過激派組織「イスラム国」(IS)に加わったロシア人の父親に連れられてイラクなどに移住した子どもたちが、父親の死後、現地から戻れない事態になっている。
ISとの戦いは終息しつつあるが、「テロとの戦い」がもたらした新たな問題が浮かび上がる。
9月1日夜。イスラム教徒が大半を占めるロシア南部のチェチェン中心部にある空港に、イラクから旅客機が着陸した。
ロシア国営タス通信よると、旅客機にはチェチェン出身の女性らや、その子どもたち計12人が乗っていたという。
「この度の帰還は、関係省庁が一緒に取り組まなければならない大事業の始まりと言える。厳しいのは、子どもたちの精神的なケアとリハビリの問題だ」。現場で立ち会ったアンナ・クズネツォワ・大統領全権(子どもの人権担当)は述べた。
女性らは夫がIS入りを志願してイラクに向かった際、子どもも連れて現地入りしたとみられる。夫が戦闘などで亡くなり、ロシアに帰国しようとしたが、ISの阻止などにより、脱出するのが困難だったとみられる。
チェチェンなどイスラム教徒が多く住む地域からは、ISに入ってイラクやシリアで政府軍などと戦う人が相次いだ。
イラク北部のモスルに置いていたISの拠点が7月、イラク軍に奪還されると、ロシア人ISメンバーの現地に残された妻や子どもたちの問題が徐々に表面化した。
チェチェンの地方行政トップを務めるカドイロフ氏が8月、イラクの首都バグダードにある避難施設の様子を撮影したビデオを自身のInstagamで公開。親がISに加わったロシア人の子どもたちが保護されていることを伝えた上で、「シリアとイラクに取り残されたロシアの子どもたちの問題について、多大な努力がなされなければならない」などと訴えた。
一方で、帰還する子どもたちが急増していることで、既存の受け入れ施設はすでに満室状態だという。そのため、クズネツォワ氏は新しい子どもたちの「居場所」を設ける方針を表明した。