今までの当たり前を当たり前と考えずに、視点を変えて物事を考える(=Rethink)人、企業、自治体を表彰するRethinkアワード2023が2023年2月16日に開催される。
昨年のRethinkアワード2022では、タレントの田村淳さんが人部門を受賞。田村さんは、今年度の同アワードの特別実行委員を務める。
なぜ今Rethinkが必要なのか? Rethinkし続ける田村淳さんと、Rethinkアワード実行委員長の井上朋彦さんが対談した。
「何でそんなことするんだ」Rethinkアワードが批判を乗り越える後押しに
── 田村さんは昨年Rethinkアワードの人部門を受賞されました。
井上朋彦さん(以下、井上):田村さんはタレントとしての活動だけでなく、47歳にして慶應義塾大学大学院を修了されるなど、多様な領域で色々な視点を持って活躍されています。まさに日々Rethinkしている先駆者ということで、昨年度のRethinkアワードに選出させていただきました。今年も、特別実行委員という形で参画していただいています。
田村淳さん(以下、田村):色々と活動をする中で「何でそんなことするんだ」とか「芸人がそんなことするなよ」とか批判されることも多いんですよね。昨年Rethinkアワードを受賞したことで、それを認めてくれる人がいるんだっていうのがわかって心強かったです。その後押しがあるだけで、また色々なことに挑戦しようと思えました。
── 今年もRethinkアワードが開催されますね。昨年から変化はありますか?
井上:今年は専門的な企業や団体に参画いただいて選考しています。専門的な知識や情報を持つ人が選考に加わることで、より公平で専門性のあるアワードになっていると思います。
さらに今年は、意外性を重視して選考を進めています。「こういう発想があるんだ」と意外な視点をもった人や団体を選びたいと思っています。まさに今、選考中ではあるんですが、もっとパワーアップして、より多くの人にRethinkしてほしいですね。
「男子と同じ体操着じゃ駄目なんですか」常識を疑う姿勢を大事に
── 普段はどんなことをRethinkしていますか?
田村:今あるものが正しいとは限らないというか、常識を疑う姿勢でいようとは常に思っています。そうしないと、固定観念にとらわれちゃって、本当は最適じゃないのに、みんなやってるから最適だと思い込まされちゃうのが昔から嫌いなんですよ。
小学校の頃、女子がブルマを履いていて、パンツがはみ出して動きづらそうにしてるのを見て「男子と同じ体操着じゃ駄目なんですか」って学校の先生に提案したこともあるんです。「おまえがイヤらしい目で見てるからそんな風に思うんだ!」と片付けられてしまいましたが。
田村:当時は先生に納得してもらえませんでしたが、今の体操着はブルマから変わったじゃないですか。あの頃、僕が訴えたことは正しかったって何十年か経ってようやく思えて、それは結構自信に繋がっています。正しかろうが正しくなかろうが、そういう違和感はいつも大切にしてますし、違和感を感じたらすぐ言うようにしてますね。
井上:昔からRethinkされているんですね。
田村:Rethinkし続けているので疲れることもあります(笑)。でも、同じことを考えている人に出会ったときに、その苦しさは全部吹っ飛んじゃいますね。だからRethinkしている人はコミュニティが必要だと思うんです。Rethinkアワードもその意味でも大事だと思います。
井上:Rethinkしている方にも苦しさがあるんですね。そしてアワードが力になっているということで嬉しいです。
食べられる土から、食べられるバラを。Rethinkし続けるということ
田村:Rethinkしながらも、今のRethinkが正しいわけじゃないっていうことも常に思い続けたいですね。「この新しい考え方は今の時代にはいいけど、長い目で見たらどうだろう」みたいな視点も持っていたい。1回のRethinkや変化で終わらずに、常に継続的に変わっていくっていうことですね。
