
午後9時半ごろ、クラークさんの自宅の裏庭で、警官2人がクラークさんに近づいた。クラークさんは、自宅で祖父母と2人の子供、クラークさんの兄の家族と暮らしていた。警察によると、クラークさんは手に何かを持って警官たちに向かってきたという。
地元警察によると、警官たちは「自分たちの安全が脅かされたため」クラークさんに発砲し、複数回命中させた。2人の警官はクラークさんにそれぞれ10発発砲したが、何発命中したかは明らかではないという。
警察は21日、ヘリコプターの追跡動画と、警官が装着したボディカメラの動画を公開した。映像には、2人の警官がクラークさんを銃撃する瞬間が映っている。
※閲覧注意 下のヘリコプター追跡動画には、クラークさんが銃撃される場面が映っています
クラークさんの自宅内にいた祖母セキータ・トンプソンさんは、「パン、パン、パン、パンと音が聞こえただけで、私は地面に伏せました」と、サクラメント・ビーに語った。トンプソンさんは、這いつくばって7歳の孫のもとに行き、銃撃が終わるまで地面に伏せるように話したという。
家族は無事だったが、トンプソンさんが警察から事情聴取を受け始めた時、窓の外を見ると裏庭にクラークさんの遺体があるのが見えたという。
「カーテンを開けたら、クラークが死んでいたんです。思わず叫び声を上げました」と、トンプソンさんはサクラメント・ビーに語った。
■ サクラメント市長「調査の完了を待つ」
警官たちは、クラークさんが銃や窓を破るためのバールを持っていたと考えていたが、クラークさんは携帯電話しか所持していなかった。
ドアを破られた家には、コンクリートブロックとアルミの破片が見つかった。警察は、このブロックやアルミが、ヘリコプターの乗員が見たと報告したバールのようなものだったとみている。
サクラメント市のダレル・スタインバーグ市長は21日夜、調査が完了するまでクラークさんへの銃撃に関して予断を挟まないよう、注意を促した。
「人名が奪わるのは常に痛ましいことですし、愛する人の最期の瞬間を見ることなど想像がつきません。それがこのような公道で起きたのならなおさらです」と、スタインバーグ市長は語った。
「動画だけで、警官たちのとっさの判断を批判することはできないですし、そうするつもりもありません」と、市長は付け加えた。
「調査の完了を待たなければなりません。最終的な結論を下す前に、動画に加えてより多くの情報が必要となります」
スタインバーグ市長はまた、銃撃に関する内部調査を指揮しているダニエル・ホーン署長に感謝の意を述べ、警察と地元の信頼を構築するためにはさらなる努力が必要だと付け加えた。
■ クラークさんの子供たち「お父さんはどこにいるの?」
クラークさんの兄ステヴァンテさんはハフポストに、『3歳の子が「お父さんはどこにいるの?」と尋ねてくる』と語った。
「今、私たちはお互いに慰め合い、労り合い、祈っています。そして窃盗犯にではなく、本当の彼のために正義と真実が明らかになることを祈っています。
弟は窃盗するような人間ではなかったと、ステヴァンテさんは語った。クラークさんはおしゃれが大好きで、最後に言葉を交わしたときも、クラークさんはステヴァンテさんに、「爪の手入れをしたんだ」と語ったという。
「彼は、警察が言っているような人柄ではありません。彼は大人です。弟のことはよくわかっています。彼は素晴らしい人間でした。私のお手本になるような人だったんです」
クラークさんと5年間にわたって交際していたサレーナ・マンニさんは地元テレビ局ABC10に、「彼は子供たちを残すことなんて望んでいなかったでしょう」と語った。
「毎朝起きるたびに、子供たちは『お父さんはどこ?お父さんのところに行こうよ』と聞いてくるんです」と、マンニさんは語った。彼女は子供たちに、「お父さんは永遠に私たちの心の中にいる。それを忘れちゃだめ」と話しているという。
ステヴァンテさんはマンニさんたちに代わって、クラークさんの子供たちのための基金を設立しようとしていると話した。
「弟が、何より子供たちを大切にしていたことを知ってもらいたいんです。弟にとって、子供たちがすべてだったんです」
ハフポストUS版より翻訳、編集しました。