「嫌いな人でも、わかろうと悩む僕の姿を見せたい」 りゅうちぇるさんの“英才教育”はもう始まっている

「これさえやっていれば大丈夫」という人生の正解はなくなり、一人ひとりが自分らしさを発揮し、自分の道を生きることが新しい“正解”になっていきます。

「僕も弱いとこ、みんなに見せるからみんなも僕に弱いとこ、見せていい」と、ネガティブな気分もポジティブな気分も“ありのまま”に発信しているりゅうちぇるさん。

これまで以上に自分らしさを表現する一方で、1歳の息子、リンクくんの育児にも奮闘中。遠方の仕事がある時もなるべく日帰りし、帰宅したら料理や家事に勤しんでいます。先日、育児セラピスト1級を取得したことも話題になりました。

そんなりゅうちぇるさんは、「リンクにも自分らしく生きることを伝えていきたい」と言います。より一層、多様で複雑になっていくこれからの時代、未来を生きる子どもたちにどうやって「自分らしさ」を継承していけばいいのでしょうか。

ハフポスト日本版の竹下隆一郎編集長が「朝日地球会議2019」で聞きました。

りゅうちぇるさん
りゅうちぇるさん
撮影・岡田晃奈(Okada Akina)

どんな風に育児しているの?

僕、実はもともとそんなに子どもが好きだったわけじゃないんです。5人きょうだいの末っ子のせいか、年上の人たちの輪に入る方が好きでした。だけど、リンクが生まれてからは、他のおうちの子どもや、友だちの子どもまで、かわいくてかわいくて。街を歩いてるパパやママを尊敬のまなざしで見るようになったし、ものすごく価値観が変わりました。

そんな僕も、毎日、目まぐるしい子育てに精一杯です。一日じゅうリンクと一緒にいるぺこりんができるだけ休めるように、仕事から帰れば僕がご飯もつくるし、洗濯物も畳むし、絵本の読み聞かせもしています。

ぺこりんにも自分自身のことを大切にしてもらいたいから、「洗濯物は明日でいいよ~」とか「(お風呂上がりに)乳液塗った!?」「ちゃんとご飯食べた!?」とか、つい、いろいろ言っちゃいます(笑)。

育児って、本当にやることがいっぱいですよね。例えば、ママからすると、ここで手伝って欲しい、もっと臨機応変に対応して!ということだらけだったりするかもしれません。でもそれって、パパとママが一緒に育児をしなきゃ、いつまでたってもわかるようにならない。

だからパパもナチュラルに育児をした方がいいと思うんです。パパからの愛と、ママからの愛って種類が違う。でも、重さは変わらない。だからこそ両方でしっかり子育てするべきだと思います。

仕事を調整してもらって、しっかり育児の時間をつくったことによって、日々“事件”だらけの育児にパパとしてどう向き合えばいいか、ようやく見えてきたところです。

ベストウエディングアワードにぺこ&りゅうちぇる=2018年05月01日(時事通信)
ベストウエディングアワードにぺこ&りゅうちぇる=2018年05月01日(時事通信)

リンクくんには、どんな子になってほしい?

去年、リンクが生まれてすぐの頃、僕は、ぺこりんとリンクの名前をタトゥーとして身体に刻みました。そのことを公表したら、ものすごくたくさんの意見をいただきました。応援もあれば、お叱りの言葉やアドバイスもありました。でもどんな言葉も批判だとは思わず、ありがたい一つの意見だと思って大切に読みました。 

と、同時に思ったんです。「リンクはこれほど様々な意見があふれる世界に飛び立っていくんだ」って。

僕たちは愛情をいっぱいかけてこの子を育てているけれど、世の中に出たら本当にいろんな意見にさらされる。そして、聞いたこともないような意見にぶつかっていく。でも、そんないろんな意見が集まって成り立っているのが、この世の中です。 

この子に友だちができて、小学校へ上がって思春期を迎えたら、僕と同じように傷つくこともあるでしょう、心が折れそうになることもあるでしょう。その時、何を言われてもへこたれない、自分の信念を曲げずに生きていける子に育てたい、そう思ったんです。

それから僕とぺこりんの子育ては、「自分の生きる道をしっかりデザインできる子に育てよう」ということが大きなテーマになりました。

りゅうちぇるさん
りゅうちぇるさん

これからの子どもたちは、どんな時代を生きていくんだろう?

