地元の魅力は地元の人間が発信する。
2020年12月15日、地域に根差したクリエイターの作品を募集し、表彰するRethink Creative Contestの審査結果が発表された。今年は約500点の応募の中から、Rethink PROJECT賞(最優秀賞)1点、 審査員賞5点、優秀賞24点の作品を選ばれた。
コンテストのテーマは、「あなたが暮らす地域をRethinkして、その地域の魅力を今までにない切り口でアピールするポスターの制作」。自分の地元の日常の景色を切り取り、新しい視点でその魅力を表現する作品が数多く集まった。
コンテストの主催である株式会社クリエイターズマッチは、地元の魅力の発信を地元のデザイナーなどが担う「クリエイターの地産地消」を目指し、Rethink PROJECTとともに「Rethink Creator PROJECT」を展開している。その一環として、セミナーなどの育成プロジェクトと合わせ、挑戦の場としてこのRethink Creative Contestを提供している。
協賛となるRethink PROJECTの推進責任者であり今回のコンテストの審査員を務めた藤内省吾さん(JT渉外企画室次長)は、「Rethink PROJECTが伝えたいメッセージは、視点を変えれば世の中は変わる、ということ。今回の作品ではユーモアのある視点で地元の魅力を伝えている作品が多く、審査員一同楽しみながら選ばせてもらった」と語った。
最優秀賞として選ばれたのは、「え? お墓って遊び場じゃないの?」というキャッチーな言葉で関心を引いた、仲本莉里歌さん(沖縄県)の作品。シーミー(清明祭)という、ご先祖様と心を通わせる沖縄ならではの文化を継承したいというメッセージが込められている。
「うちの街はあんまりいいものないんだよね」をどうするか
地方創生に欠かせないのは「よそ者」の存在だと言われる。地元の人だと、どうしても、慣れ親しんだ日常の中から売り出しのポイントを見つけるのが難しい。だからこそ、地域プロモーションは広告代理店やPR企業などが参入するケースは珍しいものではない。
事実、内輪の人間だけでなく多様なアイディアが集まれば、思いもよらないイノベーションにつながることもある。
しかし、Rethink Creator PROJECTは「地元を誰かにまかせない」という言葉を掲げ、クリエイターの地産地消を目指している。それは、視点を変えるというプロセスの先に、そこに住む当人だからこそ見つけられる地元の魅力があると考えているからだ。
特別審査員として参加した面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤 大輔さんは、「大切なのは正解探しじゃなくて視点探し」だと語った。
カヤックは鎌倉に本社を置き、行政や企業、住民を巻き込んで一緒に鎌倉を盛り上げる活動を行なってきたほか、さいたま市、長野県茅野市などでも数々の地域プロモーション事業を手掛けている。しかし現場では、地元に住んでいる人たちから「うちの町あんまりいいものないんだよね」という意見がよく上がるという。
慣れ親しんだ街の風土や名産物は、地元の人たちにとっては当たり前のもの。それが外の人にウケるかどうか、客観的な判断が下しづらいのだろう。
しかし、今はSNSの時代。さまざまなニーズを持った人が、意外なきっかけから情報を辿り地域の魅力を知ることができる。そこで大切になってくるのは、地元に住んでいる自分とは違う属性の人の視点に立って考えてみることだ、と柳原さんは語る。
たとえば、都会に住んでいる若い女性が、おいしいものや美しい自然を求めてその地域を見たときにどう見えるか? 試してみると、いつもの寺社仏閣もまったく違うものに見えてくる。
日常の中で、視点を変えてみるのは難しいアクションかもしれない。でも、視点探しのプロセスで多様な人の考えがわかるようになり、地域が豊かになるだけでなく、結果的にそこに住む人たちの心までも豊かになっていくはずだ。
Rethink Creator PROJECTは、こうした視点探しを担う一端として、今後も地域に根差したクリエイターの育成に貢献することになるだろう。