将棋の第30期「竜王戦」七番勝負(読売新聞社主催)の第5局1日目が12月4日、鹿児島県指宿市で始まった。
【2日目の昼食はこちら⇒】羽生善治棋聖、勝てば史上初の「永世竜王」。昼食は特産品のアレだった【竜王戦第5局】
挑戦者の羽生善治棋聖は、渡辺明竜王に対し、3勝1敗でリードしている。
通算6期の「竜王」を経験している羽生棋聖は、本局に勝利すれば「永世竜王」の資格を獲得し、前人未到の「永世七冠」が実現する。
対局は午前9時、先手・羽生棋聖の▲7六歩ではじまった。
午後12時30分、両者は昼食休憩に入った。
「永世七冠」がかかった大一番、羽生棋聖の昼食メニューは「黒豚カツカレー」だった。
迎え撃つ渡辺竜王も、同じく「黒豚カツカレー」だった。ただ「辛さひかえめ」で注文したという。
鹿児島名物の黒豚をつかったボリュームのあるメニューで、両者とも「この大一番に"勝つ"」という縁起を担いだのかもしれない。
対局は2日制で、12月5日夜までに決着する見込みだ。
永世称号は、タイトルごとに定められた獲得条件を満たせば資格を得られる。原則として、永世称号は現役引退後に使用される。
羽生棋聖は、将棋界に8つあるタイトルのうち、「竜王」、新設された「叡王」以外の6タイトルで永世称号の資格を保持している。
2017年は、デビュー以来無敗で公式戦29連勝を記録した藤井聡太四段に注目が集まったが、その快進撃もさることながら、対局の際に注文した食事にも注目が集まった。
読者の中には、「なぜ棋士の食事に注目が集まるのか」と疑問に思う方もいるかもしれない。
だが、「たかが食事」と侮るなかれ。意外かもしれないが、将棋ファンの間では、棋士の食事が観戦ポイントの一つとして定着している。
食事には、棋士の個性が表れることが多い。6月に現役を引退した加藤一二三九段は大食漢で知られ、「昼も夜も、うな重」の伝説で有名だ。棋士の食事を題材にした松本渚さんの漫画『将棋めし』も人気だ。
松本渚さんは、ハフポスト日本版のインタビューに、「食事も一緒で、棋士の食事を知ると、その棋士が急に人間味を感じられる」と語っている。
時には、食事の選択が勝負の趨勢を分けることもあるようだ。『将棋めし』の監修を務める広瀬章人八段は、「自分より格上のうな重を注文され、やられたと思った。劣等感から対局も負けてしまった」と、自らの体験を産経WESTの取材に披露している。
たかが食事、されど食事なのである。