近年、コミュニケーションロボットの分野に様々な動きがある。その一部事例が、ユニークなエンタテインメント用の新世代ロボットの登場や、シンプルな構造でユニークな生き物感をかもし出すロボットの登場などである。本稿では人と共生を始めた複数のロボットの中から2種を紹介し考察する。
[写真-1]は、2018年1月11日に発売開始(事前予約分、発表は2017年11月1日)された自律型のエンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」の新型である。
筆者は1999年、初代「AIBO」発表直後の11月に、銀座の「ソニービル」へ初代に会いに行った。そのAIBOは少し動きもぎこちなく、デザイン面を含めロボットらしいカワイさを振り撒いていた。
今回、この新型に会うと、洗練されたリアルなデザインや動きと、特に液晶の透明感のあるブルーの瞳が印象に残る。さらに耳やシッポ、前後の足も細かく動くため様々なポーズで感情表現ができる。上目遣いのキョトンとした表情は幼いが、様々な見る角度等によっては小型の成犬のようにも感じられた
顔認識のAI・クラウドや学習機能を搭載し、飼い主の接し方で異なる性格に成長するという。オーナーとaibo、さらにネット上でのオーナー同士のコミュニケーションが賑やかになろう。まさにコミュニケーションロボットである。
[写真-2]は、"しっぽのついたクッション型セラピーロボット「qoobo(クーボ)」"である。会社側はイヌともネコとも表明しておらず、その判断はクッションを抱いた人の感性次第という。
クッション部分の撫で方によって、シッポの振り方が変化し、何か"不思議な生き物感"が漂う。写真は2017年12月の国際ロボット展で撮影したものだが、海外からの来訪者も多く、「クーボ」と遭遇しては、その微妙にシッポを振る様子に「Oh my God!」の連呼と明るい笑い声の合唱が何回も起きた。
お母さんと一緒の小さな女の子だけでなく、疲れた様子の中高年の社会人にも予想外に受けが良いという。ともかく見た目が、正体不明である。クッションにシッポという異質な二つの要素の結合が人目を引く。
恐る恐るフカフカした触感のクッション部分を当初、ゆっくりと撫でると、シッポもゆったりと動く。さらにクッションを激しく撫でると、シッポも激しく振り回すような感じで振られ、この様子がとてもおかしい。
ということは、筆者も既に癒しの効果を享受した社会人の一人になってしまったということである。極めてシンプルながら気になる癒し系ロボットの1体であると思う。
<様々なタイプのコミュニケーションロボットの登場>
さて本稿では、最近登場したエンタテインメント系の2つの機種について簡単な紹介と筆者の感想を記した。前者の「aibo」は"エンタテインメントロボット"、後者の「qoobo」は"セラピーロボット"と銘打たれているが、広義にはコミュニケーションロボットの一角に含まれよう。
これらのロボットは非言語(Non-Verbal:ノンヴァーバル)型コミュニケーションのペットの代わりや癒し効果を提供する小型コミュニケーションロボットである。
勿論、これら以外にも多彩なコミュニケーションロボットが登場してきているが、その多くはクラウドとAIを活用した各種サービス支援(受付、案内、解説、対話、音声による機器操作、多言語翻訳対応等)に特化または複合化した言語(Verbal)型コミュニケーションロボットが多いようだ。
<介護分野では既に活用が進む・・・在宅では見守り機能などとコミュニケーション機能が融合する方向か>
介護分野などのコミュニケーションロボット開発では、既に複数の機種が登場し、介護現場でメンタルケア用やレクレーション支援用として活躍が始まっている。さらに今後は、様々なICTの活用により比較的安価で、在宅の一人住まいの高齢者の自立した生活を支援するコミュニケーションロボットの開発等に力が入れられてくるだろう。
それらは見守りの機能や服薬管理の支援、日常生活の支援(照明や冷暖房等の管理など)が中心となろう。これらの在宅で高齢者等の自立した生活を支援する機器などは、様々なセンサー機器類がシステム化される方向で開発が進展している。
筆者は、将来的に独り住まいの高齢者が増加するため、現在、構築に向けて様々な取組がされている地域包括ケアシステムなどの重要な一部機能を担うことになると大いに注目している。
(注)ソニースクエア渋谷プロジェクトの「aibo room」は、2018年1月11日(木)~3月19日(月) 11:00~21:00 まで
関連レポート
(2018年3月15日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 准主任研究員