愛媛県の保育所で5月16日、8か月の男児がリンゴをのどに詰まらせ、意識不明の重体となる事故があった。
乳幼児の誤飲事故は各地で発生しており、東京消防庁管内では毎年1000人以上が救急搬送されている。
子どもの窒息や誤飲を防ぐため、気をつけるべきことは何か。また、万が一のどに何か詰まらせたら、どのように応急処置をすればいいのだろうか。
事故前日から給食を食べ始めたばかりだった
愛媛県のローカル局「あいテレビ」によると、同県新居浜市の保育園で、保育士が給食で出たリンゴを8か月の男児に食べさせたところ、突然泣き始めた。
保育士や看護師が背中を叩いて吐き出させようとしたが、顔が白っぽくなったため、園は救急車を呼んだ。
男児は心肺停止状態で搬送され、病院に到着してから蘇生したが、意識不明の重体となっているという。
食べさせたリンゴの大きさは長さ7ミリ、厚さ3ミリ。園は会見で「給食を無理やり食べさせた事実はない」としている。
男児は5月に入園し、事故が発生した前日の15日から給食を始めたばかりだった。
リンゴは国のガイドラインで、「そしゃくにより細かくなったとしても、食塊の固さ、切り方によってはつまりやすい食材」に分類されている。
東京消防庁に入った事故報告でも、乳幼児の誤飲や窒息で重症や重篤と診断された事例として、リンゴが挙げられている。
子どもの誤飲事故は各地で
リンゴに限らず、乳幼児の窒息・誤飲事故は各地で発生している。
東京消防庁管内では2018〜22年の5年間で、窒息や誤飲などで救急搬送された5歳以下の子どもは計5719人に上った。
年齢別では、0歳児が2119人と最多で、1歳児1514人、2歳児829人などと続いた。
0歳児だけで見ると、生後9か月が477人と最も多く、10か月が426人、8か月が389人などだった。
誤飲などの事故が発生場所については、92.1%(5266人)が住宅などの「居住場所」で、「学校・児童施設」は1.1%(61人)だった。
0、1歳児で多い誤飲の原因は?
また、0〜5歳の子どもで窒息や誤飲の原因となったのは、「食品・菓子」(1222人)、「玩具」(943人)などが多かった。
一方、年齢によって原因が異なり、0歳児では「包み・袋」(374人)、「たばこ」(296人)が多かった。
1歳児では「食品・菓子」(366人)、「たばこ」(167人)、「玩具」(165人)が全体の半数以上を占め、2〜5歳は「食品・菓子」と「玩具」が主だった。
このほか、0〜2歳の事故では、親が目を離した隙に粉末の漂白剤を舐めていたり、薬やボタン電池を口に入れたりしたケースがあったという。
トイレットペーパーの芯を通るものなら……
東京消防庁は、「生後6か月になったら何でも口に入れるようになる。年齢に応じた大きさや形状にして食べさせ、びっくりさせない」と注意を呼びかけている。
また、乳幼児の窒息や誤飲を防ぐために、次のようなポイントをあげている。
・早い子では、5か月から「ものをつかむ」、つかんだら「口に入れる」行動がみられる
・乳幼児はトイレットペーパーの芯(39ミリ)を通る大きさのものなら、口の中に入れてしまい、飲み込む危険性がある
・大きな食べ物を丸呑みしたり、びっくりして飲み込んでしまい、窒息することがある
・成長段階に応じて、適切な大きさに切ったり、つぶすなどして食べさせたりする必要がある
2つの応急処置
では、万が一、乳児が物をのどに詰まらせてしまった時は、どのような応急処置が必要になるのだろうか。
東京消防庁は動画で具体的な方法を発信している。
まずやらなければならないのは、「背部叩打法」だ。
乳児をうつ伏せにし、お腹側に腕を通す。指で乳児の下あごを支えて突き出し、上半身がやや低くなる姿勢をとる。
そして、手のひらの付け根で、肩甲骨の間を4〜5回、強く叩く。
この方法で異物が出なければ、「胸部突き上げ法」を試す。
ひざの上で仰向けにし、片方の足を脇に挟んで乳児の体が落ちないようにする。乳首の間を結ぶ線と胸骨が交差する場所から少し足側の位置を指2本で圧迫する。
胸の厚さの3分の1が沈むくらいの強さで4〜5回圧迫。それでも異物が取れなければ、背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に繰り返す。
反応がなくなった場合は、直ちに心肺蘇生を開始する必要がある。