ロシアのプーチン大統領が10月5日、軍事侵攻中のウクライナの4州をロシア領に一方的に併合する法律に署名したが、その新しい「国境」の位置が謎になっている。
ウクライナ軍の反撃で、ロシアの支配領域が日ごとに減る中で、どこに「国境」を引くかを明示できないでいるとみられる。
■東部2州は州境が「国境」に。南部2州は謎のまま
ウクライナ東部の2州では、2014年に親ロシア派が一方的に独立宣言。ドネツク州では「ドネツク人民共和国」、ルガンスク州では「ルガンスク人民共和国」を名乗っている。この自称国家の「国境」は、両共和国の憲法で「ウクライナの一部だった頃の地域と一致している」とプーチン大統領は2月に指摘していた。
ロシア国営のタス通信も今回の「併合」を伝える報道の中で、「ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の領土は、憲法に明記されている2014 年の国境で決定される」という国家建設立法委員会のパベル・クラシェニンニコフ委員長の言葉を伝えている。
このことから、ドネツク州とルガンスク州に関しては、州境が「国境」になるとみられる。
問題になっているには、ウクライナ南部のザポリージャ州とヘルソン州だ。クラシェニンニコフ委員長は「行政上の境界内でロシアに加わり、ヘルソン州にはミコライウ州の2つの地区が加わる」と述べたとタス通信が伝えたが、明確な「国境」は明らかにされなかった。
■ペスコフ報道官「私はこの質問に答えないままにする」
アメリカのテレビ局「CNN」は10月5日、ロシア大統領府のペスコフ報道官による見解を掲載した。ヘルソン州とザポリージャ州の「国境」がどう定義されるのかを尋ねたところ、「私はこの質問に答えないままにする」という回答だったという。
■ウクライナ軍の反撃で、ロシア軍の支配領域が日ごとに減るルハンスク州とヘルソン州
AFP通信が9月29日にTwitterに投稿した地図では、今回、ロシアが「併合」したと主張する4つの地域を点線で表示。ロシア側の支配下にあるとみられる部分をピンク色で表示している。
読売新聞がロシア紙「論拠と事実」に基づき作成して同日に報じた際の地図によると、ルガンスク州の99%、ドネツク州の58%、ザポリージャ州の72%、ヘルソン州の91%がロシア側の支配下にあるという。
ただし、10月に入ってからヘルソン州では、ウクライナ軍が複数の集落を奪還したことが明らかになっている。ロシアの支配領域が日ごとに減ってきている中で、国境を定義できない状態が続いている。