まさに昨日会った人なんですが、バラを生産する村を和歌山県につくった人がいるんです。元々電気関係の仕事をしてた人が、ある日、少子化と過疎化が進んでいく村をなんとかしたいと一念発起して、食べられるバラを作ってるんです。食べられるバラという、他の農家が参入していない領域で挑戦することで、村が潤うっていう考えなんですね。土づくりから変えて、食べてうまいと思う土になったらそこでバラを育てて、うまい土でつくるからうまいバラができるんです。僕も昨日そのバラも土も食べました。
田村:その人は、今までは良いとされてた「産官学」ではなくて、「産官学民」でやっていて、さらに「官」は後からでいいんだっていうことを訴えてるんですね。官が入ってくると動きにくいこともあるから。まずは産学民でやって、エビデンスも何もかも整ったら、官に入ってもらってブースターかけるっていう手法をとっている。本当に色々なことをRethinkし続けているんですよ。
井上:そういった情報が広がったら、近い業種の方がRethinkしやすくなりそうですよね。連鎖が起きるというか。
田村:Rethinkしている人ほど、やっかみに繋がらない人が多いと思います。一緒にやってみようとか、僕もやってみようとか、横展開しやすいと思いますね。
「日本がちゃんと考えてる国にならない」Rethinkの重要性
── Rethinkしている人が増えていったら、社会はどう変わるんでしょうか?
田村:ただ合理的なものを追求するんじゃなくて、自分がどうありたいかをちゃんと言える世の中になると思うんですよ。とりあえず大多数のところに属して心地いいみたいな生き方ではなくて、みんながちゃんと主張した上で、合意形成が取れる世の中。それをつくるためにRethinkという土台があると思います。
不安な人って多数のところに流れてしまうじゃないですか。多数が悪いわけじゃないけど、ちゃんと考えて多数派に乗っかるのと、何にも考えずに多数派に乗っかるのでは世の中の空気をつくられ方が全然変わってくる。そうしないと日本がちゃんと考えてる国にならないって僕は思う。みんながRethinkすることで、合意形成に至るプロセスが正常化するんじゃないかなと思ってますね。
井上:そうですね。今よく使われている言葉で言うと、多様性にも繋がってくるのかなと思います。Rethinkして出てきた色々な考えを受け入れる世の中になるといいなっていうのはすごい感じますね。
やっぱりRethinkして行動したくてもできない人もいると思うんですよね。反対されるのが怖くて。ただ、そうなるとせっかく出てきたアイディアや考えもいつまでたっても世の中に広がっていかない。だからこそ、Rethinkした意見を受け入れられる人も増えていくと次のステップとしていいのかなと思います。
Rethinkしている人を探して背中を押す側に
── まもなく開催されるRethinkアワード。受賞する人に期待することはありますか?
井上:今回選考させていただいているみなさんは、もちろんRethinkもされているし、Rethinkする土壌を作っていく思いを持っている方々です。アワードに選考させていただいた後は、そこからどんどん伝播して欲しいなと思います。
田村:僕はRethinkアワードを受賞して、認めてくれる場所があることがすごく心強かった。一方で、これがゴールじゃなくて、次は認める側にならなきゃって思いで受賞しました。これから受賞する人も、次の日からRethinkしている人を探して背中を押す側に回ってほしいなと思います。そうすると、勝手にRethinkの輪が広がると思うんですよね。
井上:Rethinkというアクション自体はそんなに難しく考えることでもなく、ちょっと違った目線で考えてみようっていうだけのアクションです。そういった文化が少しでも枝分かれして広がっていくことを期待したいです。
(写真:飯本貴子)
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Rethinkアワード
Rethinkアワードは、Rethinkアワード実行委員会により運営されており、目まぐるしく変化し多様化する社会において、今までの当たり前を当たり前と考えずに、視点を変えて物事を考える文化の浸透を目指し、年に一度、今までの視点を変えた取り組みによって社会に影響を与えた「人」「企業」「自治体」に対して表彰を行います。