当たり前だと思ってきたことも、立ち止まって見つめ直してみると、意外な発見があるかもしれません。ハフポスト日本版は8月14日、「この写真、あなたの指は止まりますか?6枚の日常から『当たり前』をRethinkしよう」(Sponsored by Rethink PROJECT)というLIVE番組を放送しました。
「当たり前」を「Rethink」することって、なんだろう? 番組を観たライターが自分の日常の中のRethinkについて考えるシリーズ第2弾です。
筆者:樋口かおるさん / 静岡県在住 / @higshabby
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「おばちゃん、かき氷ください」
「練乳はつけますか?」
カウンター越しに、小学生のお客さんにたずねた。
母の営む駄菓子屋カフェは静岡県三島市の人気スポット、源兵衛川の前にある。毎年夏は涼を求める親子連れや子どもたちで大賑わい、店も忙しい。200円のシンプルなザクザクかき氷を求めて、百円玉を握りしめた子どもたちがたくさんやってくるのだ。氷をかいたり買い出しに出たり、私も手伝わないととても回らない。
「かき氷を1000杯売ろう!」
3年前の開店のとき、冗談でたてた目標はとっくに突破してしまった。毎日たくさんのかき氷をつくっていると、(今日は抹茶が出そうだから白玉を用意しようかな…)などと予測をたてるようにもなってくる。
それで気づいたのが、
ブルーハワイは男の子に人気で、イチゴは女の子に人気だということ。
他の味(メロン・抹茶・コーラ)も人気がないわけではないのだが、ブルーハワイとイチゴがダントツ。特に男の子は即決で「ブルーハワイ!」と決める子が多く、イチゴ好きの女の子も多いという印象。ちなみにメロンと抹茶も数は少ないもののファンがいて、コーラは注文すると友達から「えーなにそれ」と言われるところまでがお約束だ。
でも、なぜブルーハワイ好きの男の子と、イチゴ好きの女の子が多いのだろう。
味が好きなの? それとも色…?
「女の子はイチゴ味でいいの!」
そんな疑問を持っていたとき、男の子たちが店にやってきて「ブルーハワイ!」「俺も!」と勢いよく注文した。
店内でイチゴ味のかき氷を食べていた4歳くらいの女の子は(なにかとてつもなくおいしいものが…?)と思ったのだろう。そばにいたおばあちゃんに
「ブルーハワイってなに?」と聞いた。
おばあちゃんは答えた。
「ブルーハワイ?女の子はイチゴでいいの!」
驚いた。色や味などの好みでイチゴを選ぶのはわかる。でも“女の子だからイチゴ”という世界があるとは知らなかった。ブルーハワイを説明するのが面倒なのでそう答えただけかもしれない。でも“女の子だから”という言葉を不用意に使うことで、(女だからできない…)という固定観念を植え付けてしまう可能性もあるのではないだろうか。
三島は新幹線が止まるものの里山が多く、自販機すらないエリアも多いのんきな街。ここで育ち、東京からUターンで帰ってきた私は、東京に比べ特に三島がダイバーシティ的に遅れていると感じたことはない。でも市役所の女性管理職登用率はゼロ(部・局長級の女性割合0%*)。私がふだん気にしていないだけなのかも…。
東京だから地方だからではなく、好きなところで暮らしたい
先日、「Rethink PROJECT」のLIVE配信を観ていたら、ぺえさんが最後に「田舎でしか感じられない幸せもある」と発言していた。
考えてみると、三島に住んでいていいなと思うことはたくさんある。
息子の小学校のそばの川でホタルが見られること。
玄関先によく野菜が置いてあること。
富士山で方角がわかること。
それぞれ東京でも代替できることかもしれないが、そうした小さいことが積み重なってのんびりした時間の流れをつくっているように思う。人は少ないけれど鳥や虫の声はいつも聞こえているし、ソーシャルディスタンスもとりやすい。
私はライターとして東京の会社とも仕事をしている。三島に住んでいることを伝えると「いいなあ」と言われることも、「交通費がかかるし、急ぎの仕事は無理ですね」と距離を置かれることも。新型コロナウイルスの影響で働き方も変わりはじめている今。田舎だから、都会だからではなく好きなところで暮らし、仕事もあきらめなくていい社会になるといいなと思っている。
