青木はなぜスタメンから外れたか?(豊浦 彰太郎)

ワールドシリーズで、2試合続けてロイヤルズの青木宣親がスタメンから外れています。その理由を考察したいと思います。
KANSAS CITY, MO - OCTOBER 22: Norichika Aoki #23 of the Kansas City Royals stands on the field before Game Two of the 2014 World Series against the San Francisco Giants at Kauffman Stadium on October 22, 2014 in Kansas City, Missouri. (Photo by Ed Zurga/Getty Images)
KANSAS CITY, MO - OCTOBER 22: Norichika Aoki #23 of the Kansas City Royals stands on the field before Game Two of the 2014 World Series against the San Francisco Giants at Kauffman Stadium on October 22, 2014 in Kansas City, Missouri. (Photo by Ed Zurga/Getty Images)
Ed Zurga via Getty Images

ワールドシリーズで、2試合続けてロイヤルズの青木宣親がスタメンから外れています(この原稿は第4戦が終了した後の日本時間26日夜に書いています)。その理由を考察したいと思います。

まずは、既に多くのメディアで報道されているように守備力の差でしょう。3-5戦開催のジャイアンツの本拠地AT&Tパークは、右中間が広く外野手、特にセンターとライトは広い守備範囲と強肩が求められます。

ロイヤルズの守備力、特に外野陣はメジャーナンバーワンと言い切って良いでしょう。近年、メジャーでは守備力を表す指標としてDefensive Runs Saved(DRS 守備防御点と訳されます)が用いられるのが主流になりつつあります。これは、野手が処理した打球を解析し、平均的な守備力の選手を起用した場合に比較し、どの程度失点を防いだか?または余計に得点を与えてしまったかを示すものです。その数値がプラスなら平均以上、マイナスならその逆ということです。

このDRSで見てみると、ア・リーグの外野手では1位はアレックス・ゴードン(+27)、2位はロレンゾ・ケイン(+24)と、ロイヤルズ勢が上位を独占しています。そして、6位には青木を押しのけてシリーズ第4-5戦連続でスタメンに起用されているジャーロッド・ダイソンが入っています。彼の凄いところは、今季の守備イニング数が691.1イニング(約77試合分)でしかないことです。フル出場すれば、1位となった可能性が高いとも言えるでしょう。それに対し、青木は-8です。この数字をそのまま受け入れるなら、今季の青木の守備パフォーマンスはメジャーの平均をかなり下回ることになります。

DRSは最も信頼性の高い守備力指標の一つですが、むろん完璧ではありません。一般的に「守備にはスランプがない」と言われますが、DRSは同一選手でもシーズン毎にやや変動があります(打撃のように順番が回ってくるものではなく、そもそも打球が飛んでこないことには評価しようがないからです)。青木の場合も昨季は+13を記録しており、数値のランダム性は低くはないと言えるでしょう。

しかし、それを踏まえても他の3人と青木との守備力の差は否定できません。それほどまでに、ゴードン、ケイン、ダイソンの守備は圧巻なのです。また、青木は1−2戦でエラーにこそならぬものの拙いプレーがあったこともネッド・ヨスト監督の決断を後押ししたかもしれません。

もうひとつの理由は、ナ・リーグの本拠地での試合のためDH制が採用されないことです。投手の打順で代打を起用せねばならない場面が出てくる可能性があったからです。もちろん、レギュラーDHであるビリー・バトラーがベンチに下がり代打の切り札としてスタンバイしたのですが、彼にせよもう一人の代打要員でチーム随一のパワーを誇るジョシュ・ウィリンガムにしても右打ちです。左の代打も確保しておきたいところですが、代打としては青木とダイソン(ともに左打)では明らかに青木の方が上でしょう。したがって、ダイソンがスタメンで青木が代打に控えている方が、青木がスタメンでダイソンを代打に起用するより戦力的にはベターだという判断が成り立ちます。

しかし、問題は青木は第4戦でせっかく代打に起用されながら、併殺打という最悪の結果を招いてしまったことです。一方、ダイソンは守備では期待通りのスーパーキャッチを披露する一方で、本来不得手の打撃でも3-4戦とも安打を放っています。

本来なら、左腕のマディソン・バンガーナーが先発する第5戦では、同じAT&Tパークで同じDH制なしであってもダイソンではなく青木を先発で使っても良いところです。この2人とも左打ちですが、青木は左投手を苦にしないからです(今季の対左投手打率は.363と対右投手の.259を大きく上回っています)。

冒頭記したようにこの原稿を書いているのは日本時間26日夜で、ヨスト監督がどのような判断を下すかはまだ明らかではありませんが、もともと一旦決めたオーダーはあまり変更しないタイプの監督です。第5戦も青木はベンチスタートとなるかもしれません。

もし、そうだったら・・・舞台をカンザスシティのカウフマンスタジアムに戻しDH制となる第6戦以降も、ダイソンがそのままスタメンで起用される可能性は高いでしょう。チームの世界一は大事ですが、その喜びも自らがそれなりの貢献を示してこそ。青木は、まずは第5戦では代打であれ何であれ、結果を残しておきたいところです。

(2014年10月27日「MLB nation」より転載)

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小 学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke'm Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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