ビジネスや経済において、徐々に存在感を増している「リスキリング」。
従来の生涯教育(仕事のためのスキルアップや資格取得)とは異なり、経営側が中心となって働き手を育成する「トップダウン型」が主軸であることが特徴だ。
リスキリングに取り組んでいる企業では、実際にどのような成果が得られているのだろうか。
パーソルイノベーション(株)の展開するサービス『学びのコーチ』では、四半期ごとにリスキリングに関する調査を行っている。同社が全国660人のビジネスパーソンを対象に実施したアンケートの最新結果と共に、リスキリングの「今」をひもといていく。
4割以上の企業がリスキリングを実施
今年2回目となる今回の調査では、回答者が主に勤めている企業において「直近1年の間で、従業員のリスキリングに関する取り組みを行いましたか︖」という質問に対して、41.6%が「実施した」と回答した。前回(2月)の39.1%から微増しており、今後も更なる増加が予想される。
企業規模別で内訳を見てみると、大企業が64.1%であるのに対し、中小/スタートアップ企業は27.1%にとどまっていることが明らかになった。また、前回の調査に引き続き、リスキリングの約8割(79.5%)が、トップダウン型で実施していることも見てとれる。
特に重視されている分野は?大企業では新たな傾向も
「リスキリングの取り組みでは、どのスキルを取得することを重視していますか︖」という質問に対する回答は、1位「データ活用(35.6%)」、2位「ITプロジェクトマネジメント(34.1%)」、3位「クラウド活用(31.4%)」という結果となった。前回の調査結果に引き続き、DXの推進やITスキルの習得が重視される傾向にあるようだ。
しかし、企業規模別にその内訳を見てみると、大企業のリスキリングにおいては新たな傾向が浮lかび上がった。前回の調査では「ITプロジェクトマネジメント」が50%以上であったが、今回は重要視しているスキルに大きな偏りがなく、幅広い分野に関心が及んでいる。
60%以上の企業が、リスキリングの成果を実感
リスキリングに取り組んでいる企業では、実際にどのような成果を感じているのだろうか。
「企業としてのリスキリングの取り組みはどのように評価されていますか?」という質問に対し、企業の18.2%が「大きな成果が出たと感じている」と回答し、45.5%が「成果を実感できた」と回答。合計63.7%がリスキリングの取り組みに成果を感じていることがわかった。
その内訳は、主に「業務の効率化(49.4%)」「新しい職種・役割にアサインできた(44.0%)」「新事業の立ち上げ(43.5%)」となっており、リスキリングが大きな役割を果たしていることがわかる。
また今回の調査では、リスキリングを実施している企業の約7割が、ChatGPT等のAIを活用・検討していることも明らかになった。活用シーンとしては、メーカーでは問い合わせ対応、IT通信では情報検索が主なようだ。
リスキリングから「経営陣の強い意志を感じる」
「学びのコーチ」事業責任者を務める柿内秀賢さんは、テクノロジー人材を採用するだけではなく「自社の社員のリスキリングにも力を入れて経営目標を達成する」経営者の姿に、本質的な「人的資本経営」の形を垣間見るという。
また、リスキリングをはじめとした人的資本経営に取り組む姿勢は、企業の「現場の肌感覚とも一致する」ように感じると語る。
企業の未来を考える上で重要なリスキリング。今後のビジネスをより大きく左右するキーワードになっていきそうだ。