どうせ同じ?でも、好きな味を選びたい
ライターの仕事をしながらお店も手伝っていて、東京と三島で働いていて。“Rethink”、当たり前の見直しに気づくことも多い。
私は店のメニューを考えるとき、「ぜんざいやホイップが乗ったようなドリンクは女の子にうけるだろう」というイメージが頭にあった。これは完全にただの思い込みで、間違いだった。
母も「男の子もぜんざい食べるのね」と言っていたので、甘い食べ物や飲み物は女の子向けというイメージを持っている人は多いのかもしれない。うちの店ではじめてぜんざいを食べて、すっかりあんこ好きになった中学生の男の子もいる。とてもうれしい。
傾向として、「男の子にブルーハワイが人気」みたいなものは実際にあると思う。でも、提供する側が男の子コーナー、女の子コーナーを意識して区分することは不要だと思っている。店のすみっコぐらしグッズは主に女の子に買われているが、もちろん男の子のファンもいるので、コーナーを分類したら買いにくいものになってしまう。
商店街は全国的に廃れつつある。三島も空き店舗はあるものの個人店が立ち並び、商店街としては小さいながらもがんばっているほうだと思う。そこでひときわ小さな店をやっていて、誰もがすぐに忘れてしまうような平凡なかき氷をつくっていても、毎日のようにRethinkすることはある。
店のかき氷は今流行りのふわふわ、こだわりのかき氷とは遠く、とてもふつう。でも、ふつうだからこそ自由な食べ方で楽しんでもらいたいと思い、「駄菓子を乗せて食べよう」など、実際に提案している。「おにぎりせんべいが合うのでは?」などと考えるのも楽しいようだ。
今日は「抹茶あずき」のかき氷をつくろうとして、うっかり「ブルーハワイあずき」をつくっていた。お客さんにはつくりなおして、失敗作を自分で食べてみたところ…。
「あ、ふつうにおいしい!」
あずきトッピングは抹茶との組み合わせが定番。ブルーハワイは見た目的にもどうかなと思ったけれど、まったく問題はなかった。むしろ、食べている間にブルーハワイが抹茶味に感じられてくるという不思議も。
そもそもかき氷シロップの味は全部ほぼ同じという話もあり、イメージで味を感じているところが大きいのかもしれない。
だからきっと、どの味を選んでも本当はたいして変わりはないのだ。それでも私たちにはブルーハワイやコーラ、好きな味というものがある。「男の子はブルーハワイ、女の子はイチゴ」というのも大きなお世話だし、みんな好きなものを選べばいい。
○○だからではなく好きなかき氷を選んでいいし、どこにいたって、気づくことはきっとあるのだ。
(執筆:樋口かおる、編集:磯本美穂)
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現在、ハフポスト日本版では「Rethink PROJECT(リシンク・プロジェクト)」とタッグを組み、立ち止まって「当たり前」をもう一度考える、「Rethink」のアクションを発信しています。
その一環で、8月14日に配信されたLIVE番組「この写真、あなたの指は止まりますか?6枚の日常から当たり前をRethinkしよう」は、こちらからアーカイブをご覧いただけます。
《Twitter》
https://twitter.com/i/broadcasts/1DXGyAlYzwVGM
《YouTube》
https://www.youtube.com/watch?v=3cVlrHdDjhk
【出演者】
ぺえさん(タレント)
「ジェンダーフリーの謎のショップ店員」として一躍話題になり、竹下通りで「原宿の母」と呼ばれる。現在、全国公開中の劇場版『ひみつ×戦士 ファントミラージュ! 〜映画になってちょーだいします〜』ではアベコベ刑事役を演じるなど活躍の場を広げ、広い世代から支持を得る。
龍崎翔子さん(ホテルプロデューサー)
L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表。京都、大阪、湯河原、北海道の富良野と層雲峡に、合計5つのホテルを経営。
【監修】
田中東子さん(大妻女子大学)