僕がぺこりんとよく話すのは、「これからは自分の才能を発揮する時代になるね」ということ。世の中は、いろんな国籍の子やジェンダーレスな子、いろんなバックグラウンドを持つ子が増え、どんどん多様になっていきます。

「これさえやっていれば大丈夫」という人生の正解はなくなり、一人ひとりが自分らしさを発揮し、自分の道を生きることが新しい“正解”になっていきます。

現場で毎日頑張っていらっしゃる先生方には申し訳ないけれど、日本の学校はまだ昔の価値観のまま。学校では一つのルールを強制的に押し付けられ、言われたことをその通りにやることが良しとされているように感じます。 

だけどもう、それでは社会でやっていけません。「いろんな道があるけど、さあ、君はどこへ行く?」社会に出た瞬間、子どもたちはそんな風に問われます。学校と社会の大きなギャップに、子どもたちは押しつぶされそうになっているんです。

そうなったらこれからの時代、子どもだって“自分らしさ”をしっかり持っていないと生きていけなくなっていきます。

りゅうちぇるさん
りゅうちぇるさん
撮影・岡田晃奈(Okada Akina)

自分らしくいるためのコツは?

これからの時代を生きていくこの子に必要なことって、自分の意見をしっかり持ち、それをはっきり言うこと。

それから、自分と意見の違う人に出会った時に、例え賛同できなかったとしても、優しさと思いやりを持って「そういう意見もあるね。もちろんわかるよ」と相手の“自分らしさ”を尊重すること。

その両方だと思っています。

リンクはすごくマイペースで我が強いので、そのまますくすくと育つと思います。だけど、我が強すぎて「僕、わがまま! それは個性!」みたいにならないで欲しい。自分を大事にしたいなら、相手の“自分らしさ”も尊重して欲しいと思うんです。

僕は、自分と違う人を否定するのはダサいと思っています。そういう生き方は幸せそうじゃないし、狭い世界でしか物ごとをとらえられていない気がする。僕自身は、これからもずっとすべての意見を受け入れて生きていくつもりです。知らないことを批判するのは、簡単なんですけどね。

“自分らしい生き方”を、子どもにどう伝える?

そういうことは言葉を尽くして説明するより、僕とぺこりんが意見を言い合ったり、ぶつかりながらも着地点を見つけていく姿を見せることで、リンクに伝えていきたいと思っています。あるいは「嫌いな人」に出会っても、そういう人に興味を持ち、わかろうと悩む僕の態度を見せていきたい。

僕もいろんな人にいろんなことを言われば、「果たしてそうまでして僕が僕らしく生きる意味はあるんだろうか」って悩むこともあります。だけど、僕が“自分らしさ”を偽ってしまったら、この子にいくら「自分らしく生きて」って言っても説得力がありません。

「何があったって、自分を愛し抜いて生きていく」。僕はこの子に、そんなドラマチックな姿を見せたいんです。

「多様な人を受け入れるための英才教育」は、もう始まっています。うちはすでに男の子とか女の子とか関係ないおもちゃでいっぱいで、女の子のおもちゃって思われがちな、バービー人形もたくさんあります。リンクは赤ちゃんの時から、いろんな才能を持った人たちでごった返す原宿に髪を切りにいっているし、僕やぺこりんの周りは、ぺえ(@peex007)をはじめとするものすごい個性的な友だちであふれています。

リンクには、僕たちやその周りの生き方を見て、「世の中にはいろんな人がいて、みんなそれでいいんだ」ということを、自然と学んでいって欲しいと思います。

いつか学校でからかわれることがあっても、「なんてことない!」ってはねのけられちゃうくらい、“自分らしさ”と余裕のある子に育てたいですね。

(聞き手:竹下隆一郎、編集:南 麻理江)

りゅうちぇるさん
りゅうちぇるさん
提供写真

りゅうちぇるさんプロフィール

1995年9月29日、沖縄生まれ。「普通」の男の子像からはみ出している自分に、生きづらさを感じていた学生時代。その状況を変えたいという気持ちからTwitterを始め、偽りない自分を発信し始める。高校卒業後、どんな個性も受け止めてくれる街「原宿」に上京し、ありのままの自分を表現していくことを決意。オリジナリティあふれるファッションセンスで、ショップ店員をするかたわら読者モデルとして活躍。その後、テレビ番組出演をきっかけに、奔放なキャラクターで全国区のタレントとなる。

そして2018年、「自分の色を取り戻そう」をテーマに掲げ、“RYUCHELL”名義で音楽活動を本格始動。2019年4月にデビューアルバム「SUPER CANDY BOY」をVirgin Musicよりリリース。

また2018年7月に愛妻ぺことの間に誕生した長男を、協力しあって育児する姿に「新しい家族像」として多くの共感を集めている他、「自分を愛し、多様性を認め合おう」というメッセージを発信する姿勢が評価され、2018年9月に「渋谷ダイバーシティエバンジェリスト」に就任。また東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年7月に向けて、多様性にあふれ皆で支え合う社会の実現を目指す取り組み、日本財団主催「True Colors Festival -超ダイバーシティ芸術祭-」のアンバサダーに就任、活躍の場を広げている。

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